水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

日の名残り(124)

2020-05-27 19:54:55 | 日の名残り
The fact is, of course, I said after a while, I gave my best to Lord Darlington. I gave him the very best I had to give, and now - well - I find I do not have a great deal more left to give.

私にはダーリントン卿がすべてでございました。もてる力をふりしぼって卿にお仕えして、そして、いまはーーー私にはふりしぼろうにも、もう何も残っておりません。

スティーブンス氏は、はなしかけてきた男が屋敷勤めをしていた、と聞いて、自分の身分をあかし、大邸宅の執事がなんたるかを、かいつまんではなした。上はそのしめくくりの言葉。


話は変わるが、緊急事態期間がとりあえず終了した。「出歩いてもよい」とはいうものの、以前のような具合いはいくわけがない。おっかなびっくり、ジワジワ人出が増すようになるのか。世の中、ガラガラポンと、大きく様変わりするのでしょうなあ~。

日の名残り(123)

2020-05-21 09:59:32 | 日の名残り
Oh, in those days, I was just a footman. I would not have had the know-how to be a butler in those days. You would be surprised what it involved when you had those big houses you had then.

戦前は、わし自身がただの下僕だったよ。あの当時のわしには、執事が務まるだけの専門知識はなかったな。戦前の大きなお屋敷で執事を務めるというのは、あんた、じつにたいへんなことでね、どれだけの仕事をこなさなければならないかを知れば、きっと誰でも驚くよ。

旅の最後に訪れたウェイマスの海辺で、地元の人に話しかけられた。その人が経歴を話すうち、執事をしていたことがわかり、「戦前はどうでしたか?」と聞いた。その答えが上。

スティーブンス氏は、そこで身分を明かすのだが、さぞや自尊心がくすぐられたことでしょう。


コロナ騒ぎで、いろいろな人の、いろいろな思惑が、うかがい知ることができ、興味深い。おそらく、数百年に一度おころかおこらないかの、大変な転機なのでしょう。ここからのし上がる人もいるでしょうし、どん底に落ちる人もでるのでしょうね~。

日の名残り(122)

2020-05-14 09:51:18 | 日の名残り
Many say retirement is the best part of life for a married coupe. You must do all you can to make these years happy ones for yourself and your husband.

夫婦にとって、引退後の生活こそ人生の華だといいます。あなたもご自分とご主人のために、それを楽しい年月にするよう努力せねばありません。

スティーブンス氏の、ミスケントンとの別れ際に言った、最後の言葉。

今のコロナ騒ぎを、今年の正月に予想した人はいるだろうか。定年まで、無事に過ごせたことを、今ほど幸せに感じることはない。そして、とりあえず、生活できる環境ににいることの幸せを今ほど感じていることはなかろう。
たぶん、この騒動で、世界は激変するでしょう。それを機に、のし上がる人もいるでしょうが、どん底に突き落とされる人も少なくないことでしょう。
イッチョウアガリ、の我が身としては、ぼーっと眺めているばかりです。

日の名残り(121)

2020-05-07 19:54:37 | 日の名残り
Only as the bus pulled up did I glance at Miss Kenton and perceived that her eyes had filled with tears.

バスが止まる瞬間まで、私はミスケントンのほうを見ることができませんでした。最後に視線を合わせたとき、ミスケントンの目に涙があふれているのが見えました。

ミスケントンが心の奥底を吐露したにもかかわらず、スティーブンス氏も胸の痛みを感じているにもかかわらず、氏はなお表面的な言葉でミスケントンの現生活を評価してしまった。
そして、いよいよ別れの時。ミスケントンがバスに乗る寸前の二人の様子が上。

直訳とは、全く異なる意訳。さすがプロの翻訳家、と思わせる見事な訳だ。