電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

オーマンディのCBS録音で、ヘンデルの「メサイア」(ハイライト)を聴く

2010年11月08日 06時03分35秒 | -オペラ・声楽
若い頃にLPを入手し損なっていた録音がCDになっていると、前後を顧みずに衝動買いしていた時期がありました。とくに、輸入盤が安価に並んでいたりすると、添付の解説書が英文であることも忘れ、レジに並んでしまいました(^o^;)>
そんなふうにして購入したものの一つが、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団他による、ヘンデルのオラトリオ「メサイア」です。1960年代末~70年頃には、CBS-SONY から SONW-20067~68 という型番の二枚組で再発売されておりました。当時、ひそかにねらってカタログに赤丸印を付けてはいたものの、寂しい懐と優先順位の関係で見送られ、やがて時代はCDへ。




ありがたいことに、二枚組のLPが、ハイライトCDでは一枚に収まります。わざわざLPをひっくり返したり交換したりすることなく、ヘンデルの音楽に浸ることができます。この録音は、ヘンデルの「メサイア」全曲ではありませんが、オーマンディとフィラデルフィア管の優れた演奏を楽しめるのですから、当分これで大丈夫だろうという、軟弱な素人音楽愛好家らしい発想(^o^;)>poripori

収録されている曲は、次のようになっています。日本語訳は、Wikipedia の「メサイア」から、該当するものを拾いました。

■第1部 メシア到来の預言と誕生、メシアの宣教
1. 合唱: And the glory of the Lord こうして主の栄光があらわれ
2. 叙唱(コントラルト): Behold, a virgin shall conceive 見よ、おとめが身ごもって
3. アリア(コントラルト)と合唱: O thou that tellest good tidings to Zion よきおとずれをシオンに伝える者よ
4. 合唱: For unto us a Child is born ひとりのみどりごがわれわれのために生れた
5. Pifa: Pastoral Symphony 田園交響曲
6. 合唱: Glory to God in the highest いと高きところでは、神に栄光があるように
7. 二重唱(コントラルトとソプラノ): He shall feed His flock like a shephard 主は羊飼いのようにその群れを養い
8. 合唱: His yoke is easy 彼のくびきは負いやすく
■第2部 メシアの受難と復活、メシアの教えの伝搬
9. 合唱: Behold the Lamb of God 見よ、世の罪を取り除く神の子羊
10. アリア(コントラルト): He was despised 彼は侮られて
11. 合唱: All we like sheep われわれはみな羊のように迷って
12. 合唱: Lift up your heads 門よ、こうべをあげよ
13. アリア(バス): Why do the nations なにゆえ、もろもろの国びとは
14. 合唱: Hallelujah ハレルヤ、全能者にして主なるわれらの神は
■第3部 メシアのもたらした救い~永遠のいのち
15. アリア(ソプラノ): I know that my Redeemer liveth わたしは知る、わたしをあがなう者は生きておられる
16. アリア(バス): The trumpet shall sound ラッパが響いて (Tp. solo:Gilbert Johnson)
17. 合唱: Worthy is the Lamb ほふられた小羊こそは

アイリーン・ファレル(Sop.)、マーサ・リプトン(Contralto)、ウィリアム・ウォーフィールド(Bass-Bar.)、モルモン合唱団、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団による、いや~、実に圧倒的な演奏です。1958年11月&1959年3月にステレオ録音されたとクレジットされていますが、録音会場がおもしろい。なんと、コンサートホールではなく、フィラデルフィアのブロードウッド・ホテル(*1)だそうで、驚きです。

現代の大オーケストラと独唱者、それにモルモン合唱団という大きな合唱団が一斉に収録できる場所ということで選ばれたのでしょうが、全休止時の残響の様子から想像するに、けっこうな容量の会場のようです。大勢のメンバーが集まる録音スケジュールの面から、宿泊先のホテルで収録するのが一番合理的だったのかもしれませんが、いったいどんなホテルなのやら。ビッグ志向のアメリカの、とりわけ裕福だった東部フィラデルフィアですので、ありうることとは思いますが、思わず想像力が絶句いたします(^o^)/

