宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

なぜ天王星の衛星は質量がとても小さく、遠く離れた軌道を回っているのか?

2020年04月30日 | 天王星・海王星の観測
天王星の衛星は総質量が天王星に比べてとても小さく、遠く離れた位置で天王星と同じく大きく傾いた軌道を回っています。
こうした特徴は、地球のような岩石惑星とも木星のようなガス惑星とも異なっているんですねー
ひょっとすると、氷惑星である天王星ならではの衛星形成モデルが存在しているのかもしれません。


とても小さい衛星の総質量

天王星は太陽系7番目の惑星で、あまりに遠いので太陽を一周するのに84年もかかるんですねー

不思議なのは、天王星の自転軸の傾きがほぼ横倒しになっていること。
太陽系の惑星の多くは、太陽の周りを回る軌道面に対しておおむね直立して自転していますが、天王星は直立方向から98度も傾いています。

そして、天王星の主要な衛星5つも天王星の自転に沿って横倒しの軌道を回っています。
  主要な衛星はアリエル、ウンブリエル、タイタニア、オベロン、ミランダの5つ。
天王星の自転軸(黄色)の傾きは軌道面に対して横倒しになっていて、衛星の軌道も同じく横倒しになっている。(Credit: 京都大学)
天王星の自転軸(黄色)の傾きは軌道面に対して横倒しになっていて、衛星の軌道も同じく横倒しになっている。(Credit: 京都大学)
もともと天王星は、他の惑星のように直立した自転で誕生しました。
でも、約40億年前に地球の1~3倍の質量の天体が衝突して自転が傾いたという説が有力です。

その際に飛び散った破片が集まって衛星になったのだとすると、衛星の軌道面も横倒しになっていることが説明できます。

ただ、衛星すべてを合わせた質量は天王星の0.01%…
それに対して、理論上だと衝突の破片から誕生した衛星の質量は、惑星の1%程度になるはずです。
巨大衝突で生まれたことが有力視される地球の月は、この質量比に当てはまっているんですねー


離れた位置にある衛星

また、衝突の破片が集積するのは惑星のすぐそばのはずです。

もともと地球に近い位置にあった月は、45億年に及ぶ地球との重力相互作用で、だんだん遠ざかったと考えられています。

ただ、天王星の衛星はどれも軽すぎて重力相互作用は働きません。
それでも、天王星最大級の衛星は天王星半径の15~25倍という離れた位置にあります。

衛星が誕生するシナリオとして考えられるのは、巨大衝突説の他に円盤説があります。
これは、誕生直後の惑星が周囲のガスを取り込む際に円盤を形成し、その中から衛星が生まれるというものです。

これなら衛星の総質量は惑星の0.01%になり、この説で誕生したと考えられる木星のガリレオ衛星は条件に当てはまっています。

でも、天王星は最初から横倒しで誕生したわけではないはずです。
そう、衛星の軌道も横倒しになっていることは円盤説では説明できないんですねー
太陽系7番目の惑星“天王星”。(Credit: Lawrence Sromovsky、University of Wisconsin-Madison/W.M. Keck Observatory/NASA)
太陽系7番目の惑星“天王星”。(Credit: Lawrence Sromovsky、University of Wisconsin-Madison/W.M. Keck Observatory/NASA)


地球型惑星とも木星型惑星とも異なる衛星形成

天王星は氷を主成分とする惑星であり、地球のような岩石惑星とも木星のようなガス惑星とも異なっています。

そのため、巨大衝突では固体の破片が飛び散るのではなく、水が完全に蒸発して水蒸気の円盤が形成されるはず。
この点に注目した東京工業大学の研究チームが行ったのは、この水蒸気円盤から衛星が形成される過程のコンピュータシミュレーションでした。

衝突により天王星の質量の1%が蒸発して円盤になったとすると、そのままでは水蒸気に熱がこもって固まることができません。
水蒸気の99%が天王星に再吸収され、残りの円盤が天王星半径の10倍以上に広がったときにようやく氷が凝縮できるそうです。

