一、同(寛文)八つちのへ申の年
此年春中に大風三度同二月四日猶大風 此年之二
月江戸十の物八つほどの火事と令風聞候 此年之
二月廿五日に嶋原の御領主合力左近様御配所御城
御番稲葉能登守様 此年之前年當二月比迄西より
よる/\白気たつ 此年疱瘡流行 此年之三月十
四日之夜熊本ゑんせうぐらに火入る 此年之春の
大水に御普請所多令出来御普請奉行に中川梶右
衛門殿柴任角兵衛殿碧川筋に御出被在候 此年之
二月卅日に孫左衛門太兵衛高出入すむ此由之事別
書に令細書入に遣候書状に有 此年太守様飯田山
観音堂御建立被仰付候 此年當所天満宮社地之材
木一本 公儀へ申上候て拝領仕修復いたし候 此
年従公方様寺社に被 仰渡候御事を従御寺社御奉
行衆被仰渡候 此年之十一月に舟津村まかどのの
下道に剱死の者有之を公儀へ申上候へ共死候者も
殺し候者もしれず候 此年十一月廿四日の寅の時
にゆめに見候は熊本長谷寺の観音に参候處に厨子
の御戸開きて御座候厨中之佛像白木にてきざみし
くわんおんにて候蓮臺の座に自分両手を合せ打か
け拝居候に忝も観世音被仰候は脉を見よと被仰左
の御手をさしおろさせ候に蓮臺より下に御手
下り申候心に奉存候は佛は偖も御自由成御事かな
御足よりか下迄御手をさげさせられ候不思議と乍
奉存左之御脉をうかゞひ上申候へは又右之御手を
右之通に被遊候乍御両手うかゞひ奉り候に御脉ふ
とく御手あたゝかに御座候そこで申上候は御中風
らしく奉存候と申上候へば被仰候はいや/\中風
を患ふ身にてはなく候と被仰候時分又申上候は偖
は御中寒にてもと申上候へば中寒は尤と被仰候て
なんぢか心に思ふ様に薬を得させよと被仰候と其
ゆめさめ候それに付附子理中丸を調合仕丸め候て
衣には抹香をかけ同氏孫兵衛にもたせ長谷へ道観
音の隔子之内に奉納仕らせ候不思議なるゆめと難
有奉存候 此年十一月十五日に當所彌右衛門より
屋敷外の塘をすぐめて得申候 此年より野びらき
銀■(表示不可)ずわりに被仰付候
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