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群馬の田舎から情報発信!

『子どもを壊す親たち』(長田百合子)

2010-08-31 19:34:45 | 読書日記
 引きこもり70万人。予備軍155万人。(予備軍をいかに調べたのか気になりますが・・・)
 増大する一方の引きこもりに打つ手はあるのか?

 引きこもりの親の最初の失敗は、子どもの幼い頃のわがままを簡単に許してしまうこと。
 引きこもりは社会適合できない、人との関わりを上手くできない人たち。人間は決して一人では生きていけないのだから、力づくでも外にだす。そして人と関わらさせることが必要。

 医者が学者がなんでも知ってるかのように、「休みも必要だ。少し暖かく見守ってください」なんて言うが、現実はそう上手く言えない。
 引きこもりが長くなればなるほど、社会復帰が難しくなる。できる限り社会との関わりを復活させる必要がある。

 下手に心療内科などに行くと、それらしい病名を付けられて「病人」にされてしまう。向精神薬などを飲み始めたら、通常の自分を見つけられなくなってしまい、復帰は絶望的になる。

 自信の経験をもとに、何とも歯切れのいいアドバイスが満載です。

 子どもはいつまでも親が面倒をみることはできない。生きていくのはあくまで自分なのだから、自分で社会と関わりをもとうとしないといけない。少し可哀そうでも、一人で何でもさせる。そしてその責任は自分で取らせることを幼い頃から教えることが親の役割か。

『パラドックス13』(東野圭吾)

2010-08-31 19:20:02 | 読書日記
 数学的にあり得ないパラドックス、P-13現象により、別の世界に平行移動してしまった人たち。
 元の世界に戻れる可能性のない人たちの集団。そこでは、元の世界の善悪は通用しないのか?
 
 東野作品としてはちょっと異色?か。読み始めた時は、パラドックスP-13現象の謎が気になってどうしてもその科学的解明が知りたくて次から次へとページをめくりました。が、途中からそんな科学の話ではなく、非現実的世界の中で善悪とは何か?自分の生き方を貫くにはどうしたらいいか?仲間をどう考えるか?などと重たいテーマが描かれてきて、やや驚きました。

 さすが東野氏らしく単純なSF小説なんて書かないよな~。やはり中心は「人間」だ。

 少々安心して最後まで楽しませてもらいました。

『ミッション』(新堂冬樹)

2010-08-22 18:53:47 | 読書日記
 しがないサラリーマンが突然車に拉致され、暴力団組長の娘を殺せと命じられる。そして、分けの分からない訓練が始まる。

 ”ノンストップ・サスペンス”とのことであるが、確かに展開が早く、最後まで最後まで楽しく読ませてもらいました。

 新堂氏の作品としては、比較的ライトなエンターテイメント作品です。

 純粋に主人公の哀れを楽しんでほしい。

『虐殺器官』(伊藤計劃)

2010-08-22 18:35:50 | 読書日記
 謎の男、ジョン・ポールが現れるところに虐殺が起きる。彼が操る”虐殺器官”とは何か。そして、彼の目的は何か?

 高度に発達した軍事力を持った近未来。人間の脳にもコーティングして、痛みを感じなくさせるどころか、人を殺すという感情をも無くして戦場に向かう兵士。圧倒的な軍事力で後進国を圧倒してしまう。
 著者の筆力によるリアリティが凄い。

 近い未来、こんな世の中にならないことを祈るばかり。
 SF小説とはいえ、実際に起こりそうに予感させられるくらいである。
 しかし、著者の知識と想像力、構想力は凄い。
 30代でこんな完成度の高い作品を書けるとは・・・。

『最新の経済と政治のニュースが世界一わかる本』(細野真宏)

2010-08-14 20:40:56 | 読書日記
 今回は大きく分けて、年金問題と財政赤字の問題の2点を分かりやすく解説してくれています。

 「未納が増えれば年金制度が破たんする」や「少子高齢化が進めば年金制度が破綻する」といった、「年金破綻論」は、世界有数の「ひっかけ問題」であるとし、これまで構築されてきた年金制度について詳しく解説してくれています。
 また、「既に日本財政は破綻している」という短絡的な考えにも、財政制度を分かりやすく解説しながら、日本の現状を解説してくれています。

 民主党のマニフェストの甘さを追及していて、若干民主党に厳しいかな、という気はしますが、政権政党とすればこれ位の批判に対しては、正々堂々と反論して欲しい。あるいは、こういった批判を取り込んだ上で、より一層素晴らしい制度を構築して欲しいと思います。

 「まずは「思考停止」せずに自分の頭で考え続けることが求められている。」

 「「仮説」を「検証」し続ける作業を繰り返して、体系的に情報を整理して組み立てていけば、~表面的な情報に惑わされずに済む「経済の本質」(全体像)が見えてくるのです。」

 確かに、新聞の見出し程度の知識で、分かったような気分になっている事柄なんと多いことか。
 日々の努力の積み重ねで、漠然とした不安から逃れ、前向きな人生を送ることができるのでしょう。


『永遠の0』(百田尚樹)