1%の1%、つまり0.01%という数字は天王星の衛星の総質量と一致し、衛星の軌道が天王星から離れていることもこれで説明できます。
天王星の衛星の質量と軌道半径について、実際の値とシミュレーション結果とを比較したグラフ。(Credit: 京都大学)
天王星の衛星の質量と軌道半径について、実際の値とシミュレーション結果とを比較したグラフ。(Credit: 京都大学)
この天体の衝突で衛星が生まれるというシナリオは、一見すると地球の月が形成された過程と似ています。

でも、岩石を主成分とする地球では、飛び散った破片はすぐに凝縮してしまいます。
なので、どのような巨大衝突が起こるのかが月の作られ方を左右することになります。

一方、天王星のような氷天体で衛星が誕生するときに重要なのは、最初の衝突だけではないんですねー
円盤が冷えたり広がったりする過程も重要だということが、今回の研究結果から示されました。

このように、地球型惑星とも木星型惑星とも全く異なる衛星形成の理論モデルは、天王星と同じような氷惑星に一般的に適用できる標準モデルになりえるそうです。

太陽系の海王星だけでなく、地球の数倍の質量をもち岩石や氷からなると予想される“スーパーアース”に分類される太陽系外の惑星についても、同様の推論が成り立つようですよ。


こちらの記事もどうぞ
  天王星の自転軸はどうやって横倒しになったのだろう? シミュレーションから分かった天体衝突のシナリオ
    

ハッブル宇宙望遠鏡の露出を2倍に設定! やっと見つけた中間質量ブラックホールの決定的証拠。

2020年04月28日 | ブラックホール
これまで存在は予測されていても、決定的な証拠が見つかっていない中間質量ブラックホール。
潜伏先の一つとされる天体をハッブル宇宙望遠鏡で観測してみると、その天体は8億光年彼方にある星団だと分かります。
さらに、その星団には太陽5万個分の質量を持つブラックホールが潜んでいることがほぼ確実になったようです。


存在は予測されているけど決定的な証拠が見つかっていないブラックホール

多くの銀河の中心部には、太陽の約100万~100億倍もの超大質量ブラックホールがあることが知られています。
もちろん、太陽系が属している天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*”が存在しています。

また、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~10数倍程度の質量意を持つ恒星質量ブラックホールも宇宙には多数存在しています。

一方で、存在は予測されているのですが、決定的な証拠が見つかっていないブラックホールもあります。
それが、太陽質量の数千倍から数十万倍という中間質量ブラックホールです。

超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体してできるとも考えられています。
なので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ“中間質量ブラックホール”もあるはずなんですねー


中間質量ブラックホールの見つけ方

超大質量ブラックホールや恒星質量ブラックホールは、その重力に引き寄せられた物質が加熱されて放つX線を観測したり、周囲の天体の運動を調べたりすることで存在が確認できます。

同じ方法を使えば中間質量ブラックホールの存在も確認できると思いますよね。
それでは、なぜ決定的な証拠が見つからないのでしょうか?

その理由として考えられているのは、中間質量ブラックホールの周りには物質が少なく、超大質量ブラックホールほど重力が強くないため他の恒星や星間物質を引き寄せにくいこと。
そう、見つからない理由は中間質量ブラックホールが目立たないことにあると考えられています。

そんな中間質量ブラックホールを見つける数少ないチャンスもあります。
その一つが、ブラックホールが星を飲み込むという比較的珍しい現象をとらえることです。

2006年のこと、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”とヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”がみずがめ座方向に強力なX線フレアを検出します。

このX線源“3XMM J215022.4-055108”に注目したのがアメリカ・ニューハンプシャー大学の研究チーム。
中間質量ブラックホールではないかと考えたんですねー
恒星(左)を引き裂く中間質量ブラックホール(右奥)のイメージ図(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)。
恒星(左)を引き裂く中間質量ブラックホール(右奥)のイメージ図(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)。


中間質量ブラックホールが潜みそうな場所

“3XMM J215022.4-055108”のすぐ近くには、地球から約8億光年離れたレンズ状銀河が存在しています。

検出されたX線が中間質量ブラックホールからのものだとすると、思いつくのは“3XMM J215022.4-055108”がこの銀河の外れに位置する星団に存在していること。
超大質量ブラックホールであれば銀河の中心にあるはずなので、この星団は中間質量ブラックホールが潜みそうな場所としては妥当といえます。

