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預言者伝18

2011年02月08日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم
54.移住で得たもの:
  預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の移住は、“人が、イスラーム宣教と信仰のために、すべての愛するもの、慣れ親しんだもの、健全な精神が欲するものよりも、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)と彼への愛情を優先する” ことを証明しました。

  またマッカは、アッラーの使徒と仲間たちの生まれ育った土地というだけでなく、人々の心を引きつける磁石のような存在でした。しかしそこにある、人々の愛情が注がれた聖なるカアバが、彼らを、マッカ脱出や、家族と住まいの放棄から引きとめることはできませんでした。すでにマッカの地は、イスラーム宣教と信仰維持ができないほど狭められてしまい、その民がイスラームを徹底的に拒否したためです。

  人間的親愛と信仰からの愛情は、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)がマッカに対して言われた言葉の中に表れています。:「あなたはなんと良い町であることか。そして愛おしいことか。私の民が私を追い出すようなことをしなければ、けっして違う土地に住むことなどなかったのに。」(アッ=ティルミズィー)

  こうしたすべての行動は、次のアッラーの御言葉に従ったものでした。:


  「信仰するわれのしもべよ、本当にわが大地は、広いのである。だからわれだけに仕えなさい。」(蜘蛛章56節)


55.サウルの洞窟へ:
  アッラーの使徒(平安と祝福あれ)とアブーバクルは、身を隠しマッカを脱出します。アブーバクルは、あらかじめ息子アブドゥッラーに、マッカの人々が自分たちについて何を話しているか聞いておくよう言付け、召使いのアーミル・イブン・ファヒーラには、(自分たちの足跡を消すために)羊を昼間放牧することを命じました。また娘アスマーは食べ物を二人のもとに持って行きました。


56.数々の素晴らしい愛から:
  「愛」は、アッラーが人間を創造し給うた時から、驚くべき瞬間に感動的に成就し続け、心が傾き魂が愛するものへの思いやりを持ち続けています。アブーバクルとアッラーの使徒(平安と祝福あれ)の旅においても同様でした。伝えられた話によると、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)が洞窟に向けて出発した際に一緒にいたアブーバクルは、彼の前を歩いたり、しばらくすると後ろを歩いたりていました。それに気付いたアッラーの使徒(平安と祝福あれ)は、彼に言いました:アブーバクル!私の前を歩いたり、後ろを歩いたりするのはなぜですか? アブーバクルは答えました。:アッラーの使徒さま!あなたが私に何かお頼みになるのではと思い、あなたの後ろを歩き、あなたをお守りせねばと思い、あなたの前を歩くのです。

  二人が洞窟に着くと、アブーバクルは言いました。:「アッラーの使徒さま、ここを動かないでください!洞窟が安全かどうか確かめて来ます。」アブーバクルが洞窟の安全を確かめると、その中にあるひとつの穴の安全を確認していなかったことを思い出し、「アッラーの使徒さま!そこを動かないでください !安全を確認しますから。」と言いました。再度安全を確認し、自ら入ってから、「お入りください、アッラーの使徒さま!」と言った後、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)も入りました。

57.天と地の諸軍勢はアッラーのものである:
  二人が洞窟に入ると、アッラーは蜘蛛を御遣いになりました。蜘蛛は、洞窟と洞窟の前にあった木の間に巣を作り、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)とアブーバクルを覆ったのでした。またアッラーは、野生の鳩二羽に命じ給い、蜘蛛の巣と木の間に座らせました。まさに、「天と地の諸軍勢はアッラーのものである。」(勝利章4節)という状態です。


58.人間史が体験した中で最も緊張した瞬間:
  アッラーの使徒(平安と祝福あれ)の後を多神教徒たちは追って行きます。これは、終わりのない不幸の続きか、終わりのない幸福の始まりかを決める、長い人間史が経験した最も緊張した重要な瞬間でした。追跡者たちが洞窟の入口に辿り着いた時、彼らと洞窟の中の二人の距離は、彼らが足元を覗けばすぐに見つかってしまう程のものでした。

  しかしアッラーは、彼らの間を隔て給いました。洞窟の入り口に蜘蛛の巣があるのに気付いた追跡者たちは混乱します。これについてアッラーはこう仰せになっています。:「アッラーはかれの安らぎを、かれに与え、あなたがたには見えないが、(天使の)軍勢でかれを強められた。」(悔悟章40節)


