書店で面白そうな時代小説を見つけました。
主人公は、始末屋、すなわち悉皆屋さん。
しのぶ梅 着物始末暦 (時代小説文庫) 価格:¥ 669(税込) 発売日:2012-11-15 |
主人公の悉皆屋余一は、暗い過去を持ちなかなか人と打ち解けようとしない。
そんな余一に一途に想いを寄せるお糸。
お糸と余一の恋を縦糸に、市井に生きる人々のきもの事情を横糸に織る江戸きもの絵巻。
「悉皆屋といわれても、ピンとこないのだろう、芸者は曖昧に頷いた。」
とあるように、この職業、江戸時代にはあまり知られていなかったようです。
「~古着に手を入れる職人なんて、金持ちを見慣れた芸者には男のうちに入らないだろう」なんて言葉もあります。
「~めったに拝むことのできない極上の上田紬、しかも人気の藍だ。それなら十両はしただろう」と、きものの値踏みがあったり、花魁のきものとお金のお話があったり~~。
「江戸のきものと衣生活」(丸山信彦・小学館)
こういった学術書で江戸の生活を垣間見るのもいいけど、この小説ではもっと身近に、江戸
時代のきものアレコレを知ることができます。
若いのに地味なきものばかりを着て、頑として振袖を着ようとしない娘に「きものとは憑代(よりしろ)だ。~多分、死んだ婆さんが恋しかったんだろう」
こんな余一のことばを聞いて、「この人はきものの始末をすることで、人の思いを繕っているんだ」と納得するお糸。
恋心はつのるばかりです。
江戸時代には「悉皆屋」っていわずに、「始末屋」っていっていたんですね。
「悉皆」とは、「ことごとく」とか「全部」という意味で、「染め、直しも汚れ落とし」などきものに関することはなんでも承ります、という意味ですね。
「始末」とは、「処理する」とか「倹約する」という意味。
古いきものを捨てずに処理して、その結果「倹約する」ということでしょうか。
中島要さんという作家、私はこの本で初めて知ったのですが、「小説宝石」で新人賞を獲り、始末屋シリーズでは「藍の糸」「夢かさね」(ハルキ文庫)などを出しています。
きもののこと、すごく詳しくて、ほかのシリーズも読んでみたくなりました。
身近に、こんな悉皆屋さんいてほしいです。
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