ただ、これまでの観測では“3XMM J215022.4-055108”が8億光年彼方ではなく、天の川銀河の一角に存在する中性子星である可能性も残されていました。
みずがめ座方向のX線源“3XMM J215022.4-055108”の周辺。“3XMM J215022.4-055108”は白い円内の星団中に存在している(Credit: NASA, ESA, and STScI)。
みずがめ座方向のX線源“3XMM J215022.4-055108”の周辺。“3XMM J215022.4-055108”は白い円内の星団中に存在している(Credit: NASA, ESA, and STScI)。
ハッブル宇宙望遠鏡は2003年に“3XMM J215022.4-055108”周辺を撮影したことがありました。
今回の研究では、その2倍の露出時間をかけることで、より解像度の高い画像を得ています。

その結果分かったのは、可視光線で見た“3XMM J215022.4-055108”の光が、8億光年離れた位置では半径100光年前後の高密度な星団に相当すること。

また、“XMMニュートン”による追加観測からも、“3XMM J215022.4-055108”が放ったX線の変化は、恒星が引き裂かれる現象で放射されるものと一致していることが確認されたんですねー

これらのことから、“3XMM J215022.4-055108”は天の川銀河内の中性子星ではなく、8億光年彼方にある中間質量ブラックホールだと判明。
このブラックホールの質量は、太陽の約5万倍あると見積もられます。

これまで、中間質量ブラックホールの質量を求めるのに調べていたのは、ブラックホールによって引き裂かれた星からのX線の明るさをでした。
でも、今回はスペクトルの形状を組み合わせるという信頼度の高い手法を採用したそうです。

これまでの研究で、銀河が大きいほど、その中心に位置するブラックホールの質量も大きいことが分かっています。

このことから、“3XMM J215022.4-055108”の中間質量ブラックホールは、元々その質量に見合ったサイズの矮小銀河の中心核に位置していた可能性があります。
その矮小銀河がレンズ状銀河に接近して、重力で破壊された後に残ったのが現在の高密度星団なのかもしれません。

今回の研究により、中間質量ブラックホールの存在が1つ確認されました。

今後期待されるのは、まだ発見されていない多くの中間質量ブラックホールが、すぐ近くを通過する星を飲み込むこと。
研究チームでは、今回の手法を使って中間質量ブラックホール探しを続けるそうです。

中間質量ブラックホールの研究は、どうやって超大質量ブラックホールが出来るのか? っといった疑問を解くカギになります。

超大質量ブラックホールが中間質量ブラックホールの成長した姿なのか? それとも別の方法により中間質量ブラックホールが形成されるのか?
そもそも、高密度の星団が中間質量ブラックホールの故郷として適した場所なのでしょうか?

まだまだ多くの謎が残されていますね (^_^;)
今回の観測と研究成果の紹介動画“ハッブルが見つけた中間質量ブラックホールの証拠”(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)。


こちらの記事もどうぞ
  これで暗いブラックホールも発見できる! ガス雲の運動を解析して見つけたのは中間質量ブラックホールだった
    

大和牛の丼を食べに行く (*^_^*) 奈良ツーリング

2020年04月26日 | バイク・旅・ツーリング
“国牛十図”って知ってます。

鎌倉末期の絵巻で、当時の国産牛の見分け方や容姿が描かれているんですねー
この絵巻には筑紫牛、御厨牛、淡路牛、但馬牛、丹波牛、大和牛、河内牛、遠江牛、越前牛、越後牛の10種が取り上げられています。

今回の目的は、この“国牛十図”に取り上げられた良牛“大和牛”。
奈良市で旨辛カレーと奈良公園を楽しんでから、“大和牛”が待つ宇陀市に走っていきます。

コロナウィルスのためツーリングも自粛中なので、このツーリングは2018年に行ったもの。
思い出しながら記事を書いていると、脳内ツーリングをしてるようで楽しめました (^^♪