「Unto Us~」の軽やかな躍動感とボリュームのある合唱、「Behold the
Lamb of God」における、量感のあるひたむきな合唱の迫力、「Why do the nations~」の弦楽合奏の見事さ、「Trumpet shall sound」での独唱は一部うわずったようなところが感じられたけれど、トランペット・ソロのほうは唖然とするほどの見事さ。最終曲が終わったあとの満足感は格別で、大オーケストラによる「メサイア」の演奏として、実に見事なものだと思います。



現代風のバロック・アンサンブルによる演奏として、NAXOS のスコラーズ・バロック・アンサンブルによるハイライト版(8.553258)も聴いていますが、不思議なことに、より編成が大きいはずのオーマンディ盤のほうに、緊密な躍動感を感じます。逆に、ひなびた雰囲気でゆったり・のんびりと聴きたい気分のときは、NAXOS 盤のほうを選びます。録音だからできる、贅沢な話です。

それから、盤面の状態はたいへん劣悪なのですが、LPでマルコム・サージェント指揮ロイヤル・リヴァプール・フィル盤(コロムビア,RL-3114-6,1964)の3枚組も棚中にあり。今ではCDでの入手が難しいこのLPは、録音等のデータの記載がありませんが、昭和35年の発売ですからそれより以前の録音のはず。そろそろこちらも著作隣接権が消滅し、公共の財産となる頃かと思います。これも、楽しみなことです。

(*1):Broadwood Hotell, Philadelphia, Eugene Ormandy - Wikipedia ~いずれも英文です(^o^;)>poripori

コメント (12)    この記事についてブログを書く
« 今年も妻と柿の収穫 | トップ | 剪定枝を焼却する »

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
メサイアは (eyes_1975)
2010-11-08 22:10:42
私は全曲版でピノック、イングリッシュ・コンサートとマリナー、アカデミー室管の2種があります。
前者は古楽器によるものなのか、突っ走るような勢いで聴かせてくれ、後者はオーソドックスでふんわりと響き渡ります。
今日、都心の通勤電車の各駅のゴミ箱が閉鎖されてました。横浜でAPECが開かれるため、テロ防止の策だそう。尖閣諸島問題がYou Tubeで広がり、大問題まで移ってしまい、どうなるのやら。
メシア(救世主)が出てきてくれるのかな。
eyes_1975 さん、 (narkejp)
2010-11-09 06:12:51
コメントありがとうございます。名曲らしく、古楽器版と現代楽器版と、それぞれに魅力的ですね。
おやおや、都心部ではゴミ箱も閉鎖ですか。それは警備する方も通勤する人も大変ですね。当地はまったくのんびりとしたもので、畑の陽だまりで剪定枝の焚き火を楽しんでおります。ジジくさ~(^o^;)>poripori
懐かしいメサイア (eguchi)
2010-11-09 11:09:13
こんにちは
まったく個人的な思い出ですが・・・
クラシックを聴き始めた40年近くも昔に、「学校で良く歌ったわ」という家人の話に刺激され、右も左も分からずに買ったのがメサイアです。
ハイライト版と全曲版のあることも知らず、どうせ聴くなら、とリヒターの全曲版にしました。さすがに全曲を通して聴くことは少なく、カートリッジを上げては下げの繰り返しでした。
CDはテ・カナワの名前につられて買ったショルティのハイライト版、
それとロバート・ショウの全曲版が手元にありました(記事を拝見して探した次第です)。
このメサイアも含めて、ヘンデルの伸びやかな音楽は何か気持ちを豊かにしてくれますね。そろそろメサイアの季節も近づいてきました。久しぶりに聴いてみましょう。
そろそろメサイアの季節 (林 侘助。)
2010-11-09 18:28:02
 美しい風情ある言葉ですねぇ。もう年末も近い。記事に触発されて、久々に「メサイヤ」聴きたくなりました。

