水車ボランティア(+山家鳥虫歌)

ボランティア解説員としての見聞から始めた、ボケ防止メモ。12年目。新たに「山家鳥虫歌(近世諸国民謡集)」を加える。
 

夜想曲集(1)

2020-06-25 10:03:53 | 日の名残り
The morning I spotted Tony Gardner sitting among the tourists, spring was just arriving here in Venice.
ある朝、観光客に混じってすわっているトニー・ガードナーを見た。ベナチアはちょうど春に変わろうとしていて、

カズオイシグロ著、夜想曲集第一話、老歌手、の書き出し。
副題として、音楽と夕暮れをめぐる五つの物語(Five stories of music and nightfall)、とある。
第一話、老歌手、の原題は、'crooner'、とある。辞書によると、意味は「(おどけて)(昔のうたを)感傷的に歌う人(歌手)」だ。

流しのバンドギタリストが主人公で、大歌手トニー・ガードナーと偶然、近しく話ができるところから、話が始まる。

例によって、訳は、ハヤカワ文庫版(訳者土屋政雄)とした。

結構期待している。カズオイシグロは、やはり非凡な小説家だ、とおもうからだ。
お付き合いいただければ幸い。


日の名残り(127)

2020-06-18 09:57:41 | 日の名残り
I will begin practicing with renewed effort. I should hope, then, that by the time of my employer's return, I shall be in a position to pleasantly surprise him.

まだ多少の練習時間がございます。お帰りになったファラデー様を、私は立派なジョークでびっくりさせてさしあげることができるやもしれません。

この小説のしめくくりの文章。
ダーリントンホールの主が変わって、執事・スティブンス氏は気持ちを切り替えることがうまくできなかった。しかし今回の小旅行は、自らのきしこのかたを思い起こす貴重な時間となったようだ。
ジョークの好きな、新しい、米国人の主人についていけないような感じもあったのだが、そのジョークを練習し、気に入られるようになりたい、と気持ちを新たにできたようだ。スティーブンス氏の、新しい執事生活がこれからはじまる。

読み切るのに、思った以上の時間を要した。
次回から、同じ作者の「夜想曲集」(Nocturnes, Five stories of music and nightfall)を読もうと思う。五つの短編連作らしい。




日の名残り(126)

2020-06-11 09:51:27 | 日の名残り
What can we ever gain in forever looking back and blaming ourselves if our lives have not turned out quite as we might have wished?

人生が思い通りにいかなかったからと言って、後ろばかり向き、自分を責めてみても、それは詮無いことです。


スティーブンス氏にとって、この旅行は、はからずも過去を振り返ることになってしまったが、結論は、こういうことでしょう。


自粛生活が続くと、やはりどうしても過去を振り返る機会が多くなる。あのときこうすれば、あれはああすれば、と後悔するものばかりだ。
もっと前向きに、毎日をすごさねばならぬ。


日の名残り(125)

2020-06-05 08:46:04 | 日の名残り
You have got to enjoy yourself. The evening is the best part of the day. You have done your day's work. Now you can put your feet up and enjoy it. That's how I look at it. Ask anybody, they'll all tell you. The evening the best part of the day.

人生楽しまなくちゃ。夕方が一日で一番いい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方がいちばんいい時間だって言うよ。

たまたま出会った男とはなしているうちに、スティーブンス氏が過去の経験を思い出し、感傷にひたってしまった。それを見て、その男が言った言葉。


人生の夕方のまっただなかにいる今、この言葉は重みがある。