電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

木嶋真優のヴァイオリン愛奏曲集「Rise」を聴く

2014年05月25日 06時05分14秒 | -室内楽
このところ、4月の山形交響楽団第236回定期演奏会でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏した、木嶋真優(Mayu KISHIMA)さんのCDを聴いています。「Rise」という題の、ヴァイオリン愛奏曲集といった趣きのもので、ピアノは江口玲(Akira EGUCHI)さん。曲目は次のようになっています。

1. サン=サーンス:序奏とロンド・カプリッチオーソ Op.28
2. フバイ:カルメンによる華麗な幻想曲 Op.3-3
3. チャイコフスキー:ワルツ-スケルツォ Op.34
4. イザイ:悲劇的な詩 Op.12
5. フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 Op.13
6. フォーレ:夢のあとに Op.7-1

作品番号から見て、作曲者が比較的若い時期の作品が選ばれているようです。もう一つ付け加えると、1曲目のサン=サーンスから、技巧の勝った、演奏効果にすぐれた曲目から、しだいにフォーレのヴァイオリン・ソナタのように、やや地味めですが内に秘めた情熱を感じさせるような曲目に変化していきます。最後の曲目が「夢のあとに」ですから、この配列は意図的なものでしょう。

最初の曲目、サン=サーンス:序奏とロンド・カプリッチオーソでは、技巧の切れ味と音楽的な演奏効果に目を見張りますし、フバイの「カルメン」幻想曲では、ビゼーのオリジナルな旋律を活かしながら、楽しく見事な、ヴァイオリンとピアノの二重奏曲として再現します。サラサーテともワックスマンとも違う、フバイならではの見事な「カルメン」を聴くことができます。
チャイコフスキーも同様に、技巧の冴えに加えて、軽やかさや楽しさの要素も引き出してくれるようです。
そして、イザイの「悲劇的な詩」あたりから、とくにフォーレのヴァイオリンソナタでは、技巧に終わらない内省的というか求心的というか、優しい音楽であるだけでなく、作曲家が曲の中に秘めた情熱と、演奏家の表現意欲を強く感じさせる演奏となってきます。江口玲さんのピアノもまた素晴らしい演奏で、思わず聴き入ってしまいます。

そういえば、フォーレのヴァイオリン・ソナタを聴くのは何年ぶりだろう? 古くはジャン・ユボーらの「フォーレ室内楽全集」のLPで愛聴しておりましたが、近年はほとんど耳にしておりませんでした。最後の「夢のあとに」で余韻を残して終わるまで、フォーレの音楽を堪能しました。

CDは EXTON レーベルで、OVCL-00485 という型番でオクタヴィア・レコードから発売されており、2012年の9月25日~26日の2日間で、埼玉県の三芳町文化会館で収録されたデジタル録音です。江口さんのピアノの響きもたいへん美しく録音されており、演奏録音ともに見事な一枚だと感じます。どちらかといえばアグレッシブな演奏かと思いますが、これはおすすめです。

(*1):山響第236回定期演奏会でシューベルト、メンデルスゾーン、ドヴォルザークを聴く~「電網郊外散歩道」2014年4月

YouTube に、木嶋さんのコンクールの時の映像がありました。ブラームスのヴァイオリン協奏曲の第3楽章です。画質はあまりよろしくありませんが、コンクールの雰囲気は充分に伝わるようです。
Mayu Kishima | Brahms Violin Concerto | 3rd Mvt | Queen Elisabeth Violin Competition | 2009


コメント