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スーパーゴッズ アメリカン・コミックスの超神たち

2013-04-04 | 
アメコミ読みにとっては、グラント・モリソンという名前は聞き覚えのある名前かと思います。
邦訳作品もバットマンの「アーカム・アサイラム」、ブラックグローブ3部作に
非ヒーローアメコミである「WE3」がございますし、
未邦訳作では「DOOM PATROL」「NEW X-MEN」などの変化球から「JLA」の王道まで書く
アメコミ界のトップライター(原作担当)のひとりであります。
そんなイギリス・スコットランド出身の彼が
「スーパーヒーローコミック」の歴史と、自分の人生を重ね合わせて評論する
あとがき含め619ページ、厚さ43mmの本がこの「スーパーゴッズ」です。

スーパーマンとバットマンの誕生による「スーパーヒーロー」という概念の始まりから
コミックス・コード誕生による衰退までの『ゴールデン・エイジ』、
マーベルによる新時代のヒーロー達・・・ファンタスティック・フォーやスパイダーマンの誕生に
共有世界である「ユニバース」の確立の『シルバー・エイジ』、
現実社会の闇を反映し、深みを増していくストーリーと、
ついに起こる「ブリティッシュ・インベイション」によるイギリス人ライターたちの進出、
そして生まれる「ウォッチメン」に「ダークナイト・リターンズ」、「アーカム・アサイラム」から
イメージコミックス設立とグリム&グリッティ時代の『ダーク・エイジ』、
コミックバブル崩壊と行き過ぎた暴力描写への反動からのヒーローコミックの再生に
911テロの影響、大規模イベントの連続・・・というコミックの現状『ルネッサンス』の
4つの時代に「スーパーヒーローコミック」が何を描いてきたのか?ということを主旋律に、
1960年にイギリスのリベラルな家庭に生まれた少年がアメリカンコミックに出会い、
パンクに出会い、コミック業界に入り、人気ライターとなったか・・・の
物語(と言ってしまおう)も描かれております。

モリソンの活躍の場が主にDCであること(マーベルでの仕事は苦い結末に・・・)と
今回の軸となるテーマが「スーパーヒーロー」論であることから
紹介されているコミックに偏りがあり、
オルタナティブなものを含めた「アメリカンコミック」全体を俯瞰するものではないことと
作品の性格上、図版ももう少し欲しかった・・・という気はしないではないですが
難解だったり理解不能だったりするモリソンのストーリーの裏側には
これほどの王道ストーリーへの愛があったのか、と思わされ、
また、アラン・ムーアを始めとした他のクリエイターへの言及や
たびたび出てくるトリップ体験なども
「いかにもモリソンらしいなあ」と思わされつつ、
この分厚い本をぐいぐいと読ませてくれる推進力となっています。

「アメコミをまったく知らない人への入門書」ではなく
アーティストの名前を見ただけでどんな絵なのかが浮かぶくらいの
アメコミファンに向けた副読本、という印象も強い作品ですが
『クリエイターの頭の中を覗いてみたい(そして自分の創作に役立てたい)』と
思う方にもおすすめしたい、そして読むと「スーパーヒーロー」という存在がいままでたどってきた
曲がりくねった道のりと、変化を繰り返しながらも損なわれない魅力をしっかりと感じられる
そういう一冊であると思います。

3800円(+税)という価格、分厚さ、書店への入荷の少なさ
(特に田舎では・・・)というハードルはありますが、
その値段分の読み応えと面白さはある、がっつり向き合って読みたい良書です。

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