ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

憂国 - 6 ( 男系維持と皇位継承者への不安 )

2016-08-29 22:10:23 | 徒然の記

 平成21年12月発行の、「文芸春秋」の対談記事で、保坂正康氏が、次のように述べている。

 「愛子様がお生まれになった平成13年当時は、皇室にも、傍系の宮家にも、女性しかいないという、状況でした。」

 「このままでは皇統が途絶えてしまう、という危機感から出発したのが、皇室典範改定問題でした。」

 「時の小泉内閣が有識者会議を設置し、平成17年11月に報告書を提出して、結論は、皇位継承は、天皇の直系子孫で男女を問わない、第一子優先というもの。」

 「つまり愛子様を、皇太子様に次ぐ、皇位継承第二位にし、事実上女系天皇、女性天皇を容認する皇室典範改正法案を、国会に提出する段取りになったわけです。」

 これを受け、櫻井よしこ氏が語っている。

 「ところが、法案が提出され、成立するはずだった国会の会期中に、秋篠宮紀子様の、第三子ご懐妊の知らせが入るわけです。」

 「有識者会議の報告は、伝統とは必ずしも不変のものでなく、選択の積み重ねにより、新たな伝統が生まれるなどと、」

 「 まるで伝統が、流行のごとく変わるものだと言わんばかりに、語っていましたが、紀子様ご懐妊が、見事にこの乱暴な結論に歯止めをかけて下さった。」

 いまこうして、櫻井氏の説明を読んでいると、昨日のブログで取り上げたケネス・ルオフ氏の論調と、有識者会議の報告書が、酷似していることに驚かされる。

 会議のメンバーの誰かが、報告書の内容を氏に教えたのでないかと邪推したくなる。

 それとも学者であるケネス氏は、「文芸春秋」を何冊も買い求め米国で保管し、丹念に読んでいたのだろうか。

 次は、朝日新聞の編集委員、岩井氏の意見だ。

 意外にも慎重な態度なので、朝日新聞だからなんでも左とそんな決めつけは良くないのかと、つい思わされた。

 「僕は皇室典範改正には慎重論でして、これまで脈々と続いてきたものを、そうやすやすと変えることは、僭越ではないかという考えなんです。」

 「小泉さんの時に、300議席あるから通してしまえと、一瀉千里でなぜやらねばならないのかという意見がありましたが、拙速だと思わざるを得ません。」

 「皇室典範改正は、憲法改正以上に厄介な問題なんです。」

 皇室研究家の高橋氏以外は、女性天皇に賛成しておらず、孤立無援の高橋氏が反論する。

 「じゃあ、男系を維持するためには、どうしたらいいのか。」

 「先の先を考えた時、皇位継承の不安は拭えない。そのあたり、男系を主張される方はどう考えているのか。」

 櫻井よし子氏の意見だ。

 「男系の旧皇族を、皇室に復帰させるという方法が一つあるでしょう。例えば、廃絶になる宮家を旧皇族に継がせる。」

 高橋氏の反論だ。

 「旧皇族は、六十二年前の皇籍離脱によって、一般人として生活をしてきた人たちで、もはや、皇族というふうに、一般国民は認識できないでしよう。」

 岩井氏の反論。

 「悠仁様誕生で、復帰した旧皇族方がそのまま皇位継承する可能性は低いが、復帰した旧皇族の子や孫なら、生まれながらに皇室内の環境で育つわけですし、国民も、自然と認知できるということではないでしょうか。」

 こうして彼らの意見が掲載されているが、女性天皇とは何であるのか。どうして皇室の歴史を崩壊させることになるのか、誰も語らない。

 国民に皇位継承の問題を広く知らせるべきと言いながら、肝心なところをぼかしているのだから話にならない。

 三年後の平成24年の1月に、産経新聞記者の大島真生氏が、「文芸春秋」に、長文の寄稿をしている。

 民主党政権下で問題が放置されていることに対し、警鐘を鳴らしているのだが、記事のタイトルが刺激的だ。

 「民主党政権下で、平成が終わる日」である。

 実をいうと当時の私は、この見出しを見て、「文芸春秋」をコンビニで買った。記事をそのまま紹介する。

 「民主党が衆院選で歴史的大勝を収めた平成21年9月、宮内庁の羽毛田長官は、定例会見で、皇室にまだ問題があることを新内閣に伝え、対処していただく必要があると、述べていたのである。」

 「だが、皇室・皇統に無定見な民主党政権は、中国の習近平副主席との面会を、陛下に強要した。」

 「面会を批判されたことに対し、当時の小沢幹事長が、陛下ご自身に聞いたら、会いましょうとおっしゃるなどと勝手に忖度した上で、不敬極まりない暴言を吐くなどしている。」

 産経新聞の記者らしく、大島氏の意見は反日の民主党には厳しい。

 「沖縄・普天間問題や、東日本大震災からの復興問題だけでなく、国の骨幹をなす皇統の問題にも、民主党政権は、まったく対処する能力がないことがすでに顕在化している。」

 「皇室典範を真剣に論じようという雰囲気が、自民党にもない。」

 「改めて、愛子様が皇位を継承できるようにする選択肢も、議題に乗せざるを得なくなる可能性があり、悠仁様の皇位継承に異議を唱えることになりかねないからだ。」

 無知な庶民である私は、そんなややこしい話なのかと首をかしげた。国の根幹の問題だから、そこまでの配慮がいるのだろうと思うだけだった。

 「日本では、過去8人の女性皇族が天皇になっている。」

 「同じ女帝が、一度皇位を退いた後、事情によって再び皇位に就いたケースが、」「二人あったため、女性天皇は 「8人10代 」 という言い方をする。」

 「推古天皇など8人10代は、男系の女子が、ピンチヒッター的に皇位に就いたケースであり、女性皇族と皇族以外の配偶者との間に出来た子供が、皇位を継承した例が過去にないことから、皇位継承権は男系に限られてきたと言えるのである。」

