娘婿の祖父にあたる人が亡くなった。正式には祖母の連れ合いである。喪主であるこの祖母殿は、娘婿の母親の実姉というややこしい関係である。つまり姉が妹を養女にしているわけである。祖父なる人は多彩な病歴を持ち、ガンを患っての生涯であったが享年82歳であったから、祖母殿にいわせると、「よう長生きした、天寿じゃ」ということになる。二三度しかお目にかかっていなかったが、お通夜・お葬式に参列した。お通夜の席で一言お悔やみをと思い声を懸けると、速射砲の如きおしゃべりが始まった。ご亭主の病歴から臨終までが時系列で詳細に、それも口を挟む間もないほどの速さで語られる。娘からきいていた「おしゃべりおばあちゃん」が喪主殿で有ることを忘れていた。和室の式場で膝が悪い喪主殿は椅子に腰掛けていたが、妻の「お膝がご不自由のようで」の一言を聞くや否や、今度は主題がそちらに移りとうとうとその予防策についての講義が始まった。まわりの人たちは、喪主殿のおしゃべりについてはとっくにご承知らしく、時折被害者たる我々の方を眺めてくる。お気の毒にといった感じである。一歳二ヶ月の孫(祖母殿から玄孫)が会場を走り回り、参列者に体当たりしていく。笑い声が上がり祖母殿の話が一瞬途切れた。ここぞとばかりに挨拶をして席を離れた。孫の頭をなぜたのは、さよならの挨拶と共に感謝の気持ちを添えてである。祖母殿は二つ三つ作られている話の輪から取り残されて、淋しい喪主の顔に戻っていた。
コメント (0) |
トラックバック (0) |








