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No730『春秋一刀流』~畳み掛けるようなリズム~

随分昔に見て、おもしろさに狂喜し、時代劇に一層はまった。
戦前、1939年、丸根賛太郎の監督デビュー作。
サイレント映画のような、字幕のおもしろさが、
映画のリズムを生み出し、畳み掛けるようで、
冒頭から、いきなり心が踊った。

天気は晴れ、だけど…
何某原に血の雨が降る、と出ると
画面左から、刀を片手に、
喧嘩のために一線に並んで歩いてくるやくざ者達の姿を映すと思えば、
続いて今度は、左から、
敵方のやくざ者たちが、対称的にやってくる姿を、交互に映し出す。

ぶつかって、斬りあいが始まったかと思うと、
少し離れた小山の上に地面にさされた二本の刀が映り
双方の用心棒の、片岡千恵蔵(平手造酒)と原健作とが
かつての道場仲間で、久々の再会に喜び、談笑している。
斬り合う姿を見て、あいつらはまじめにやっておるなあ、
こんな安い給金では、命を投げ出すことはできんと
高みの見物をしている。

前半、明朗時代劇というふうに
志村喬に出会い、3人がすてきなコンビとなる。
宿に繰り出せば、酒の席が縁で、
隣室の客と知り合い、沢村国太郎の身内となる。

稼いだ金で酒を飲むばかりだった彼らが、
道場を建てようと決意し、
自分達のための喧嘩の助太刀だと決心をしだした途端
運命は皮肉にも、彼らの意に反し、
一人またひとりと、命を奪われていく。

秋になり、病で伏せった片岡の寝ている家の
庭にも落ち葉が降りつもり、
お経が聞こえてくる。

ラスト、沢村たちが、
死を覚悟して最期の喧嘩に出立したと知り、
片岡が、床から飛び起き、
病の身をおして、酒をかっくらって、いざ走る。

沢村たち一陣が、列をなして歩んでいくときも
彼らの上に、陽がさし、木の影ができたりするのが、美しかったが
片岡が走っていくところでも、
片岡の主観ショットで道や影が映ったり、
空、道の上の木々が映ったり、
腰を低くして一目散にひた走る片岡のロングショットといい、すごい。

省略の妙がきいて、わたしの大好きな作品。

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