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群馬の田舎から情報発信!

『偽善エコロジー』(武田邦彦)

2009-01-25 17:58:36 | 読書日記
 一般に環境に良いとされていることに対して、正面切って異論を唱えることは難しい。
 工学博士であり大学の教授という立場があって初めて可能となることだと思います。

 内容は、「レジ袋を使わない」「温暖化はCO2削減努力で防げる」「温暖化で世界は水浸しになる」など、一般的に環境に良いとされていることに対して、具体的データを示しながら、その真偽を明らかにしようとするものである。

 特に家電リサイクルの部分は興味深かった。確かに日本で販売されている大部分は、生産労働力経費が安い海外で生産され、輸入された製品である。したがって、これをリサイクルするということは、原料をそういった生産国に輸出するということ?実際は中古品として後進国で販売されている物も多いのでしょうねえ。

 リサイクルは儲ける会社があるからこそ行われている???

 著者は言います。「心が満足していると物は少なくてすむ」
 「これまで「環境のため」と思ってきた生活を、「人生のために」という生活に切り替えてみてください。その結果として、環境によい生活に自然になるという実感を得てほしいのです。」

 一般に常識と考えられている事でも、「本当にそうなのか?」という疑問を持ち、客観的なデータに基づき、自分の頭で考えることは科学者としてあるべき姿でしょう。いや、科学者だけでなく普通の私も、このような姿勢でいることで、本当に必要な暮らし方というものが見えてくるのかもしれません。

『日本サッカーと「世界基準」』(セルジオ越後)

2009-01-25 13:29:28 | 読書日記
 普段、新聞やテレビのコメントで日本サッカーについて辛口の著者の批評をよく見ます。
 著者のサッカー観、著者の考える日本サッカーの目指すべき方向性などが知りたくて手にとりました。

 序盤はジーコ時代の日本代表の試合に対する厳しい批判が繰り広げられます。
 途中からは著者が子ども時代に過ごしたブラジルの草サッカーなどと比べて、日本のサッカーが恵まれすぎているために、なかなか突出した選手が育たないといった主張があります。

 ブラジルのサッカー界の裾野の広さが、多数のトップ選手の排出を可能にしているのだと思います。
 草サッカーからプロサッカー(J1)まで、それぞれのレベルで多くの人たちがサッカーを楽しむことができれば、これからの日本サッカーはもっともっと強くなれると思います。 

『笑う警官』(佐々木譲)

2009-01-24 21:00:21 | 読書日記
 札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長だった。やがて津久井に対する射殺命令がでてしまう。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、かつて、おとり捜査で組んだことのある津久井の潔白を証明するために有志たちとともに、極秘裡に捜査を始めたのだったが…。

 警察小説というと、どこか重厚で陰湿なイメージがあります。この作品も前半は、誰か見方か誰が裏切り者か分からず、サスペンス調に話が進みます。しかし、後半になると一転、騙し合い、裏の裏をかく駆け引きをしながら仲間を議事堂になんとか入れようとする話は、手に汗握るハードボイルド調になります。
 一度生死を分けるような仕事を一緒にやった仲間を信じ続ける主人公の男気は何ともニクい。

 「警察組織はそこまでするか?」という箇所もないわけでもないですが、実際の事件を基に小説化されているとのこと。現実の社会にも不可思議な事があるものです。


 

『のぼうの城』(和田竜)

2009-01-24 19:57:41 | 読書日記
 人の魅力とは何か?何が人を惹き付けるのか?
 
 乱世を生き延びるためには「何でもする」という時代の中で、「愛情」「仁」から出てくる”素直さ”・”真っ直ぐさ”に人々は魅かれるのではないだろうか?

 人間一人でできることは限られている。物事を成そうと思えば、多くの人の協力が必要になる場面がある。だからかこ乱世のリーダーには人望が必要なのでしょう。

 ”でくのぼう”の意味で「のぼう様」と呼ばれる主人公も、決して馬鹿にされているわけではなく、親しまれてそう呼ばれている。そんな関係から、戦乱になっても、「あの人を助けてあげなければいけないよなあ」という空気が流れる。

 不思議なキャラクターである。従来の戦国時代の小説には決して現れないキャラクターだと思います。
 脇を固める登場人物をそれぞれキャラがたっていて、何とも華やかな歴史小説です。
 
 

『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一)