2010-08-11 21:26:55 | 読書日記
 特攻隊で死んでいった兵士たちは、決して好き好んで行ったわけではない。
 当時の軍隊の中では、「行かない」という選択肢はなかった。反強制的に志願させられて、短い時間の中で自分の死との折り合いをつけて、死んでいったのである。

 戦争を知らない世代からすると、特攻隊は”テロリスト”と映るかもしれないが、当時の特攻隊員を取り囲む状況からすれば、決して現代の”テロリスト”と単純に同一視できない。

 「桜花」という兵器をこの作品で初めて知りました。人間が操縦するロケット爆弾です。自力で飛び立つこともできず、着陸することもできない。旋回もできず、ただ真っ直ぐに滑空することができない。戦闘機に懸吊され、上空から敵艦に向かって飛んでいくだけ。
 よくもまあ、こんな非人間的な兵器を作ったものだ。
 この「桜花」の乗組員だった人が、アメリカのスミソニアン博物館に展示されている桜花の名前を見て号泣する場面では思わず涙してしまいました。そこには「BAKA-BOMB」、バカ爆弾と書かれていたからです。
 この爆弾を開発した人は大まじめに開発したのでしょうが、第三者的見地からすれば、ただのバカな兵器にしか過ぎなかったのです。そして、当時の軍、日本人はそれを指摘したり、批判したりすることもできなかったのです。

 海軍にいながら、「生きたい」と公言し、臆病者などと陰口を叩かれもした主人公が、どうやって自分の気持ちを整理して特攻にいったのか。日本人としての責任、男としての気概や愛情、涙なくしては読めない作品でした。

『もし顔を見るのも嫌な人間が上になったら』(江上剛)

2010-08-07 18:24:31 | 読書日記
 「日本のサラリーマンよ、今こそ危機管理に目覚めよ。自分のことは自分で守ろう。」
 ビジネスマンの危機管理術を具体的な質問形式で答える形の作品です。

 ビジネスマン危機管理3カ条
①違和感力
②判断力
③行動力
 
 会社というものは非常なものであると認識し、気を楽に、ちょっといい加減ぐらいで丁度いい。そして、戦うべきときは腹を括って戦う。

 結局は自分の人生なのだから、自分がいかに幸せに暮らせるかを優先する。会社のために自分を犠牲にする必要はない。

 メガバンクの支店長まで経験した著者だけに具体例に対する答えも具体的で実践しやすい。
 「ビジネスマンがんばれ」という応援歌的作品です。


『不幸になる生き方』(勝間和代)

2010-08-07 18:09:39 | 読書日記
 不幸になる生き方のパターンを知り、避けるための技術を説いた作品です。

 7つの法則
①有責の法則:なんでも他人のせいにする
②双曲の法則:目先の欲求に負けがち
③分散の法則:仕事一筋、あるいは、子どもだけが人生
④応報の法則:陰口、悪口が最大の気晴らし
⑤稼働の法則:「面倒くさい」が口癖
⑥内発の法則:自分のやりたいことがわからない
⑦利他の法則:自分のことが、なにより大事

 「少なくとも、現生における幸せとは、昨日できなかったことが少しずつできるようになり、そして、だんだんと得意技が出てきて、その得意技を人に提供することで感謝を報酬の形で受けとることができるようになり、そしてその報酬を使ってほかの人の幸せにする、この循環なのではないかと思います。」

 幸せの定義は人それぞれです。したがって、「幸せになる方法」は千差万別、いろいろあるでしょう。
 
 逆に不幸になる生き方というのは標準化・定型化しやすい。不幸を避ける生き方をすることが、幸せになる近道である。著者の視点の鋭さです。(とはいえ、著者は著者独特の視点ではなく、先人がいろいろ言っているとのことですが)

 幸せになるのは「技術」が必要と言い切ってしまう著者の迫力に圧倒されました。

 
 

『ギャングスター・レッスン』(垣根涼介)

2010-08-07 17:49:28 | 読書日記
 裏金強奪のプロ、柿沢・桃井のコンビに新たにアキが加わり、テクニックを伝授するという話。

 拳銃の話などはかなりマニアックで、まさに”ハードボイルド”的な作品です。アキが失敗した時の仲間どおりの言いあいなどは、ちょっと御愛嬌といったところか。
 アキの失敗も、今後の作品につながっていくという風に理解すべきか。

 個人的には、3人の話が終わったあとの、後日談が面白かった。日本を逃げ出してきた棹師気取りのヤクザと、夫や子を捨てて日本を出てきた日本人女性。「おもえなんかに説教されたくないよ」ということで、丸く?収まる。なんとも人生は分からない。こんな人間の機微をコパカバーナの風と一緒に届けてくれます。粋な作品です。

『変身』(東野圭吾)

2010-08-03 15:21:06 | 読書日記
 平凡な青年が、脳移植手術を行ったところ、少しずつ提供者の資質が現れて、あたかも提供者に体が乗っ取られるかのように自己崩壊していく・・・。

 脳科学の進歩具合はよく分かりませんが、人間の死とは何か、「自分」とは何かを考えさせる作品です。

 自分が自分でなくなっていく恐怖を、著者は素晴らしい表現力で作品にしています。思わず背筋が寒くなる気がしました。

 それにしても、著者の発想力、構想力、そして作品に仕上げる能力の凄さには驚かされます。