巷で急に「ビッククラブ」の話題が出てます。何故この時期に、というか、話題の出所というか真意が気にはなります。
で、その「ビッククラブ」って具体的に何を示すのか、定義は、となります。
タイトル数、フル代表メンバーの数、観客動員数、選手人件費、資金力(事業規模)、歴史が指標の候補でしょうか。
現状では資金力が最も有力な指標に思えます。
で、Jリーグに「ビッククラブ」が必要か、と問われれば、意味の無い議論と私は答えます。
理由は「何のために必要か」、「誰にとって必要か」という点が欠落している、あるいは説明&根拠がちょっと足りないかな、と思えるからです。
Jリーグにとって必要か
皆様には釈迦に説法でしょうが、設立の時点でプロ野球に見られる「ビッククラブ」あるいはその形態は不要と判断したものと想像します。
クラブ数を抑制して資源(スポンサーや観客数)の集中を図るのか、悪く言えば「ドングリの背比べ」になることを覚悟の上で裾野を広げるのか、この辺りはかなり慎重に議論・検討されたものと思われます。
結果として後者の路線を選択したことにより、資金力が圧倒的に多いクラブへ発展することは非常に難しくなったと考えます。鹿島なり磐田なり、他の追随を許さない黄金期を築いたクラブは出現しましたが、資金力レベルで「圧倒的」というほどでは決してないですし。
Jリーグは理念として次の3つを挙げています。
一、日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進
一、豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与
一、国際社会における交流及び親善への貢献
この理念そして活動方針からは、「ビッククラブ」の必要性を読みとることは出来ませんし、当然のことながら逆の路線を重視している文言が見られます(「地域(の人々)」というフレーズが多く使われている)。
というわけで、「理念」と「活動方針」だけを見ますと、Jリーグが方針転換を行う可能性は非常に低いように解釈されます(これまでの活動・投資が無駄になるリスクもある)。人口減少、嗜好の多様化の中で、かつてのプロ野球のように人気クラブへの寡占化を図るのは時代錯誤との謗りを免れないでしょうから。
一方、収益性を改善する方針を強化するとなると、話はまるで違ってきます。
採算性の悪いクラブを分離(感情的な表現では切り捨てか)し、10クラブ程度のプレミアリーグを新設するとなると、ビッククラブ化への道も開けるでしょう。「資源」を集中できるでしょうし、放映権料の分配も限定でき、コストを抑えることが出来るでしょうから。
これによって「日本サッカーの水準向上」が図られるかどうかは甚だ疑問ですが、Jリーグが利潤を追求するのならば、「あり」でしょうね。
この場合、真っ先に切り捨てられるキーワードは、「積雪地域」、「少ない観客動員数」、「下位低迷」。
なんだなんだ、良く見るキーワードだぞ。しかしノーコメントで。
Jリーグは、まあその、焦っているのかな、と思います。
アジア諸国のリーグも力を付けていることへの危機感や、当初思い描いていた20年後より歩みが遅いと評価している故かもしれませんね。
地道でも歩みと活動は着実に、宣伝は派手に大声で、というスタンスを望んでいます。
ワールドカップでタイトルをとるために必要か
これについては私のような浅学非才の者が記述するのは気が引けます。
言えるのは、日本全国津々浦々から才能ある選手を発掘し、育てるには今のシステムはベストではないにしても、ベターなんじゃないかと。
クラブ数の多さも「就職先の確保」&「試合出場経験を積む」意味でも、多すぎることはないと思います。
選手の待遇改善のために必要か
総論賛成各論反対、という課題でしょう。
どの水準の選手報酬をアップさせるのか、という点で。
私は最低報酬を(出来れば飛躍的に)アップさせる、という取り組みが必要だと考えます。
Jリーガーの最低年俸は500万とかに。
ビッククラブ云々は高額年棒の選手を誕生させることが目的のようですが、それが「夢」に繋がるのか疑問です。
またビッククラブが選手全体の年棒の引き上げに繋がる、という考えの根拠が薄弱、いや論理に飛躍があるように思えます。何か順序が逆じゃないかと。各クラブの経営が安定することによって選手の待遇改善を図る方が、回り道をしているようで実は早いのではないかと考えます。
ともかく「プロ選手」とは言えないような待遇改善を図る方が先決でしょう。
待遇改善が達成された上で格差が生じるのは健全な競争によるものだと評価出来ます。
現在のチケット料金は安過ぎる面がありますので、料金体系を改める必要性を感じます。
サポーターとして身を切る覚悟もないと。批判だけでは何ら進歩しないでしょうから。
誰が最も利益を得るのか
メディアでしょうね。
40クラブもあるのは、メディアにとってデメリット以外の何ものでもないのでは、と感じることがあります。
サッカー雑誌でカターレ富山の特集を組んでくれたとして、どれでけ売れますかね。オリジナル10とは(字義通り)桁違いでしょう。
コストを考えると、採算にならないかと。
それでも試合がある以上は、富山も取材しなければならないでしょう。
スカパー!の加入者が最下位でも、富山戦を全く中継しないわけにはいかないでしょう。で、限られたチャンネル数を富山に使われるわけです。
(富山を他のクラブに置き換えても良いでしょうが、それはあまりに非礼ですので、富山としました)
人気クラブに限定されたリーグが設立されたら、上記の課題は解決するどころか、メディアにとって魅力ある市場にJリーグはなります。
そしてビッククラブが誕生した場合、市場としてより安定したものになる可能性がありますよね。
そんなこんなで、このテの話題はメディア側の我田引水と評さざるを得ません。
20年前、故郷の県にJリーグクラブが誕生しました。
しかし、学生として富山に来ていた私には遠い存在でした。まして、生まれ故郷とはかなり離れた都市をホームタウンとするクラブでしたから。
富山にJクラブなんて、妄想にも浮かばなかった20年前。
出身地に関係なく、カターレ富山が地元クラブです。
敢えて言おう。
Jリーグがある喜びではなく、カターレ富山がある喜びであると。