2009-01-24 19:39:40 | 読書日記
 「生命とは何か?それは自己複製を行うシステムである。20世紀の生命科学が到達した答えがこれだった。」

 著者は「生命とは動的平衡にある流れである」という認識。
 「生物が生きている限り、栄養学的要求とは無関係に、生体高分子も低分子代謝物質もともに変化して止まない。生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である。」

 正直なところ、本書の内容の1割も理解できなかったかもしれません。しかし、
基礎学問を日夜研究してる研究者の生活、研究の面白さ・苦しさ、成功時の知的興奮など、知らない世界を楽しませてもらいました。

 こういった専門分野の内容を素人にも分かり易く伝えることは難しいと思いますが、著者がこんなにも面白く文章にできるその技量に感嘆です。

 読みかじった内容を「○○なんだってさ」とちょっと他人に話してみたくなる内容でした。(できないけど・・・)

『数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本(細野真宏)

2009-01-11 20:05:19 | 読書日記
 数学の問題を解くということは(数式を使いながら)論理を確認するということ。

 ”分かったつもり”から抜け出すための必須事項
 ①「数学的思考力」を身に付ける
 ②「思考の歩幅」を理解する

 人によって”分かった”の基準はかなり違う。
 「数学的思考力」とは「情報をフローチャートにまとめることができる能力」
 「心地よい思考の歩幅」は、「思考の歩幅の平均値」のこと。
 人に話をする時に「心地よい思考の歩幅は何段なのか」を考える過程において、自分の論理を見直してみることで、自分の論理の欠陥に気付くこともできる。
 人に話をする時には、相手が再現できるように簡潔に整理されているのかどうかを確認しながら、”どこまで説明するのか”を考えていく必要がある。「思考の歩幅」に加えて「思考の持久力」についても考えること。

 学生向けの数学の本かと思いきや、社会人も含む多くの人向けの物の考え方を記した作品だと思います。

 数学とは「数学的思考力」を養うための勉強だったのか・・・。

 確かに高校の時の数学なんてほとんど忘れてしまっていて、「高校の数学なんて日常では必要ない」とさえ思っていた私ですが、今更ながら数学の重要性に気付かされました。
 
 例えば、人に何かを説明する時、「数学的思考力」を身につけているか否かで、その人の能力が分かってしまうのですねえ。

 この作品の全てを理解し得たとは思いません。が、時折この本をめくり返すことで、自分の生き方・姿勢を見直すことができるような素晴らしい作品だと思います。

『ストロベリーナイト』(誉田哲也)

2009-01-11 19:54:56 | 読書日記
 溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?

 姫川警部補をはじめ、それを取り巻く人たちのキャラクターがいい。どの人物も一癖があり、物語に厚みを出している気がします。

 姫川警部補の過去が最後の最後に明らかにされて、今回の事件解決へと繋がっていくのかと思いきや、以外にあっさり明らかにされてしまったのには、ちょっと拍子ぬけ。しかし、ほとんどセクハラではないかと思われる会話にも動じることなく応じる一方、その閃き(?)から、事件の真相を嗅ぎつけるセンスまで、続編が期待できるキャラです。

 厳然と存在する階級社会など、警察内部の情報もとても面白く読ませてもらいました。かなり、丹念な取材をされているのではないでしょうか。

 表題の「ストロベリーナイト」自体は、ちょっとグロテスク過ぎますが、展開の早さま相俟って、一気に最後まで読んでしまいました。

 警察小説として楽しめた作品でした。

『TENGU』(柴田哲孝)

2009-01-01 17:51:51 | 読書日記
 26年前に群馬県沼田市の集落で起きた凄惨な連続事件。通信社の記者が再度その謎に臨む。

 横溝正史の作品に出てきそうな閉鎖的集落のドロドロとした関係が展開される一方、少しずつ正体を現し始める米軍・FBI。集落の盲目の寡婦と記者との恋愛。そしてDNA鑑定から判明する連続殺人犯の正体。

 UMAという言葉を初めて知りました。結構、これに関する本も出ているようで一般的な言葉だったのですねえ・・・。

 それにしても、どうして田舎の集落のドロドロとした人間関係から生まれる殺人事件とUMA的世界を一つの作品に仕上げてしまうことができるのでしょうか。そしてハードボイルド的記者の活躍や、なんともやるせない恋愛まで盛りだくさん。
 著者のスケールの大きさと、読者を楽しませるエンターテイメント性が強く出ている作品です。

 UMA好きの人だけでなく、普通のミステリー小説好きの人にもお勧めできる作品です。