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町田徹:温暖化対策の報道に疑問

2008-04-07 22:41:17 | Weblog
朝日新聞2008年3月29日より

 地球温暖化対策が7月の洞爺湖サミットで大きな議題の一つになる見通しだ。だが、この問題をめぐる報道を見ると、誤解を招く内容も目立ち、国益を損ないかねない。
 中でも、①日本は二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減が遅れている、②排出権取引の導入は世界的な流れで万能だ---の二つは、その典型例ではないだろうか。
 「京都議定書の目標達成 英仏独ほぼ確実 日本、自力では困難」(経済紙)。日本の出遅れを批判する報道として多いのが、現状では97年の京都議定書で公約した目標を達成できないと危機感をあおる、こうしたパターンだろう。この目標は、共通の基準年である90年との比較で、08~12年の平均排出量を欧州が8%、米国が7%、日本が6%減らすもの。確かに日本が国内削減分だけで目標を達成するのは容易でない。
 しかし、こうした記事の多くは、「救済策」である海外からの排出権購入については説明不足だし、また、90年という基準年が、70年代の石油危機以来、いち早く温暖化ガス削減に取り組んできた日本に不利で、90年代に入って原子力発電所の稼動などが多かった欧州に有利だった事実を、きちんと指摘する報道も不足している。
 一方、アルバート・ゴア米元副大統領がアカデミー賞映画『不都合な真実』で示したデータによると、日本の「地球温暖化への寄与度」はわずか3.7%と米国の30.3%、欧州の27.7%を大きく下回る。日本の経済規模は米国や欧州の半分に匹敵するのに、温暖化ガス排出量は1~2割に過ぎない。つまり、改善ペースは遅いが、絶対水準で日本は昔から優等生なのに、その事実があまり伝えられていないのだ。
 メディアには、自虐的とさえ言える日本の批判をするより、排出量で世界一の米国や排出大国になりつつある中国、インドなどの途上国が、削減を対外的にコミットしていないこと、これらの国やそこに工場を持つ大企業が垂れ流しを続けるリスクが大きいことを指摘し、有効な対策を求める責任があるはずだ。
 「ポスト京都の枠組み議論で、(国内)排出権取引への取り組みが世界の流れに(一般紙)。欧州が内部で市場を作って排出権取引を始めたのは事実だが、弊害が出て見直しを迫られているのが実態だ。米国にも導入の機運はあるが、州レベルなどまだまだ限定的な動きである。
 排出権取引が万能ではないことも伝えるべきだろう。むしろ、昨年のサミットで提唱された「温暖化ガスを50年に05年比で半減する」という目標の実現には、革新的な技術の開発こそ不可欠だ。
 国、産業別に強制力のある削減目標の設定も必要で、排出権取引は実現できない非常時の補完手段の一つに過ぎない。
 (以下略)

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