「リメンバー・ミー」「トイ・ストーリー4」のピクサー・アニメーションによる長編作品。亡くなった父親にもう一度会いたいと願う兄弟が、魔法によって半分だけ復活した父親を完全によみがえらせるため奮闘する姿を描いた。監督は「モンスターズ・ユニバーシティ」を手がけたダン・スキャンロン。
あらすじ:かつては魔法に満ちていたが、科学技術の進歩にともない魔法が忘れ去られてしまった世界。家族思いで優しいが、なにをやってもうまくいかない少年イアンには、隠れた魔法の才能があった。そんなイアンの願いは、自分が生まれる前に亡くなってしまった父親に一目会うこと。16歳の誕生日に、亡き父が母に託した魔法の杖とともに、「父を24時間だけよみがえらせる魔法」を書かれた手紙を手にしたイアンは、早速その魔法を試すが失敗。父を半分だけの姿で復活させてしまう。イアンは好奇心旺盛な兄バーリーとともに、父を完全によみがえらせる魔法を探す旅に出るが……。
<感想>主役は“内気な弟イアン”と、“陽気な兄バーリー”… 父をたった1日だけ生き返らせるため冒険の旅にでる。16歳になった誕生日に母親からイアンにプレゼントがあったのだ。兄のバーリーは父親との思い出があるが、イアンには父親の記憶がなかったのだ。
イアンが父親からのプレゼントの杖で、父さんを生き返らせようと、魔法オタクの陽気な兄バーリーとともに呪文を唱えてみると、杖から青白い閃光が飛び出し、それはみるみる人の形になっていった。イアンには魔法の才能があったのだ。しかし、杖の先端にある“不死鳥の石”が粉々に砕け散り、魔法は失敗に終わってしまう。父は生き返らなかったのではなく、“体の半分だけが生き返る”という意味不明な状況に陥ってしまった。タイトルの”2分の1”には、半人前であるイアンの魔法で”半分だけしか復活しなかった父親”という意味が込められている。
魔法の効力は、わずか24時間。それまでに兄弟は、父親を“完全に蘇らせない”と永遠に会えなく成るのだ。兄のバーリーとともに、イアンは新たな不死鳥の石を求めて冒険の旅に出る。
幼少期に父親を亡くしたダン・スキャンロン監督の思い出がベースになっている本作。半分しか見えない父親への憧れと、その偉大な父親と中途半端な自分を比べては落ち込む少年の葛藤と成長、対照的な兄との絆といった家族愛に、涙腺を刺激されるはずですね。
「父さんとやりたいことリスト」と書かれたメモ帳を、大事そうに抱えながら――。設定は今回もユニークであり、舞台は、かつて魔法があふれていた世界。炎や雷などの魔法があふれていた世界だ。はるか昔、人々は魔法で火を灯したり、悪者を退治したり、冒険に繰り出したりしていた。だが、科学技術が発達すると、人々は魔法よりも、スマホなどを重要視するように成った。次第に誰もが魔法を使わなくなってしまった。
兄弟の冒険に待ち受けるのは、プールで自撮りをする人魚や野良犬のようなユニコーンなど。個性豊かなファンタジー世界の住人たち。世界が神秘的な魔法に満ち溢れて居たのは、遥か昔のこと。
科学が進歩するにつれ、小人や妖精たちは便利な世界に憧れ、魔法は殆ど消えていた。伝説の生き物だったドラゴンも、今ではペットとして飼われている。
つまり観客にとって馴染みぶかい風景の中に、ユニコーンがうろついるような独創性を表現しようと考えていたり、エルフやトロールたちがスケートボードで遊んでいたり、バスに乗っていたりする姿を想像するのは楽しいものだよね。
魔法の消えかけた日常を通して便利になりすぎる現代社会へ警鐘を鳴らしつつ、冒険心を爆発させる彼らがユーモアたっぷりに描かれているのが良かった。
イアンの魔法の見どころと言ってはなんだが、亡き父をよみがえらせようとする旅の途中で、イアンが魔法でガソリンタンクを大きくしようとするシーンである。慣れない魔法に集中しようとするが、隣にいるバーリーがお節介を焼いてしまい、結局イアンは魔法に失敗する。ガソリンタンクではなく、兄のバーリーを小さくしてしまったのだった。
そのガソリンスタンドでは、小さい妖精たちが暴れまわっていて、外には乗っているバイクがあり、イアンたちに因縁をつけて来る。イアンは大急ぎで小さくなった兄をポケットに入れて、車にガソリンを入れて慣れない運転で車を走らせる。バイクで追いかけて来る小さい妖精たち。それに、心配して子供たちの後を追いかける母親は、酒場のマンチュア(ドラゴンの)へと向かう。
イアンの運転する車に、パトカーが追いかけてきて質問をするのだ。兄は小さくなりポケットの中、イアンを助ける半人前の父親。するとイアンが兄と一緒に魔法で義理の父親ケンタロウスの警官に化けるのだ。難なくそこを乗り切って前へと進む。
すると崖があり、向こう岸には跳ね橋がある。イアンが魔法で向こう岸まで恐る恐る渡るのだが、腰には兄が持つロープが握られていて、最後近くで腰のロープがないのに気が付き宙に浮き落ちていくのを、必死で崖の淵を掴むイアン。やっと跳ね橋を向こう岸に渡して兄と車を通すのだった。ガソリンスタンドで買ったお菓子を魔法の杖で大きくして、ボートにして川を渡るのだ。
そこからは川を渡り岸につき、洞窟の中へと進み、まるで「インディジョーンズ」のような仕掛けがあったりしてハラハラ、ドキドキ、兄弟は下半身の父親を連れて前へと進む。洞窟を出るとそこは、現代の町が現れ、兄も元どうりに大きくなっていた。
旅の終わりに近づくと、弟のイアンに変化が見えてきて、旅の中で様々な危険に遭遇し経験をして、少しづつ自信を持ち始めて成長するイアンの姿に嬉しい思いが込み上げてくる。
兄が町の古い泉を撤去しているところへ行き、この泉に”不死鳥の石”がきっとあると確信する。日没まで数時間しかない。兄弟で仲良く魔法の杖で父親を蘇らせることができるのだろうか。
イアンは母親の力も加わって、大切な人との絆が一歩づつ踏み出す勇気をくれて、最後の夕日に見える父親と兄が抱き合っている姿を、岩の隙間から見つめるイアンについ涙が込み上げてくる。
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