パピとママ映画のblog

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ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦★★★★

2017年10月13日 | アクション映画ーハ行

第2次世界大戦の史実を基に、ナチス親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画“エンスラポイド作戦”を映画化した実録戦争サスペンス。ナチス占領下のチェコを舞台に、ハイドリヒ暗殺という過酷な任務に挑む2人の若者の悲壮な決意とその顛末を緊迫感あふれる筆致で描き出す。主演はキリアン・マーフィとジェイミー・ドーナン、共演にシャルロット・ル・ボン、トビー・ジョーンズ。監督は「フローズン・タイム」「メトロマニラ 世界で最も危険な街」のショーン・エリス。

<感想>ただの英雄譚ではない、歴史の理不尽に翻弄された人々の慟哭の物語。ナチスへのレジスタンスほど凄惨な闘いはなかっただろう。相手は暴力のプロであり、殺人だけではなく密告、拷問、報復とあらゆる冷酷な手を使ったのだから。
主人公のキリアン・マーフィとジェイミー・ドーナンを筆頭に役者陣が、チームプレイで体現するその痛みが無念でならない。暗殺者、戦争アクション、サスペンスとしても良くできているし、悲劇的なラブストーリー(ヤン・クビシュがレジスタンスの女性と恋愛をする)でもあるが、描き出されるのは大きな歴史の悲劇なのだ。
ハイドリヒはユダヤ人虐殺の責任者の一人であり、ヒトラーの片腕で「第三帝国で、もっとも危険な男」「プラハの死刑執行人」「金髪の野獣」と恐れられた人物。その虐殺者を暗殺する計画。この映画の中でも、レジスタンスの間で暗殺に反対の意見があったことを描いている。そこが興味深いですね。

暗殺はロンドンに映ったチェコ亡命政府とイギリス政府が決めたもので、ロンドンからチェコの若者たちが暗殺に送り込まれる。これにプラハのレジスタンスが反対をするわけ。
彼らは、ナチスが冷酷な暴力主義であることをいやというほど知っていた。これまで仲間を何人も殺されてきたから。支配者を暗殺したら、その後に、どんな過酷な報復が待っているか分からない。「たとえ暗殺に成功したとしても、ナチの報復でチェコという国が地球上からなくなってしまう」と。それほど凄まじい報復が展開されるからだ。

事実暗殺には成功するも、直ちにナチスは報復を始める。関係者を逮捕するだけではなく、事件とは関係のないリディスという小さな村を襲撃する。男は全員銃殺。女子供は、収容所送り。これは見せしめであります。

ナチスの残虐さを知っているプラハのレジスタンスが、怖れていたとおりになった。いわば現場の人間が、ロンドンにいる、現場を知らない人間に命令されたことで悲劇が起きるのだ。レジスタンスという英雄的行為には、いかに多くの犠牲者が伴うのか。この作品の中ではきちんと描いています。単純な英雄賛歌にはなっていない。

強く印象に残っているのは青酸カリ。ナチスに捕まると凄まじい拷問が待っている。拷問を受ければ耐え切れずに、仲間の名前を言ってしまうだろう。それを怖れて、逮捕されたらその場で青酸カリを飲んで、自殺すること。だからレジスタンスの闘志にとっては、青酸カリはいわば携帯品だったのだ。それに拳銃の弾を1発残しておくこと、最後に自殺をするために。実際に、若者たちを匿ったプラハの主婦たちは、ナチスに踏み込まれた時に、一瞬の隙をみて青酸カリを飲んで自殺をした。それが出来なかった彼女の息子、バイオリン弾きの少年は、逮捕され凄まじい拷問を受けることになる。

史実であるので、暗殺は結果的に成功、しかし、その先に待っていたのは、暗殺犯と彼らの協力者はもちろんのこと、チェコ全国民に対するナチス・ドイツの凄惨を極めた報復であった。「ハイドリヒを~」を観ていて、ハイドリヒの暗殺犯を捕えるために、何らかの関わりを持ったとされる人々が脅され、連行され、拷問され、殺されるのだ。
映画とはいえ、八方塞がりで逃げられない人々の恐怖の表情を観ているのは辛いものだ。

やがては「犯人を匿った」という理由で、村人が処刑され、連行され、村が一つ地図から消されてしまうのだ。これは、いわゆる共謀罪ってことで、理由などというものは、その時の気持ちの赴くまま、どんなふうにでも作れるわけだし。
殺されたくなかったら、「情報を持ってこい、悪いようにはしないから」「懸賞金1000万ドル」という高額賞金を懸けて、犯人を連れてこい。甘い言葉に乗せられて、密告者が出るのも当然だが、助かりたくて密告した人間の末路も哀れなもので、と言うことを、今回映画の後で初めて知った。
ナチス・ドイツは決して、懸賞金など支払うはずもなく、わが身を守るために同志を裏切ってしまう。騙されたと後で後悔しきりのチェコの人たち。人間が歴史から学んだものは、人間は決して歴史に学ばないということなのだ」と言う名言に背筋が凍り付く。

暗殺の瞬間のアクシデントと人々のリアクションのアナログさが、起きている惨状の凄まじさを引き立てる。自転車を使った逃走劇、弾痕からの硝煙といったカットを、緊迫感溢れるカット割りと編集で、生々しく見せる監督ショーン・エリスの手腕が見事である。
せっかく歴史という膨大な教科書があるのに、人は懲りずに愚行を繰り返す。同じような悲劇が再び起こらないと、楽観はできないことを。こういう同じ映画を何度も観るたびに、つくづく感じます。
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