穴にハマったアリスたち

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感想「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」(3/3)

2022年04月03日 | プリキュア映画シリーズ
先々週放送分(感想)、先週放送分(感想)からの続き。

■感想「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」(3/3)


(「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」より引用)

突然やってきた対策不能な理不尽に対し、「思い出があるから踏ん張れる」と立ち上がった野乃さんを待っていたのは、「では思い出がない者は救われないのか」の痛烈なカウンターでした。
ミデンには何の責任もない。それなのに、ただの不運で活躍の機会を奪われ、努力の余地すらなく葬られた。挽回するチャンスも、改善するタイミングもなかった。ただただ一方的に、どうしようもない不幸で思い出も未来も閉ざされた。そんなミデンは救われないのか。

これに対する歴代プリキュアからの畳みかけるような回答が熱い。
ただの「懐かしのプリキュア大集合!」ではない。それぞれのシリーズが1年かけて取り組んできたテーマを、各々の短い時間にぎゅっと圧縮して叩き込んできます。

一つ一つはミデンの抱える救い難い苦悩への回答としては弱い。でも15年の蓄積での連打が力づくでこじあける。
現実もそうだと思う。たった一つの「刺さる」回答ももちろん大事だけど、複数の回答の合わせ技も大事なんですよ。これがダメならあれ。あれも外したらそれ。それが機能しなくなったらこれが活きる。軸を複数持つのは大事で、「複数ある」のはこれまで頑張ってきたから。プリキュアの歴史が雄たけびを上げて、ミデンの苦悩に挑む…!

以下は以前に書いた記事から体裁だけ整えて引用します。

===[再掲]====
『アラモード』
「大好きの中にも辛いことがある」から転じて「辛いことがあっても大好きを諦めない」。
その象徴たるジャンピエール氏の雄姿は忘れられません。
「スイーツ作りには視覚や聴覚も大事だ」と力説した直後、光源喪失・大家からのプレッシャー・騒音と悪臭・カラスの物理攻撃と、もう菓子どころではない状況に追い込まれながらも、それでも菓子を作る。パティシエたるもの、いかなる状況でもスイーツを作るのだ!

そんな信念のアラモード組は、やっぱりスパルタです。
何もない?だから何だ。たかがそんなことで、大好きを諦めるな。
生産中止だろうが倒産だろうが、カメラたるもの思い出を記録するんだ!

『魔法つかい』
校長先生はおっしゃった。
「言葉は願いを、願いは魔法を、魔法は奇跡を起こす」。

言語化されたミデンの願いを魔法つかいさんらは受け取った。
願いが伝われば、魔法をかけられる。
だから彼女たちは魔法をかけた。ミデンの心が救われますように。

おそらく彼女たちは直接的な解決策を持っていない。
できることはあくまで「ミデンの願いが叶いますように」と魔法をかけるだけ。
そしてその「魔法」もおそらく意味はない。「願いが伝わること」、コミュニケーションこそが魔法なんだから。
願いを言葉にし、他者に伝える。それ自体が魔法であり奇跡。

この1シーンのおかげで、本編でのキーフレーズ「魔法にルールがある」「敵を遠くに飛ばす」を、ようやく消化できた気がする。
「異文化交流」から「私の中にも複数の自分がいる」。そして「複数の私や他者を結び付け、次々と広げていくのが魔法(言葉)」。では交流することが出来ない相手は?
現時点での解では叩きのめすしかない。だけどそこに少しの猶予を持たせない。だから「あっちに行きなさない」「虹の彼方へ」。いつかきっと分かり合えると願って。

『プリンセス』
夢への道は果てしない。未来永劫、果てなく続く。
それでもプリンセスは突き進む。その姿を見て、民もまた奮起する。
自身が強いのはもちろんのこと、周囲に影響を与える。それがプリンセスだ。

悩み、絶望の檻に閉じこもったミデンに、姫様は高らかに宣言なさった。
今からその檻をぶち壊す。そして檻から放たれたなら、夢へと続く絶望の道が待っている。
あるいはそれは、檻に閉じこもっていた方が幸せかもしれないぐらいに。
だから宣告する。さあ、「お覚悟はよろしくて」。

本編ではディスダークに強制的に閉じ込められてたのを解き放っていた。「お覚悟」は敵に向けての台詞だった。
今回は違う形で使っているけれど「本来はこうだったのでは」と思いたくなるほどハマってる。
民よ、覚悟を決めよ。私の後をついてこい…!

