パピとママ映画のblog

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ウォルト・ディズニーの約束 ★★★★

2014年03月26日 | あ行の映画
エマ・トンプソンとトム・ハンクスという英米のオスカー俳優が共演を果たし、傑作ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』誕生秘話に迫る感動のヒューマンドラマ。ウォルト・ディズニーの映画製作の舞台裏を初めて描き、原作者と映画製作者の激しい攻防を情感豊かに映し出す。ポール・ジアマッティやコリン・ファレルら名優たちも豪華共演。頑固な作家の心の奥深くに秘められた、ある思いを浮き彫りにする展開に心打たれる。
<感想>制作から50年経った今も愛され続ける「メリー・ポピンズ」。この名作を巡る実話を描いた本作は、数々の作品を世に生み出したディズニー映画にとって、初のバックステージもの。創業者のウォルト・ディズニーが築き上げた“夢と魔法の王国”を徹底するディズニーが映画製作の裏側を描くだけでも驚きだが、ここで明かされるのは「メリー・ポピンズ」の制作秘話を描いている。もっと具体的に言うと、映画化の話を長年拒んできた原作者のパメラ・L・トラヴァースが、何故心変わりしてウォルト・ディズニーの要望を受け入れたのか?・・・という謎を解き明かしていくドラマである。

まず強烈なのが、原作者であるパメラ・L・トラヴァースのキャラクター。エマ・トンプソンが演じているが、役柄にぴったりハマっている。当時すでに映画王となっているウォルトの申し出をにべもなく断り、一流スタッフからの提案をことごとく却下。アニメーションは嫌、ミュージカルは嫌と拒否するばかりか、話し合いのすべてを録音させて脚本や音楽にも難癖をつけ、ヒステリックなほど相手に苛立ちをぶつけ、口を開けば嫌味ばかり。とにかく神経質で気難しい女性なのだ。そんなトラヴァースの頑なな心を解かそうと、ウォルトとスタッフは奮闘する。最後に、トラヴァースが難癖を付けている、当時のやり取りが録音されている貴重なテープも公開されます。

ここでは、二つの時間軸の物語が並行して語られる。片方は1961年、トラヴァースが映画「メリー・ポピンズ」の制作現場に立ち会うストーリー。もう片方は20世紀初頭の、彼女がオーストラリアで暮らしていた子供時代の回想ストーリー。彼女の父親には、コリン・ファレルが銀行員で物語が進むにつれ、どうやら「メリー・ポピンズ」に出て来るバンクス氏のモデルであることが分かってくる。彼女は父親が大好きで、酒好きのアル中だったが、夢想かの彼女には一番の理解者でもあった。母親はそんな夫に苛立ち、自殺未遂までする。
物語りの舞台であるバンクス家の父親が、ウォルトのように口髭を生やしていることにも拒絶反応を示すトラヴァース。
邦題のタイトルからは想像がつきにくいが、この映画の原題「Saving Mr.Banks」つまりバンクス氏を救うこと。もちろん、トラヴァースが記憶の中の父親を救うことは、彼女自身を救うことでもある。

それで、ウォルトは彼女と父親との関係にヒントがあると気づき、自身の幼き日の父親とのエピソード(新聞配達所を経営していた父親、兄と弟ウォルトが雪の降る寒い日に新聞配達をし、靴に穴が開いても新しい靴を買ってくれず、冷たい雪水がしみ込んで辛い想いをしたことなど)を彼女に話し、ある約束を交わす。この約束なしに、あの名作は誕生しなかったと思われます。
映画の登場人物としてウォルト・ディズニー本人が描かれたのは、これが初めてである。初めて描かれた彼がまったく美化されていないし、リアルでありのままの姿だったということが素晴らしいことだと思う。ウォルトを演じているのが名優のトム・ハンクス、彼が演じるウォルトは、温厚で無難な役どころ。文句のつけようがありません。
そして本作はまた、二つの世界の衝突についての物語でもある。イギリスの伝統的な様式と自由なアメリカン・ドリームの衝突であり、インテリな英国文学と大衆的なポップアートの衝突でもある。

この二つの世界の架け橋となるのが、リムジン運転手のラルフというキャラクター。ラルフは架空の人物で完全なるフィクションなのだけれど、彼の存在のおかげで、本作は単なる名作映画のメイキング物語を超えて、より人間的で温かみのあるものになったと思う。
そんなラルフを見事に演じたのがポール・ジアマッティと、後は映画のプレミア試写会の場面で、独りぼっちのトラヴァースをエスコートしてくれた着ぐるみのミッキーマウスに拍手を送りたい。このシーンは微笑ましかった。
原作と映画化された内容には必ずといって違いがあります。それでも、映画化するのは、観客に分かり安く楽しんでもらおうとする制作側の意図が読み取られ、たまには原作を読んでから映画を観てがっかりしたこともあります。
ですが、この映画のように原作に込めたトラヴァースの思いが明かされるころには、感動で胸がいっぱいになり、不思議なほど涙が止まらなくなるはずです。他にも舞台裏がたっぷりで、名曲誕生の瞬間に立ち会えるのに加え、ウォルト本人が初めて描いた映画という意味でも感慨深いですよね。
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