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No731『八日目の蝉』~子どもに降り注ぐ母の無償の愛~

場内では、時折すすり泣く声が聞こえたり、
上映後も、トイレで目を真っ赤にした女性の姿を見たり
きっと、子どもを持つ母親の琴線に触れるドラマなんだろうなと思った。

永作博美の力演で、
誘拐した子どもであっても、わが子以上に愛し、
一緒に過ごせる時間も限られてたものと思うからこそ、
心から大切に共に過ごす姿が、観る者の心を打つ。
きれいなもの、美しいものを一緒にいっぱい見ようという永作の言葉が
悲しくも美しく響き、
永作の童顔で柔らかな表情が、広く共感を呼ぶ。

誘拐される子ども役の渡邉このみが、
天真爛漫な笑顔で、めちゃくちゃ可愛く、
母と信じる永作を慕い、離れようとしない姿が切ない。

少し説明的に感じるところもあったが、
眠くもならず、永作が捕まる場面では目頭が熱くなった。

原作がうまくできているのだろう。
過去と現在をうまく交錯させた脚本も、奮闘している。
ただ、何かもの足りない気がするのはなぜだろう。

成長した娘役の井上真央も好演。
終始、寡黙で無表情で、とらえどころのないキャラだけに
目力がものをいう。
最後に自分自身を受け入れた笑顔がきれいだ。

ひっかかるのは、不自然さ。
不倫相手の子どもを妊娠した途端に
男性の存在が、ヒロインの中から、とんでしまっている。
そんな超越できるものだろうか。

ふと思いだしたのが、
最近、京都近代美術館で見たスイス映画
『ローズヒルの女』(89アラン・タネール監督)。
妊娠に気付いた時、恋人は、堕胎するよう言うばかりで、
全く協力的でなかったことを理由に
父親たる恋人が会わせてくれと懇願しても、
頑として聞き入れないヒロインは強烈だった。

本作では、そこまで頑固ではなく、
子どもへの愛を信じて、柔和に突き進む。

二人が過ごした小豆島の風景が本当に美しく撮られていて、
一度行ってみたくなるくらい。
虫送りの祭りの場面は神秘的で、高いところから見下ろした光景は
えも言われぬ美しさ。
海に面した公園や、
やっぱり旅をするなら、海を見たい。

小池栄子が、意外なほど重要な役割を担うが
彼女らしい、インパクトのある役。
ただ、少しおどおどしすぎのようにもみえたのだけれど。

永作が娘を乗せて自転車で疾走する場面があり、
成島監督は、
相米慎二監督の『魚影の群れ』の夏目雅子の自転車のシーンを
やりたかったのかな、と思った。

冒頭、裁判シーンから始まることも含めて
誘拐という罪の重さは、はっきり描いた上で、
偽りの母でも、心底子どもを愛し抜いた時、
“本当の母の愛”をも超えうると思わせる。
対して、森口瑤子演じる、実母の苦しみが、誘拐後も、延々と続く姿が
なんとも痛々しい。

わかりやすい物語で、多分、ヒット間違いなしと思われます。

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