○○○

6月1日の金曜日はツーリング日和な晴れ。

まずは、奈良市でランチを食べに行きます。
阪神高速東大阪線~第二阪奈を走って、グーグルマップさんを見ながら着いたのがカレーの“タリカロ”さん。
2010年に奈良でオープンした“タリカロ”さんは、2021年1月に東京の西荻窪へ移転されました。
突き抜けた辛さなのに圧倒的な旨さを感じるカレーが楽しみで、ツーリングで立ち寄っていただけに残念…
まぁ~ 新幹線を使えば3時間ほどで行ける距離、たまに遠征して食べに行きたいですね。
実は、西荻窪のお店に一度伺ったんですが、店の雰囲気が変わってしまったけど味はそのまま旨いカレーが楽しめますよ。
風情のある佇まいの町屋ですが、南インド・アーンドラ地方の辛口カレーが食べられるお店です。
店の前は細い路地なので駐車は不可。
自分は食事の後に歩いて東大寺に行くつもりなので、向かいにある餅飯殿駐車場(有料)に預けました。近鉄の奈良駅から近いお店なので電車で行くのもありですよ。
入店前に気付いたのは、非常に辛い料理を提供しているので、小学生以下のお子様の入店をお断りしていること。
辛い料理を食べて気持ちのいい汗をかくのが大好きなのでワクワクしてきます。

古民家を改装した店内は少し薄暗く居心地のいい空間(テーブルとカウンター席がありました)。
オーダーを済ませて待っているとタリカロ・カリープレートの到着です。
○○○
このプレートは“チキンカレー”と“ダール(豆)カレー”、ライスのセット。
チキンカレーが辛口でダールカレーは少し辛さ控えめな感じでした。

このライス&カレーに混ぜると美味しくなるのが、“骨付きチキン”や南インドの副菜“ポリヤル”、インドのピクルス“アチャール”。
さらに、辛い時にまぜるためのヨーグルトが付いています。

ちなみに、↓コレがテーブルに置いてあった食べ方。
その一 水を飲んだら水地獄
その二 辛い時、先にまぜるのはヨーグルト、卵は最終兵器なり
その三 ライスはくずして食すべし!
食べ方というより辛さ対策ですね。

特に水を飲んじゃうと、もう何をしても辛いので要注意。
辛さに負けそうなときは、ヨーグルトや卵、ラッシーを活用しましょう~
あっ 卵とラッシーは別注になります。

チキンカレーは食べれないほど辛くはなかったけど、いつの間にか汗ダラダラになりました。
“骨付きチキン”をほぐしてライス&カレーに混ぜて食べる! これが辛いけど旨かったー\(^o^)/
辛さの中にあるスパイスの旨みがやみつきになりそうな味… 水は最後まで我慢しました。

タンドリーチキンのように見える“骨付きチキン”は、実は器に入らなかったチキンカレーの具。
南インドはライスが主食なので、メニューにナンやタンドリーチキンは無いそうです。

旨辛カレーで思いっきり汗をかいて気持ち良くランチは終了。
歩きながら東大寺を目指します。

東大寺や奈良公園って子供の頃から数えると何回も来たはず…
でも今回の日に照らされた多聞天はカッコ良かった。
○○○
仏教界には四人の守護神がいてその一人が多聞天。
単独で祀られるときは戦勝の神である毘沙門天になったりします。
なので、多聞天は四人の中で最強の守護神! カッコ良いはずです (^o^)

奈良公園でのんびり休憩を取った後は、今回のツーリングのメインイベントに向けて出発です。

県道80号~県道186号~広域農道~国道369号を走って行けば宇陀市に到着。
時間に余裕があったので、ルートを離れて探検してました (^^ゞ どこに続いているのか分からない感じで、意外に楽しめました。

大宇陀に入ると旧伊勢街道を思わせる街並みになります。
この中にある小さなお店が大和牛の丼を提供している“件(kudan)”さんです。

今回のツーリングのメインは、ズバリこのお店で“大和牛丼”を食べることなんですねー

“大和牛丼”は大和牛とタマネギをアゴ出汁で煮込んで葛(くず)でトロミを付けた丼。
ダッチオーブンで5時間ほど煮込んじゃうので具材は形が無くなることに… もちろん肉も見当らなくなります。

