パピとママ映画のblog

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ナラタージュ ★★★

2017年10月13日 | アクション映画ーナ行

決して報われない恋と知りながらも、いつまでも断ち切ることができないヒロインのヒリヒリとする悲痛な恋愛模様を綴った島本理生の傑作恋愛小説をTV「ひよっこ」、「ストロボ・エッジ」の有村架純主演で映画化。高校時代に部活の顧問教師へ抱いた特別な感情を忘れられない女子大生が、新たな恋に踏み出す中で苦悩を深め激しく揺れ動く姿を描く。共演は松本潤と坂口健太郎。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」「ピンクとグレー」の行定勲。
あらすじ:大学2年生の春。工藤泉のもとに高校の演劇部で顧問だった教師・葉山から突然の電話がかかってくる。それは、部員が足りない後輩のために、卒業公演に助っ人で参加しほしいというものだった。戸惑い動揺する泉。葉山は泉にとって自分を孤独から救い出してくれた恩人であり、特別な存在だった。そんな葉山との再会で、思い出として封印したはずの感情が再び呼び起こされていく泉。しかし葉山は、そんな泉の気持ちを受け止めることができないある事情を抱えていた。今度こそ、葉山先生とのことは終わりにしようと決意した泉は、同じ演劇部のOB黒川博文が連れてきて一緒に稽古に励んでいた大学生・小野怜二の真摯な告白を受け入れるのだったが…。

<感想>壊れるくらい、あなたが好きでした。好きになってはいけない人との、一生に一度の恋!_。映画的な手法で綴られた島本理生の恋愛小説「ナラタージュ」を行定勲監督が、フィルムに“還元”、この秋スクリーンに映し出す静謐にして重厚な恋模様を織りなしている。と言うか悲恋ものです。
主人公の葉山先生と思いを寄せた泉に扮したのは、松本潤と有村架純。忘れ得ぬ恋に生きた季節を、しばし振り返る物語。これは、葉山先生側は描かれていなくて、観る人に想像してもらったり、泉が葉山先生の心情をすくい取るという作りになっているようです。
ずっと葉山先生を想ってきた5年間を、約2か月間で表現しているのだが、有村架純がその想いの厚みや重みをどう演じているのかが見どころですね。冷静に考えると、葉山先生って困ったことにズルいほど優柔不断で、酷い人なんですよね。

どうしてかって、葉山先生は意志を伝えなかったり、相手の気持ちを中途半端に流したり、それでもなお、泉が彼を好きだと言うことが切実に分かるのに。回想シーン以外でも救いのある出来事や、泉が抱えていたかった思い出がもっとあったかもしれないのに、という。

つまりは葉山先生は、結婚をしていて、妻が精神的に疾患があり、それは葉山先生の母親と同居していて、妻が母親との間にギクシャクとした心のわだかまりがあり、それが爆発して家の納屋に火を付けてしまい、そして、母親のいる母屋にまで火をつけようとしたことで、刑事事件に発展して精神病院へ入ったこと。そのことを葉山先生は自分が悪いと、妻のことを理解していなかったことを悔やんでいるという。それに別居をしていて離婚はしていなかったのだ。

そのことを踏まえて、「私、先生の力になりたいんです」と、教え子の泉が葉山先生に夢中になり、演劇を誘われて尚のこと夢中になり、葉山先生が自分のことを好きだと勝手に解釈して、自分から愛を告白し、断られたのにも関わらず、心の中にくすぶっている。そんな時に、学生時代の坂口健太郎が現れ好きだと、付き合ってくれと告白される。

葉山先生のことを忘れようと、坂口健太郎と付き合い男女の関係になるも、いつも葉山先生のことが頭から離れず、夜遅くに先生から電話をもらい、動揺してまた好きになってしまう。いつも日記帳に挟んでいた葉山先生との2人の写真と、葉山先生宛の手紙。泉の回想形式で進行する恋の顛末が、感傷とも悔根とも異なるのもユニークであり、まるで使い捨てのような坂口くんが、ちよっと哀れに思ってしまう。

でもね、坂口健太郎にも悪いところがある。男として、泉が葉山先生のことが忘れられないことが分ると、土下座をして謝らせたり、趣味で作った靴をぬがせて裸足で歩かせるなんて、酷いことをする男なんですからね。泉も男運が悪いと言えば嘘になる。

この映画の中で、有村架純の後ろ姿が何度も映し出される。彼女の表情が見えないためか、おのずと観客は彼女の表情を想像してしまう。その不確かさが、二人の男の間で揺れ動く、彼女の不安な心が重なってゆくのであります。
そして、葉山先生との関係を打ち切るためにもと、彼女の方から先生に抱かれたいとお願いして、まさかの濡れ場を演じている有村架純の大人の女の演技。うかつにも、松潤の身体を強く抱きしめて、まるで松潤を吸い取ってしまうほど強く抱き合う二人に見惚れてしまったのだ。

印象的なシーンでは、ラストで、泉を葉山先生が見送る下りは、非常に映画的で美しい。彼女が電車の中で、決別を一人語るシーン。カメラは泉の顔をとらえて、表情の変化という決定的な瞬間を映し出すのです。泣いているような、その表情が映えるのは、それまでに感情の変化という決定的な瞬間を敢えて撮影してこなかった演出の賜物であることは言うまでもないでしょう。
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