『ハピネスチャージ』
フォーチュンさんの発した「まだまだ!」は、「人形の国」の一幕を思い起こさせます。
10年を記念した「ハピネス」チームがぶつかったのは、「プリキュアなんて所詮はアニメ。現実の不幸の前には役に立たない」という残酷な壁。
初代を見ていた子供たちが中学生・高校生になり、世界はキラキラしたものばかりではないと悟った時代。無力に踏み潰される子供時代の大切な宝物たち。
あの時、ラブリーさんたちは「無力だけど、そばにいるよ」「だから頑張って」としか言えなかった。

それから5年。現実を知り、それでも歩んだ5年。
改めて発せられた「まだまだ」。あの時は「つむぎちゃんが味わった現実の苦しみはまだまだこんなものじゃない」。
今回は逆。ミデン=立ち上がれなかった つむぎに対し、「現実の苦しみはこんなものじゃない。だから踏ん張れ」。

ラブリーさんの「あなたも幸せにしたい」は、あの時はつむぎさんに言えなかった。
確かに思い出を得られなかった。でも思い出に憧れたイノセントな気持ちは嘘ではなかったはず。
それなら、思い出を自分で汚すような真似はやめよう。そんなの、ラブじゃない。

あの時通じなかったハニーソングや、空振りしていたハワイアンアロハロエを、さりげなくぶっ放してるのも熱い。この5年で、彼女たちも成長なされた。

『ドキドキ』
ただ一言「愛を知らない悲しいカメラさん。あなたのドキドキ、取り戻して見せる」。
聞きようによっては無神経。だけど彼女たちには、それを言う覚悟がある。
何せミデンと同じく、切り捨てられた側の人たちだから。

国民と娘を天秤にかけ、国王は民を切り捨てた。
もしも王女様が平和を選んでいれば、戦いもあっさり終わっていた。
「幸福の王子」に切り捨てられたツバメのように、ドキドキさんは切り捨てられた。

ドキドキさんの戦いは最初からチャンスはなく、守りたい人から選ばれなかった。
それでもソードさんは言った。「愛に罪はない」。
ミデンを捨てた会社の人たちだって、ミデンを憎んでのことではない。守りたいものがあったんだ。
だから「愛に罪はない」。

『スマイル』
多分ハッピーさんらは「ミデンの絶望は救われない」と悟っている気がする。
未来には破綻が待っている。どんなに努力をしても、破綻そのものは回避できない。
夏休みはいつか終わるし、12時の鐘がなれば魔法は解ける。
でも、いざその破綻が訪れても、それでもキラキラ輝く明日を信じて笑顔でいよう。だから私たちはスマイルプリキュアだ。

象徴的なことに、マーチさんの放った攻撃はほとんど何の効果も持たずに飲み込まれています。
他の面々も派手に応戦してはいたけれど、スタミナ的に戦力としては一番先に脱落すると思う。
それでも「気合いだ」と叫ぶ。どうしようもないと分かっていても、それでも信じる。
奇跡が起きるから信じるのではなく、信じることそれ自体が奇跡。
「破綻する」と分かっていても未来を目指してウルトラハッピーと叫ぶ。それができたなら、確かに未来はウルトラハッピーだし、その姿はミデンに絶望に立ち向かう希望を与えるはずだ。

『スイート』
他のチームが「ミデンは何もない」と認識している中、スイートチームは違う。
ミデンは「何もない」ことを「悲しい」と感じていた。
「何もない」じゃない。「悲しい」なんだ。そして「悲しい」なら分かる。それは私たちも経験したことだから。

「プリキュア」史上に残る大どんでん返し「ノイズの正体は「悲しみ」だった」と同じ。
ミデンの目的が「世界から全てを無くしてしまおう」だったら理解できなかった。
でも「何もないのは悲しい」なら理解できる。この瞬間、正体不明のお化けではなく、私たちと同じ存在になった。「悲しい」なら分かり合える…!

これをここで持ってきてくれたのは本当に嬉しい。
蛇足ながら、本編では一番状況を理解してなさそうだったリズムさんが、その言葉を言ってるのも良いですね。私にも聞こえる…!

『ハートキャッチ』
花咲さんは、まず間違いなく状況を把握していらっしゃらない。
でもいいんです。そもそも人様の事情なんて分からない。

プリキュアが頑張って敵を倒したところで、個々人の悩みは解決しない。
服を変えても内面が変わらなければ意味がないように。変身しても本人が変わらなければ弱いままなように。
でもそれでいいんです。
服を変えれば気持ちだって変わるじゃないか。本質的な解決ではなくても、それでも助けになるのも確かなんだ。

かつてパリの人たちが、何の事情も分からぬまま差し出してくれた花は、確かに花咲さんを勇気づけた。
突然現れたデカいトカゲに、事情なんぞさっぱり分からぬまま振ったミラクルライトは、ブロ子さんたちを助けてくれた。

だから花咲さんは状況をいまいち分らぬままに、おしりパンチとかやりながら、それでも啖呵をきる。
何もないミデンにだって花は咲く。だって砂漠や宇宙にだって花は咲くんだから。