59.心配してはならない、アッラーは私達と共におられる:
  洞窟の中にいた二人ですが、多神教徒たちの様子に気づいたアブーバクルが言いました:「アッラーの使徒さま!彼らの内の誰かが足を上げたなら、私達は見つかってしまいます。」アッラーの使徒(平安と祝福あれ)は答えます。:「アッラーが三人目におられる二人について、あなたはどう思いますか?」このやり取りについてアッラーは仰せになっています:
  「二人が洞窟の中にあった時、つまり彼(ムハンマド)がその同伴者に、「悲しむのではない。本当にアッラーは私達と共にあるのだから」と言った時。」(悔悟章40節)

60.スラーカが使徒(平安と祝福あれ)の後を追って起きたこと:
  クライシュは、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の捜索が困難になると、彼を見つけて来た者に、報酬として100頭のラクダを用意しました。洞窟の二人は、三晩そこで過ごした後に、ガイドとして雇った多神教徒のアーミル・イブン・ファヒーラと出発し、海岸線を抜け道として選びました。

  100頭のラクダを得ようと、スラーカ・イブン・マーリクが、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)を捕えてクライシュに差し出すつもりで彼の後を追い始めました。しかし彼が乗っていた馬がつまずき、スラーカは落馬してしまいます。二度同じことが起きてもスラーカは後を追おうとしました。しかし、彼らを見ると、馬の脚が地中に埋まり、また馬から落ちてしまいます。その瞬間、煙のよう砂埃が馬とスラーカを追って来ました。

  スラーカはその様子を目の当たりにした時、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)がアッラーの庇護下にあることを知ったのでした。それは明確で疑いの余地はありませんでした。そこで二人を呼んで言いました。:「私はスラーカ。話したいので待ってもらえませんか。アッラーに誓って、決してあなた方に悪さはしません。必要なものはありませんか、手配します。」預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は、「いえお構いなく。ただ私たちのことは秘密にしておいてください。」と答えました。アッラーの使徒(平安と祝福あれ)に会う前は、報酬目当てに彼を捕えようとしてたスラーカは、逆に護衛する側に変わりました。


61.物質主義は預言を理解しない:
  移住するほかに術のなかった預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)が置かれた状況、そして民による迫害とマッカ脱出、脱出時の追跡の中で、アッラーの使徒(平安と祝福あれ)は、自分の追従者たちがキスラーの冠とカイサルの玉座を手に入れ、大地の宝庫の鍵を開ける日を目にしました。今の暗闇の状態にいながら、輝く光の到来を預言したのです。そしてスラーカに言われました。:「あなたが、キスラーの腕飾りを身につけるのはどうでしょうか?」

  アッラーは御自身の預言者に、勝利を約束し給いました:「かれこそは、導きと真理の教えをもって使徒を遣し、仮令多神教徒たちが忌み嫌おうとも、凡ての宗教の上にそれを表わされる方である。」(悔悟章33節)

  そして預言は実現します。後に、ウマルがキスラーの財宝を手に入れると、スラーカを呼んで、それを身に付けさせたのでした。


62.祝福された者:
  二人はマディーナへの道中、ウンム・マアバドという女性のもとに立ち寄りました。アッラーの使徒が彼女の雌羊にその尊い御手で触れ、アッラーの御名前を唱えて祈ると、その雌羊から乳が出たのでした。それで彼はウンム・マアバドに乳を注ぎ、仲間たちにも与えました。再度絞ると、入れ物はいっぱいになりました。アブー・マアバドは帰宅するなり、その出来ごとについてウンム・マアバドに尋ねました。彼女は、「祝福された男の人が、私たちのところにやって来て…」と預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の素晴らしい人柄について話しました。アブー・マアバドは、「アッラーにかけて、彼こそはクライシュが探し求めている男だ。」と言いました。

  二人はガイドに導かれるまま旅路を急ぎます。クバーというマディーナ郊外の村に、ラビーウルアウワル月12日に到着し、それが、イスラームの歴史の始まりの日となりました。

(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P164~169、「預言者ムハンマドの足跡を辿って(前編)」、アブー・ハキーム・前野直樹編訳、ムスリム新聞社発行、P159)


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