ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

日本人はなぜ謝り続けるのか

2012-04-05 22:15:00 | 徒然の記

 中尾知代氏の著作を、図書館から借りて来た。

 中国や韓国・北朝鮮との根深い対立を解くヒントがないかと思ったのだが、結果は失望だった。唯一の収穫は、日本を憎みつつ、謝罪と補償を求めている国が、中国や韓国・北朝鮮だけでなかったと知ったことである。

 日本軍の捕虜となり、極悪非道な処遇を受けたイギリス人たちの怒りと憎しみを、彼女がドキュメントとしてまとめたものだ。英国訪問時に、村山首相と橋本首相が、合わせて二度謝ったけれど、元捕虜たちが、今もって謝られたと思っていないのは何故か、という解説書である。

 ドイツのブラント首相が、膝まづいて許しを請うた時、イギリス人が即座にその謝罪を受け入れたのは、相手に謝るより、まず自分の過ちを神に謝る文化を共有し、同じキリスト教を信じて来た、2000年の歴史があると説明されるにいたっては、眉をひそめたくなるものがあった。

 日本政府とび日本人に求める氏の結論は、元捕虜たちが生きている間に、明確な謝罪と補償をすべきだというところにある。確かに日本の謝罪は曖昧で、故意に補償問題を避けている節があるが、イギリスでそれを明確にすれば、中国、韓国・朝鮮と次々問題が大きくなるという危惧が、そうさせるのだと理解した。

 死をもって責任を取る者を、潔い人物として、日本人は一定の評価をする。「死人を鞭打たず」「死人の墓を暴かず」というのは、日本人の美徳だと私は思うが、中尾氏は、そんなものはイギリス人には通じないと、切り捨てる。

 私は氏の人間性に疑問を感じると共に、不快感さえ覚えた。自分では偏狭な右翼でないと思っている私は、氏の著書を読んでいると、本当に彼女は日本人なのかと問いかけたくなった。

 イギリス人の捕虜と、和解したいという熱意は認めるが、それほどまで自らを貶めて、彼らと和解する必要があるのだろうかと、疑問が湧いてきた。イギリス人が、日本人の精神文化を無視するというのなら、私たちも、同じ立場で臨むということになるのではないのか。

 ソ連はシベリアの強制労働に対し、ひと言でも日本に謝ったか。原爆を投下し、広島・長崎の市民をむごたらしく殺したアメリカは、一度でも私たちに謝ったのか。

 終戦間際に、日本の都市に無差別爆撃をし、一般市民を殺戮したアメリカは謝罪したかと、怒りが込み上げてくるが、中尾氏によると、それはそれで別問題だからイギリスのことを片付けた後に、アメリカやソ連に抗議すれば良いと、他人ごとのように語る。

 要するに彼女は、日本人としての自分を忘れ、日本人の欠点や悪口を、ひたすら述べたがる人物でしかなかった。こんな無責任な人物の著作を、NHK出版が出しているというのだから、二重の驚きだった。

 それともNHK出版というのは、NHKの名前を騙る別団体なのだろうか。幾つになっても世の中には、私の知らないものが存在するということであり、一生勉強で、とても老け込んでなどおれないと、そんなことが中尾氏の著作の目的ではなかったと思うが、私はそっちの方を、教えられた。
 

コメント
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