桜がどんどん散ってきて物悲しいですね。
こんにちは。早くも来年の春が待ち遠しいI権禰宜です。
さて。本日は「このことわざを教えて~」・・・とのリクエストがありましたので、それについてご紹介しましょう。
『刎頚の交わり』
・・・をリクエストされたのですが、この故事を知るにはもう一つの故事を知っておいたほうがよいので、今回はこれにしましょう。
『完璧』
昔々・・・戦国時代の趙の国に藺相如(りんしょうじょ 生没年不詳)という人物がおりました。
藺相如は趙の王(恵文王)に仕える宦官の食客となっていましたが、ある日西の超大国・秦から趙の王城に使者がやってきました。
その使者が言うには・・・
秦の使者:「我が大王(昭王)が申すには、趙の陛下秘蔵の宝玉『和氏の璧』と、秦にある15城(小さい国に相当する程の領地)を交換したいと言う事です」
恵文王:「むむむ。なにぶん急なことなので臣下の者と相談したいので時間をいただけまいか」
こうして趙の宮廷では、秦の申し出を受けるか否かの議論が交わされます。
家臣A:「『和氏の璧』は天下の名宝とはいえ15城もの領地との交換なら悪くないのではないか?」
家臣B:「いやいや秦は強国。おとなしく15城を交換するとは限らないぞ」
家臣C:「まさか。秦と趙はもとは同族。そこまでの非礼はすまい」
家臣D:「今の秦王は油断のならない人物と聞く。そう簡単に事が運ぶかどうか・・・」
このように長時間議論が重ねられましたが、なかなか結論がでません。
そんな中、藺相如の主人である宦官が王に進言します。
宦官:「陛下。私めの食客に藺相如と申す者がおります。彼は知勇が備わった人物でありますので、ぜひかの者にお任せください」
恵文王:「おう。そのような者がおったのか。ではその者に任せてみよう」
こうして藺相如は趙の使者として天下の名宝「和氏の璧」を携え秦の都・咸陽に向かったのでした。
咸陽で秦の王・昭王と謁見した藺相如は「和氏の璧」を王に献上します。
藺相如:「秦王様。これが我が趙国の秘宝『和氏の璧』でございます」
昭王:「ほほう!これが天下に名高い『和氏の璧』であるか!なるほど見事なものであるの。ほれ、そなた達も見てみよ。これが趙が秦に恐れをなして献上してきた『和氏の璧』じゃ!」
王は側近や愛妾に「和氏の璧」を見せぶらかせるばかりで、15の城を渡すという話を一向にしてきません。
藺相如:「(なるほど・・・。これは15城を趙に渡すつもりは無いということか・・・)」
そこで藺相如は昭王の前に進み出てこう言います。
藺相如:「秦王様。実はこの『和氏の璧』には小さな瑕があります」
昭王:「む?瑕とな。どこにあるのじゃ?」
・・・と昭王が璧を藺相如に渡すないなや、藺相如は宮殿の柱の前に立ってこう叫びます。
藺相如:「この『和氏の璧』は趙の国宝!ゆえに趙の重臣達の中には秦を疑う意見も多かったのだが、我が趙王は秦を信じて潔斎をされてまでこの璧を私に託したのだ!!」
藺相如:「しかし今の秦王の振る舞いを見ると、側近や愛妾に見せるばかりで15の城の話を出す気配も無い!これはあまりにも非礼ではないか!この上はこの璧を叩き割り、私もこの柱に頭をぶつけて死んでくれよう!!」
あまりの藺相如の形相に驚いた昭王は、大急ぎで地図を持ってこさせ具体的な15城の領地を示しました。しかし藺相如はそれが本気では無いということを感じると、昭王に恵文王と同じく潔斎を求め、昭王はこれを渋々了承します。
そして数日後、潔斎が明けた昭王に対して藺相如はこう言いました。
藺相如:「恐れながら秦は油断のならない国。代々の王が約束を守ったという話は聞きません。このため璧は既に趙へ持ち帰らせました。というわけで璧と15城の話は無かった事にしていただきたく存じます」
昭王:「こやつ!!!余を騙したということか!!」
藺相如:「・・・無礼は重々承知しております。おとなしくお裁きをお受けいたします」
昭王:「・・・・ふむ。(堂々とした態度。殺すには惜しい者だな)」
昭王:「藺相如!よくぞ『和氏の璧』を守り通した!趙への帰国を許す!」
こうして藺相如は趙へ帰国することが出来、かつ璧を完うすることが出来たのでした。
知恵と胆力で強国と渡り合った藺相如は大したものですね。
ただ私は昭王の度量の大きさも大したものだと思います。
さぁ!次回(いつになるかわかりませんが)は刎頚の交わりについてお話しましょう!
I権禰宜