 大島氏は、偶然に男系がつながったような、言い方をしているが、これこそが、歴代皇室とご先祖さまが、懸命に守ってきた「男系の維持」の基本なのだ。

 少し乱暴でも、私のような皇室を何も知らない庶民に分かりやすく言えば、

 「女性天皇になる女性宮家は、原則として一生独身でなくてならない。」

 「もしものこと、皇族以外の男性と結婚し、生まれた子が男子であっても、そのお子は天皇になれない。」

 ということである。

 彼らが曖昧にしか語れないのは、現実におられる愛子様に対し、「生涯、独身を通して下さい。」とか、「皇族以外の方と結婚されたら、お子様は、たとえ男子でも天皇にはなれません。」と言えないため、遠慮をしているからに違いない。

 だが、肝心のことを説明せずして、何が国民の理解なのかと私は言いたい。そして大島氏より、新たな提案がおこなわれる。

 「皇統の危機が続いている以上、男子優先は維持した上で、一代限りの女性天皇も視野に入れた、一代限りの女性宮家の容認は少なくとも議題に載せるべきではなかろうか。」

 「こうすれば、愛子様も皇位継承者となる。眞子様や佳子様にも、皇位継承権が与えられることになる。」

 私の理解が間違っていないとすれば、ここに隠されている言葉は、皇位継承権を得た、宮家の方々は、一生独身でなくてはなりませんよ、ということになる。愛子様については分からないが、少なくとも皇族の一員でおられる佳子様と眞子様は、とっくにご存知だろうし、覚悟も持たれているはずだ。

 しかし、ここに単純な疑問がある。

 雑誌の対談者たちは、2665年間続き、125代の天皇を抱される皇室を、なんで自分たちの基準で語ろうとするのか。

 国民の敬愛の中心であり続けるため、皇室には特有の伝統と文化があり、不自由と堅苦しさと、時には苦痛も伴う。

 皇室には、私たち庶民に当たり前としている「男女平等」がなく、沢山の例外がある。ご自宅を一歩出れば、護衛官たちが随行し、安全を守ってくれるが、食事の時も、誰かとの面談の時も、あるいは遠慮してほしいトイレの時でも、護衛は任を解かない。

 しかも皇室の方々には、私たち庶民のようになんでも喋る自由がない。

 気ままに、おしゃべりや軽口を叩いていたら、マスコミに取り上げられ、思ってもしない騒ぎを起こしかねない。相撲で好きな力士は誰かと、記者に聞かれても、「差し障りがありますから、言えません。」と答えられた昭和天皇の、生真面目なお姿が、今でも思い出される。

 江戸時代の殿様は、ぬるい湯加減の風呂に入っても、「お湯がぬるい。もっと熱くしろ。」とは言わなかった。

 殿様が苦情を口にすると、聞いた風呂焚きの者は責任を感じて死を選んでしまう。だから殿様は誰に言うともなく、「今宵の風呂は、もう少し熱ければ良いのだがなあ、」と、独り言を言い、伝え聞いた風呂番が、急いで風呂に火を入れたという。

 時代小説の話だったと思うが、昔の日本では、殿様でさえ、配下の者には気を使っていた。まして皇族の方々は、国民に及ぼす影響の大きさを常に思われ、考えられ、注意深く、だからこそ深遠なお言葉になる。

 庶民は詳しいことは知らなくても、ご苦労なお立場であることを感じ取り、天皇陛下を崇めてきた。

 政権を武士に奪われて以来、恐らくは鎌倉時代以降、皇室の存在は武力や財による君臨でなく、神話以来の稀有な皇統 ( 血筋 ) と、国への祈りを捧げられる天皇の、権威になられた思っている。

 諸外国に理解不可能なのは、武力によらない天皇の存続と、歴史と伝統の守られた天皇の権威だろう。統治者同士の、殺戮と死闘しか知らない他国は、武力のない非力な天皇が、国民の尊崇を失わない理由が理解できないはずだ。

 ましてマルクスの影響を受けた、共産主義者に、分かるはずのない皇室の存在だ。だから私は敗戦後に台頭した左翼政党を嫌悪し、反日・左翼の人々を嫌悪する。軽率な結論を出した有識者会議のメンバーと、ケネス・ルオフ氏を軽蔑する。

 それなのに美智子様は、「A級戦犯」とか、「憲法を護るべき」とか、「慰安婦に詫びたい」とか、「九条を守る」とか、国内で波風を立てる言葉をなんと沢山口にされていることか。

 江戸時代の殿様にも劣る軽々しい発言をされる美智子様を、嫌悪せずにおれない理由がここにある。

 とうとう今晩も、述べたかった問題まで、行き着けなかった。心を奮い立たせ、明日もう一回だけブログを続けよう。それで、本当に終わりだ。

  先日、「ねこ庭」で作った句で、本日の最後を飾るとしよう。自分では名句と思っているが、他人に言わせれば、盗作でしかないと笑われるのだろうが・・・・。

   鳴く蝉や 

    昭和は遠くなりにけり

コメント (2)
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