スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦&第二部定理二九

2008-12-11 20:51:36 | 将棋
 竜王戦七番勝負第六局。
 羽生善治名人の封じ手は▲3六歩でしたが,どうもこの局面ではすでに後手の渡辺明竜王の方が指しやすくなっていたようです。この後,△7七飛成をどのように取るかの選択はあっても,△2七銀までは一直線。そこで▲2二歩と打ちました。封じ手が▲3六歩であった以上,攻め合いにいくのは当然です。後手はこの時点では後の▲2五飛を見落としていたようですが,時間があったことも幸い,うまく凌ぐ順を発見し,優位に立ちました。たぶんこの将棋における後手の最大の危機はこの部分で,あとは何ということもなく一方的に後手が押し切っています。ちょっと拍子抜けするような将棋でした。
 というわけで個人的な希望通りに第七局まで見られることになりました。実は将棋の七番勝負では,3連敗後の4連勝は過去に例がなく,3連敗後の3連勝もこれが2度目。それを2度とも羽生名人がやられているというのも面白いところ。注目の第七局は17日と18日です。

 人間の精神による自分の身体の知覚というのが混乱した観念であるということは理解できましたので,最後に人間の精神による自分の精神の知覚,すなわち第二部定理二三による知覚が混乱した観念であるということを示すことにします。これは第二部定理二九です。なお,先にいっておきますが,ここで変状といわれているのは刺激状態のことです。
 「人間身体のおのおのの変状の観念の観念は人間精神の妥当な認識を含んでいない」。
 この定理はすでに第二部定理二七が証明されていますので,証明する分には簡単です。すなわち,第二部定理二七により,人間の身体の刺激状態の観念が,自分の身体の十全な観念ではないということが明らかです。よってこの観念は自分の身体の本性とは完全には一致しません。ところが,第二部定理一三により,ある人間の身体とある人間の精神は同一個体ですから,この観念自分の精神の本性とも一致しないでしょう。第二部定理七からして,同一個体の本性は,属性の相違以外においては一致していなければならないからです。よって第一部公理六により,この人間身体の刺激状態の観念の観念は自分の精神の本性に完全には一致しない,つまり十全には認識されていないということが帰結します。
 第二部定理二三は,人間は自分の身体の刺激状態の観念の観念を有する限りにおいてのみ,自分自身の精神を認識するということを含んでいました。この第二部定理二九は,そうして認識する自分の精神の観念が十全な観念ではなく混乱した観念であることを示しています。よって,一般に,人間は自分の精神を十全に認識することはできないということが,この定理のうちに含まれていると考えていいと思います。
コメント
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