 「若い頃にLPを入手し損なっていた録音がCDになっていると、前後を顧みずに衝動買いしていた」~そうです。その通り。カタログに印を入れていたのも同じ。皆、貧しくて、LPは贅沢品でした。但し、ワタシは輸入盤一筋…安かったので。オーマンディって懐かしいなぁ、大好き。

 サージェントの「メサイヤ」にはSP時代以降数種の録音があるらしくて、話題のLPは1959年録音、cfp 7243 5 75776 2 5 それこそ輸入盤格安で入手可能。このあとのRPO盤より評価は高くて、なんといってもハーダーズフィードル合唱協会が涙が出るほど充実しております。

 タリス・スコラーズ盤は好きですよ、素朴な味わいがあって。ヨハネス・ソマリー盤をサイトで取り上げたのは特別に理由はなくて、お勉強のためです。

http://kechikechiclassi.client.jp/messiahsomary.htm

 
eguchi さん、 (narkejp)
2010-11-09 19:29:22
コメントありがとうございます。「メサイア」全曲を聴き通すのは、さすがに気力と気合が必要ですね(^o^;)>
今はオーマンディのハイライト盤で楽しんでおり、ヘンデルの音楽の伸びやかさを愛でてやみません。しばらく繰り返していると、聴いていないときでも、脳内でエンドレス・リピートがかかります(^o^)/
林 侘助。 さん、 (narkejp)
2010-11-09 19:37:56
コメントありがとうございます。1960年前後には、英国の御大たちが競って「メサイア」を録音したのでしょうか。コロムビアはサージェントでしたが、ビクターはビーチャム卿で、こちらも有名ですね。当方には、なぜかビーチャム指揮のハイライトLPのジャケットだけがあり、中身がありません(^o^)/
どこへ行ってしまったのか、まだ楽旅の途中なのかも(^o^)/
これも、パブリック・ドメインになることを期待しています。
懐かしい! (親父りゅう)
2010-11-09 20:38:42
拙ブログへのコメント、ありがとうございました。
ちょうど貴記事を見て「おっ、オーマンディのメサイア!」と、にんまりしてた所にコメント通知来ました。

写真のカタログも懐かしいです。
子どもの頃、CBSソニーの、この正方形っぽいカタログ(や他レーベルのも)を店でもらい、いろいろとマーキングしてたこと、私も同じです。「今度、小遣いが貯まったらコレにしよう」とか「お年玉でアレを買おう」とか・・・。
で、私はカタログの写真を切り抜いては、あちこちに貼ってましたので、現物が残っているのがほとんどありません。
大事に残しておられるようで、うらやましい限りです。こういうものはいつまでも捨てられませんよね。
親父りゅう さん、 (narkejp)
2010-11-09 20:53:34
コメントありがとうございます。オーマンディの「メサイア」は、皆さんけっこう印象深いもののようですね。CBS-SONYのLPカタログも、このあたりはずいぶん立派なものでした。その後の1980年代のカタログも持っていたはずですが、今残っているのは、この1970年のものと、他社数点のみです。そのうちに機会を見て、懐かしのレコードカタログの特集でもやりましょうか(^o^)/
Unknown (吉田)
2011-05-05 22:04:47
こんばんは。
この録音はホテルで録音されたのですか。聴いていて違和感がありませんでした。この広がり、そして奥行きのある響き、あたかも音響のいいホールやスタジオのような風情を感じます。アメリカはこういうところまで層が厚い! ここはアリですねえ。
吉田 さん、 (narkejp)
2011-05-06 06:14:49
コメントありがとうございます。いつも利用するビジネスホテルのようなところと違って、アメリカのホテルの場合は、オーケストラと合唱団と両方が入って録音できてしまうというのですから、スケールが違いますね。演奏も、今でも十分に魅力的です。

コメントを投稿

-オペラ・声楽」カテゴリの最新記事