でも大丈夫! ひとつ上の“スペシャル丼”は軽く煮込んだ大和牛がのっかり肉の食感も楽しめますよ (^o^)
○○○
濃い色をしていますが、あっさりとした優しい味の丼。
牛丼は他人丼風やすき焼き風、ステーキ風など色々食べてきましたが、どの牛丼とも違う個性的な味でした。

まだ夕方早めの時間ですが、今夜は飲み会あり。
国道166号~国道165号~南阪奈~阪神高痩躯松原線を走って帰ってきましたー

今回のツーリングを思いついたのは、“国牛十図”に大和牛が取り上げられていたから。
ただ調べて分かったのは、当時の牛は農耕や輸送がメインなので、“国牛十図”に書かれているのも農耕に優れている牛の産地や容姿でした。
残念ながら食用としての味についての記載は無し…

まぁー “国牛十図”には淡路牛や但馬牛、遠江牛なども取り上げられているので良しとしましょうか。



こちらの記事もどうぞ


重力レンズを利用すれば可能になる! 遠方の銀河と誕生直後のブラックホールジェットの観測に成功。

2020年04月24日 | ブラックホール
地球から110億光年離れた銀河の中心にある超大質量ブラックホールから、数万年前に誕生したとみられるガス流(ジェット)が観測されました。
超大質量ブラックホールから噴き出す超高速のジェットによって、銀河中の星間ガス雲が激しく揺さぶられる様子が、これまでにない高解像度で撮影されたんですねー
進化の初期段階にある銀河でも、ジェットが星の材料を押し流し銀河の進化に関わっていることを示した今回の研究は、銀河の進化の過程を解明するための重要な一歩になるようです。


ブラックホールがガスを噴き出すメカニズム

ほぼすべての銀河の中心部には、太陽質量の数百倍から数十億倍もある超大質量ブラックホールが存在しています。

そして、そのブラックホールは銀河内の星の材料になるガスを流出させるなどして、銀河の進化に大きな影響を与えていると考えられています。

物質を吸い込むイメージのブラックホールですが、その周辺部にはガスを噴き出すメカニズムが2種類あるようです。

1つ目は、ブラックホールに降り積もる物質が“降着円盤”を形成しながら高温に加熱され、ときには銀河の星々全体よりも明るく輝く“クエーサー”と呼ばれる天体になり、この強力な光がガスを外へ動かすというもの。
  天体の光度がある値を超えると光の圧力が重力を上回り、ガスが天体に落ちることができなくなる。これを“エディントン臨界光度”という。

2つ目は、ブラックホールに吸い寄せられた物質の一部が“降着円盤”とは垂直な方向に超高速で噴き出すジェットになり、銀河からガスを流出させるというものです。
  ブラックホールによって集められたガスやチリは、降着円盤を形成しブラックホールに落ち込んでいく。一方、降着円盤内のガスの摩擦熱によって電離してプラズマ状態になると、電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットとして噴射する。

ジェットは、その周囲に存在する銀河内のガス(星間ガス)と衝突し、星の材料になる大量のガスを押し出すことにより星形成を抑制するなど、銀河の進化に大きな影響を与えると考えられています。

でも、ガス流出を引き起こす原因がジェットなのか、それともブラックホールを取り巻く円盤から放たれる強い光なのかは、まだ分かっていません。

ジェットが星間ガス雲に衝突しガス流出を引き起こす様子は、比較的地球に近い銀河ではすでに観測されています。
ただ、このような銀河は誕生からある程度時間がたっていて、銀河進化の初期にどのようにジェットが星間ガス雲に影響を与えていたのかは十分に理解されていないんですねー

時間をさかのぼって進化の初期段階にある銀河を調べるには、それだけ遠くを観測する必要があります。
これまでの観測では解像度が不十分だったので、観測は進んでいませんでした。


重力レンズ効果を利用して遠方のクエーサーを観測

それでは、銀河進化の初期に、どのようにジェットが星間ガス雲に影響を与えていたのでしょうか?

