水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

日の名残り(45)

2018-11-29 11:23:16 | 日の名残り
'Naturally, one disapproved of the dismissals. One would have thought that quite self-evident.'
She did not say anything, and as I was leaving I glanced back toward her.

あのような解雇に賛成できないのは当然です。 それは誰にも自明のことだと思っていました。
ミスケントンは何も言いませんでした。私は立ち去りながら、振り返って彼女を見たのですが~~~~。

彼女は外を見つめたまま、何も言いませんでした。


ミスケントンの、このときの気持ちは、
・ スティブンス氏の本心を聞いて、ほっとした
それとも
・ なにをいまさら、そんなことを言っているの?バカみたい
なのか

まあ、後者でしょうね~。




日の名残り(44)

2018-11-26 14:21:03 | 日の名残り
You knew how upset I was when my girls were dismissed. you realize how much it would have helped me? Why Mr. Stevens, why, why, why do you always have to pretend?

二人の女中が解雇されたときの私の気持ちを、あなたはご存知だったはずですわ、ミスタースティーブンス。言ってくだされば私がどれほど救われたか、あなたはおわかりになりませんでしたの? なぜ、なぜですの、ミスタースティーブンス? なぜ、あなたはいつもそんなに取り澄ませていなければならないのですか?



ぜ空気が読めねば務まらないであろう執事、それも名門家につかえる執事が、最も信頼を寄せているはずの女中頭から、「あなた、空気読めない人ですね」と言われてしまった。

このあとどうなるか?
次回以後を楽しみに!

それにしても、翻訳がすばらしい。さすが土屋政雄だ。

日の名残り(43)

2018-11-22 11:19:01 | 日の名残り
that is quite incorrect and unfair. The whole matter caused me great concern, great concern indeed. It is hardly the sort of thing I like to see happen in this house.

それは正しくありませんし、私に対して公平な見方とも言えません。 あの件は、私にとってたいへん気の重いことでした。 心に実に重くのしかかる出来事でした。 このお屋敷の中では絶対に起こってほしくないたぐいのことでしたからね。


ユダヤ人召使解雇について、執事のスティーブンス氏が、自分の本意を、女中頭のミスケントンに開示したところ。
あまりにも淡々と(表面的にではあろうが~)解雇手続きの実施してしまったために、ミスケントンは誤解をしてしまった。


翻訳者のレベルの高さを感じさせる一節である。見事だと思う。

日の名残り(42)

2018-11-15 11:32:22 | 日の名残り
As I recall, you thought it was only right and proper that Ruth and Sarah be sent packing. you were positively cheerful about it.

あなたはなんの疑問もお持ちではないのだと思っていました。ルースとセーラを追い出すのが正しいことだと。 それを楽しんでいるふうにさえ見えましたわ。


ユダヤ人の召使を解雇する際、女中頭の、ミスケントンは強硬に反対し、自分もやめる、とまで言った。しかし、彼女はやめなかった。ダーリントン卿が、解雇することの間違いに気づいたのち、スティブンス氏がミスケントンに、やめなかったことについて言及して始まった会話の一部。

スティーブンス氏が、完璧な執事であろうとするために、なにごとにも冷静に、時には無機質ともおぼえる行動をとることが、周囲の人々とのあいだに種々の誤解を生む原因となっている、ように思える。


日の名残り(41)

2018-11-07 11:29:51 | 日の名残り
I suppose there's no way of tracing them now, is there? It was wrong what happened and one would like to recompense them somehow.

あの二人が今どこにいるか、わかるまいな? あれは間違っていた。できるものなら二人に償いをしたいと思う。


二人のユダヤ人召使を解雇してから一年以上経過したころ、ダーリントン卿がスティーブンス氏に言った言葉。

イタリアのムッソリーニが組織した黒シャツ隊は、またたくまにヨーロッパ中に広まり、ドイツのナチ・SSやイギリスやの「blackshirts」と呼ばれる極右政党・の組織化を生んだ。
ダーリントン卿は、当初黒シャツ隊の行動に好意を持ったのだが、その醜い実態に気づき、解雇を後悔するようになった。


アメリカの中間選挙の結果がどうなるか、テレビはけたたましく報じている。
そのことも大事であろう、しかし、世界全体の右傾化傾向は、第二次大戦前の状況を思い起こさせ、不気味だ。
私の国の政治リーダー達が、今度こそ賢明な道を選ぶに違いない、と信じているのだが~~~~~。
歴史は繰り返される!

日の名残り(40)

2018-11-01 11:21:17 | 日の名残り
Does it not occur to you, Mr. Stevens, that to dismiss Ruth and Sarah on these grounds would be simply - wrong? I will not stand for such things. I will not work in a house in which such things can occur.

でも、ミスター スティーブンス、あなたはまったくお考えになったことがありませんの? そんな理由でルースとセーラを解雇するのは~~~そんなことは間違っているとは思いませんの?私は我慢できません。 そんなことがまかり通るお屋敷には、私もいたくはございません。


ダーリントン卿から、ユダヤ人を解雇すると宣言され、それを女中頭のミス ケントンに言ったところ、猛烈な反発にみまわれた。

雇い主の指示を忠実に守るか、守るにしても、その正当性について自らの判断を重視させたうえでか、の違いが如実に現れたところ。

しかもそれが、ユダヤ人差別という、西欧諸国内における偏見感の根底を構成する問題で考えさせようとしたくだりだ。

だいぶ前、BS3で、BBC制作の刑事フォイルという番組をやっていたが、そのテレビドラマもユダヤ人差別問題を、練りこんでいて、興味深くみていた。

我々日本人には、なかなか理解しづらいのだが、国際化を進める上では、しっかり把握する必要がある問題だと思う。