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クライ・マッチョ★★・5

2023年03月12日 | アクション映画ーカ行

             

「許されざる者」「ミスティック・リバー」「アメリカン・スナイパー」など数々の名作を生み出してきたクリント・イーストウッドが、ここでは監督・製作・主演を務め、落ちぶれた元ロデオスターの男を演じている。その彼が、親の愛を知らない少年とともにメキシコを旅する中で「本当の強さ」の新たな価値観に目覚めていく姿を、描いたヒューマンドラマ。1975年に発刊されたN・リチャード・ナッシュによる小説を映画化した。

あらすじ:かつて数々の賞を獲得し、ロデオ界のスターとして一世を風靡したマイク・マイロだったが、落馬事故をきっかけに落ちぶれていき、家族も離散。いまは競走馬の種付けで細々とひとり、暮らしていた。そんなある日、マイクは元の雇い主からメキシコにいる彼の息子ラフォを誘拐して連れてくるよう依頼される。親の愛を知らない生意気な不良少年のラフォを連れて、メキシコからアメリカ国境を目指すことになったマイクだったが、その旅路には予想外の困難や出会いが待ち受けていた。

<感想>今もなお、最前線で精力的に活動を続けるクリント・イーストウッドは、映画界における文字通りの“生ける伝説”である。監督デビュー50周年を迎えた彼の、記念すべき40作目の監督作であり、主演も務める最新作「クライ・マッチョ」。作品のキャッチコピーは「感動はここから始まる」。多くの映画ファンにとって、今までの作品よりも今年最高の1本であり、もしかするとあなたの“人生の1本”を更新する作品となるかもしれませんね。

本作でイーストウッドが演じるのは、かつてはロデオ界のスターだったが、落馬事故をきっかけに落ちぶれて、年老いたカウボーイのマイク。かつての雇用主に「メキシコで元妻と暮らす10代の息子・ラフォを連れ戻してほしい」と懇願され、過去の恩義を返すべくこの難題を引き受ける。メキシコに赴き、闘鶏用のニワトリ“マッチョ”だけを抱えて、ストリートで生きてきた少年ラフォを、半ば誘拐のような形で連れ出した。警察や少年ラフォの母親が放った追手をくぐり抜け、マイクはアメリカに向かう。

親の愛を知らないため、当初は「誰も信じない」と心を閉ざしていたラフォ。しかしマイクは、老いや弱さも含めた自らの姿をさらけ出して、少年ラフォに生き方を示してくれる。マイクの持つ“本当の強さ”に憧れを抱き、少年ラフォも次第にマイクに心を許していく――。

年の差を超えて、時には旅先の街で出会う人々や荒くれの馬を介して、魂と魂で結びつく男たちの姿がまぶしく感じた。過去、イーストウッドは幾度となく“強い男”を演じてきたが、この作品で彼が体現する“本当の意味での強さ”は、生きづらさを抱えていたり、進むべき道を見失いがちな現代の観客の心に、ポッと希望の灯をともしてくれることだろう。

もはやイーストウッドは“映画の神様”であり、 監督・主演俳優としては、「荒野の用心棒」、「夕陽のガンマン」といったマカロニ・ウエスタンで人気を博し、「ダーティハリー」シリーズで世界中の映画ファンの心を鷲づかみにしたイーストウッド。さらに監督として「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」と、2度にわたってアカデミー作品賞・監督賞を受賞している。

1930年生まれの90代の人間がハリウッドの最前線で映画を作り、自ら主演する。それがどれほどすごいことか!・・・。 しかも、そのクオリティたるや、今も尚、ハリウッドの第一線級なのだ。さらに本作の撮影はコロナ禍のまっただ中。キャスト・スタッフの健康と安全を第一に考え、万全の感染防止対策が敷かれた中での撮影となったのだが、そんな状況をものともせず、最高品質の作品を作り上げた。

内容としては、落ちぶれた老人が元雇い主に頼まれて、その息子であるヤンチャ坊主を探し、メキシコに向かって連れ戻してくるというもの。ヤンチャ坊主の母親であるアバズレ女の追手や警察から逃れながら、老人とヤンチャ坊主との心の交流、そしてメキシコに住む貧しくとも幸せに暮らす人々たちとの交流を通して描く人生賛歌ともいうべきドラマの作品。

まあ、とりわけ大きな事件や衝撃的な展開があるわけでもなく、非常に淡々としたロードムービーですが、自然とスクリーンに見入ってしまうのは、イーストウッドの手腕に他ならないでしょう。御大もさすがにおじいちゃんになってしまいましたが、それでも眼力は失われずキリッとした顔立ち。ラストはメキシコで出会ったおばあちゃんと、楽しく幸せに暮らすという、老いても色恋はまだまだ現役なのだ。だからなのか、「若者には、まだまだ負けんぞ!」といったメッセージが伝わってきた気がしました。

この「クライ・マッチョ」で、イーストウッドの“いま”の姿をスクリーンで拝めることが奇跡と呼ぶにふさわしいこと、もはや彼を“映画の神様”と呼んでも差し支えないであろう。

本作がイーストウッドにとって、ただの通過点である一作ではなく、現時点での“集大成”でもあるのだと感じさせられる理由として、過去の代表作を彷彿とさせるシーンやモチーフがあちこちに散りばめられているという点がある。

イーストウッドが演じる主人公マイクと、少年の交流は「グラン・トリノ」で見られた構図であり、誘拐犯と少年の逃避行は「パーフェクト ワールド」(この時、イーストウッドは誘拐犯を昔から知る保安官に扮した)そのものである。マイクが警官に追われ、麻薬所持を疑われるシーンは「運び屋」を連想させるし、ちゃっかりマイクが「俺は“運び屋”じゃないんだ」と、こぼしたりもする。

ほか、「マディソン郡の橋」やその他の名作を彷彿させるシーンもある。イーストウッドのフィルモグラフィーをめぐるかのようなこの「クライ・マッチョ」は、彼に対する感謝の念すらわき上がってくる、2時間弱の至福の旅路なのだ。

ーWOWOWにて鑑賞ー

 

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