『フレッシュ』
人生山あり谷あり。されど辿り着く先は一つ。
ルーレット伯爵の重い言葉。絶対的な事実。物事には終わりがある。

やり直しも何も、ミデンは生産中止されて廃棄されているのですから、もう詰んでいます。
失敗とかそういう問題ではない。全ては終わったのです。

でもそれでも桃園さんは叫ぶ。やり直せると。
トイマジンがクマさんとして第二の人生を歩んだように。イース様がパッションさんに蘇ったように。
実際、野乃さんがとった救済策は、正にトイマジンと同じです。
どんなに終わったかに見えても、やり直せるんだ。

あの時トイマジンに通じなかった技を出しているのも熱いです。
今の桃園さんなら、伝えられる。

『5・GoGo』
人は最終的には一人だ。でもどこかで友が歩んでいるなら、自分も頑張れる。
一方、価値観の異なる相手はどうにもならない。こちらの夢を守るため、問答無用で叩き潰すしかない。
こちらから話しかけたり答えたりする暇はない。だって夢が呼んでるんだから。
もし分かり合いたいのなら、私たちと同じステージに上がってこい。
無茶だ、どうしようもないと思うかもしれない。でも私たちもそうだった。そして立ち上がってここまできた。

夢原さん:
 「だから、大丈夫」

問答無用の説得力です。他の5人が何かを補足するまでもない。
私たちの夢が「大丈夫」といった。だから大丈夫だ。

プリンセス組が「先を行く背中に励まされる」のに対し、GoGo組は「横のどこかにいてくれる」ことに勇気づけられます。
この後の遠景に、巨大なバラが直立出現してるのが非常に素晴らしいです。あの爆心地に夢原さんがいる。なんと心強いことか。

『SplashStar』
「全てのものに、命が宿る!」

無機質な死に絶えたかのように見える世界にだって、土や空がある。
そこから生命は生れ出るのです。
だから何もないかに見えるミデンだって、命を生み出せる。
無機質な物質に過ぎなくても、そこから命や思い出が生まれるんです。

「いっそ諦めた方が楽になるのに」と言われ続けた美翔さんらの必殺の台詞が、12年の時を経て再び木霊する。
「絶対に、諦めない!!」。

『MaxHeart』
先輩方はもはや語るまでもない。エキストリームルミナリオ!
15年かけて積み重ねてきた数々の回答。
そしてそれらを最後に使うのは、

美墨さん:
 「最後の一押しは、あなたにかかってるよ」

プリキュアなんて現実の不幸の前には役に立たない。
重く付きまとってきた呪縛を、15年の積み重ねそれ自体が力技でぶち破る。
今まで苦しみながら歩んできたこと自体が回答に繋がっている。
だからこれからの15年も歩ける。まず間違いなく苦しい15年だし、15年後は今以上の絶望が待っていると思う。
それでも「15年を歩んできた」ことそれ自体が回答になったように、これからの15年の苦しみもそれ自体が回答になるはず。
未来の自分を裏切らないために、過去の自分を裏切らないために、だから今立ち上がるんだ。
===[再掲 終]===

名実ともにシリーズに一区切りをつけた素晴らしい映画でした。
もう間もなく20周年ですが、この感動から更にどのような未来に進むのか楽しみです。

【ミラクルライトと視聴者】

オールスターズ復活の決め手となったミラクルライト演出は、もう言葉になりません。
「プリキュア」世界の中では解決できない。でも「プリキュア」を応援してきた視聴者の中に「プリキュア」はいる。だから復活できる。応援してくれる視聴者がいる限り、「プリキュア」は立ち上がってくれるし、だからこそ私たちも現実の不幸に立ち向かえるんだ。

無粋を承知で続けますと、この「視聴者の応援でプリキュアが蘇った」は、「ハグプリ」本編の謎解きにもなると思っています。
歴史改変説を前提にする場合、「歴史を変えたのはタイムトラベルではなく、21話で黒白キュアが召喚されたことだ」とするのが私としては一番綺麗に説明できる。

21話にてメロディーソードをマシェリが欲しがりました。視聴者の誰もが追加玩具を連想したはずで、私らの知る最も頼もしい「玩具」は「プリキュア」です。だから黒白キュアが召喚された。
ハグプリ世界は本来はずっと同じ歴史を繰り返していた。でも今回のループでは我々視聴者が観測していた。だから黒白キュアが召喚され、歴史が変わった。

「オールスターズメモリーズ」と同様のギミックで未来が変わったとするのは整合性が取れているし、タイムトラベルの難点であるタイムパラドクスを綺麗に回避できます。
(詳細:「世界はいつ分岐したのか」

また、「視聴していた私たちの歴史が変わった」ことも示唆されます。時間ネタの創作物は多数あれど「読んだ(視聴した)私たちが改変に巻き込まれた」構成は、私の知る範囲ではありません。定番の「プリキュアがんばれー!!」をSFギミックとして昇華した、「プリキュア」コンテンツだからこそできた時間SFとして特筆すべき構成だと思う。
(参考:「歴史が変わる前の物語」

この説にはちょっと愛着があるので、折につけて主張していきたい。
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