このことを探るため近畿大学の研究チームは、おうし座の方向約110億光年彼方にあるクエーサー“MG J0414+0534”をアルマ望遠鏡を用いて観測。
このクエーサーと地球との間には別の銀河が存在していて、銀河の重力がレンズのように働き“MG J0414+0534”からの光を曲げていました。
  恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力がレンズのような役割を果たすことで、曲げられたり、その結果として複数の経路を通過することにより、恒星や銀河が発した光の像が複数に見える現象を重力レンズ効果という。
重力レンズ効果による光路の曲がり、単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像に分かれて見える。
重力レンズ効果による光路の曲がり、単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像に分かれて見える。
重力レンズは、遠方の天体をより詳しく見ることができる“天然の望遠鏡”というべき働きを持っています。

この重力レンズ効果により、“MG J0414+0534”は4つの像になり、個々の像も大きく拡大されて見えていたんですねー
観測における解像度は約0.007秒角に達するもので、視力だと9000に相当するものでした。

研究チームでは、重力レンズの効果を精密に調べ、複数に分かれて歪んだ像から元の“MG J0414+0534”の姿を復元。
すると、クエーサーの中心部に非常に明るい電波源があり、その左右で一酸化炭素分子が放つ電波が検出されることが分かります。

この電波を詳しく調べた結果、超大質量ブラックホールから秒速600キロにも達するジェットが2方向に放たれ、周囲の星間ガスを揺さぶっていることが分かってきます。

110億光年という遠方のクエーサーの周辺で、ジェットと星間ガス雲の衝突の現場が画像として見えてきた。
このようなことは初めてのことでした。
アルマ望遠鏡で観測したクエーサー“MG J0414+0534”の疑似カラー画像。オレンジ色がチリと高温電離ガス、緑色が一酸化炭素分子がそれぞれ放つ電波に対応している。(左)重力レンズ効果による像が4つ見えている(右)重力レンズ効果を受ける前の本来の姿を再構成したもの。一酸化炭素分子が銀河中心核の両側に、ジェットに沿って分布していることが分かる。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. T. Inoue at al.)
アルマ望遠鏡で観測したクエーサー“MG J0414+0534”の疑似カラー画像。オレンジ色がチリと高温電離ガス、緑色が一酸化炭素分子がそれぞれ放つ電波に対応している。(左)重力レンズ効果による像が4つ見えている(右)重力レンズ効果を受ける前の本来の姿を再構成したもの。一酸化炭素分子が銀河中心核の両側に、ジェットに沿って分布していることが分かる。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), K. T. Inoue at al.)
さらに注目すべき点があります。

それは、ジェットと星間ガス雲が衝突している領域の大きさが、典型的な銀河の大きさに比べて大変小さいことでした。

このことから考えられるのは、この銀河の中心部にある超大質量ブラックホールからジェットが噴き出し始めたのは、わずか数万年前だということ。
ジェットが噴き出して数万年… つまり、ジェット誕生直後の様子を観測によりとらえたと考えられます。

今回の観測により、超大質量ブラックホールの活動が銀河に明らかに影響を与えているという確かな証拠をつかむことができました。

この結果は、銀河の進化の初期において超大質量ブラックホールが放つジェットがどのように星間ガス雲に影響を及ぼし、どのように銀河の巨大ガス流出が引き起こされるのかを明らかにする手がかりになるようですよ。
観測成果を基にした“MG J0414+0534”のイメージ図。銀河中心にある超大質量ブラックホールから強力なジェットが最近噴き出し、周囲の星間ガスと衝突している。(Credit: 近畿大学)
観測成果を基にした“MG J0414+0534”のイメージ図。銀河中心にある超大質量ブラックホールから強力なジェットが最近噴き出し、周囲の星間ガスと衝突している。(Credit: 近畿大学)


こちらの記事もどうぞ
  星の材料は超大質量ブラックホールによって銀河内を循環している
    

“はやぶさ2”の観測から分かったこと。リュウグウは予想以上に隙間だらけの小惑星だそうです。

2020年04月22日 | 小惑星探査 はやぶさ2
小惑星リュウグウは地表の岩塊も周辺土壌も多孔質で、隙間だらけの物質でできた天体。
だということが、小惑星探査機“はやぶさ2”の中間赤外線カメラによる観測から明らかになったようです。


