村上春樹の『騎士団長殺し』(全2巻)を読み終えました。
前作『1Q84』から7年ぶりの書き下ろし長編小説。読み応えありました。
たまたま本屋で見かけて手に取ったものの、その本はビニールでしっかりパッキングされていて、立ち読みすらできないようになっていました。何でも無料で手に入る時代、ともすれば本の内容さえすっかり無料公開されている時代に逆行するような徹底ぶり(笑)。
でもきっとそれは作家本人の意図なんでしょうね。
なのでここでは直接的な内容には触れずにおきます。全ては読んでからのお楽しみ。
熱心な村上ファンというわけでもない私ですが、最初に読んで虜になった『海辺のカフカ』以来、村上春樹の小説には多かれ少なかれ影響を受けています。特にそこに登場する音楽や文学、絵画、国、食べ物、お酒などの様々な具体的なモノが私を捕らえて離さなくします。
人間にはファンタジーが必要である。
って言ったのは誰だっけ?
どこまでも具体的であることとどこまでも幻想的(ファンタジック)であること。
この2つの不思議なミックスが村上小説の特徴のように思います。
どこまでもフィクションなのに、どこかドキュメンタリーのように感じさせる要素のある小説。
いつも村上さんの小説を読むとそういう気持ちが芽生えます。
人生って、特にそれが過酷な時ほどファンタジーが必要なんじゃないかな。
小説はあくまで小説という時点で現実逃避だし、現実逃避もできない息の詰まる日々は辛すぎます。ゆるやかに私たちを非現実の世界に誘いそして最後に現実世界に引き戻してくれる、そして本を閉じた後に生きる力と希望を与えてくれる、そういう力のある小説が私は好きです。
世の中にはそれこそ何億冊、何兆冊もの本が出版され、その中で時代や世代を超えて残っていく本はそれほど多くないと思われる中、村上春樹の本はこれからも世界中でいろんな国の言葉に翻訳されて読み継がれていくのだろうと感じます。そうした本はおそらくそれほど多くなく、それだけ村上さんの言葉の持つ力を特別なものだと思えるし、それはとりもなおさず村上さんが言葉を大切なものとして扱ってるからなのでしょうね。
私も自分から生まれ出る言葉や音楽をもっともっと大切にかつ慎重に扱いたいと思いました。
読んでる間中もそして読み終えた後、どこかへトリップしてきたように思える作品。
余談ですが『海辺のカフカ』を読んでから無性にレディオ・ヘッドが好きになったように、この小説の影響でリヒァルト・シュトラウスの「薔薇の騎士」も少なからず聴きたくなるかも、と思います。
兎にも角にも素敵な作品です。
ご一読をお勧めします。
表紙画像からamazonサイトに飛びます。
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