どのようにリュウグウは作られたのか

“はやぶさ2”が探査した小惑星リュウグウは“C型小惑星”と呼ばれる炭素質の小惑星でした。
  NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”もC型小惑星になる。

こうした小惑星は、46億年前の太陽系形成時の始原的物質を保持している“化石”と考えられています。
なので、探査やサンプルリターンによって、太陽系初期の様子や惑星形成などに関する手掛かりが得られると期待されているんですねー

今回の研究の目的は、どのような物質がどのように集まってリュウグウが形成されたのか? っという天体の進化を調べること。

その方法としてJAXA宇宙科学研究所の研究チームが注目したのは、“はやぶさ2”に搭載された中間赤外線カメラ“TIR”による撮像、つまりサーモグラフィです。
これだと、すべての主要な地形や地質構造を検知でき、季節変動も調べることができます。

研究チームは、この中間赤外線カメラ“TIR”を用いてリュウグウの1自転分の連続撮影を実施。
史上初になるC型小惑星の全球撮像データを取得しています。


スカスカで凸凹が激しい天体

理論計算により、リュウグウの熱慣性を調べてみると、炭素質コンドライト隕石や地球の石と比べて非常に小さい値だと分かります。
  熱慣性とは、温まりやすさ、冷めやすさの指標。熱慣性の値が小さいほど温まりやすく冷めやすい。

熱慣性の小ささが示しているのは、リュウグウの表面温度が温まりやすく冷めやすいということ。
このことは研究チームにとって予想外の結果でした。
左の図は小惑星リュウグウの1日の最高温度の分布。右のグラフは、各地点で観測された一日の温度変化(□マーク)と理論計算に基づく予測値(実線と破線)の比較。理論計算では一様な熱慣性を仮定し熱慣性の値を変化させて計算している。(Credit:Okada et al., Nature2020)
左の図は小惑星リュウグウの1日の最高温度の分布。右のグラフは、各地点で観測された一日の温度変化(□マーク)と理論計算に基づく予測値(実線と破線)の比較。理論計算では一様な熱慣性を仮定し熱慣性の値を変化させて計算している。(Credit:Okada et al., Nature2020)
より詳しくモデル計算と比較すると、この熱慣性の小ささはリュウグウが極めてスカスカ(高空隙)で、凸凹が激しいことを表すものと分かります。

また、岩塊と周辺の土壌で観測された温度の日変化が小さく、両者の変化がほぼ同じことも明らかになります。
このことは、岩塊と周辺の土壌が、熱的に同等の物質で多孔質であることを示していて、これも予想外の結果でした。

さらに、中間赤外線カメラの観測では、“コールドスポット”と呼ばれる周囲より20度以上も温度が低い岩塊が複数発見されます。
これらの熱慣性は地球で発見された炭素質コンドライト隕石と同程度で、密度も同程度と推測されています。

以上の結果から、研究チームが考えるリュウグウ形成のシナリオは以下になります。
  1. ふわふわのダストが集まって成長。

  2. 微惑星が形成される。この微惑星は密度が低くスカスカな状態。

  3. 微惑星が成長し、高空隙であまり熱進化もしていなかったと思われる母天体を形成。
    母天体の中心部はやや圧縮され密度が増大した可能性もある。

  4. 天体衝突により母天体が破壊される。母天体の外側の物質が飛散し、中央部の物質が露出する。

  5. 飛び散った岩塊が再度集積し“ラブルパイル天体”を形成。
    大部分は高空隙な岩塊であり、その一部に圧密を受けたものも含まれて表面に露出する。
    天体の自転は比較的早く、赤道付近が膨らんだ形状になる。

  6. その後、何らかの理由で自転が遅くなり、軌道も変化し、現在のリュウグウになる。
    中間赤外線カメラで発見された低温の岩塊は、母天体の中心部で圧密を受けた物質、もしくは母天体に衝突してきた天体が起源とする可能性がある。
リュウグウ形成のシナリオ。(Credit:Okada et al., Nature2020)
リュウグウ形成のシナリオ。(Credit:Okada et al., Nature2020)
隙間だらけのリュウグウは、原始太陽系でふわふわのダストから密度の高い天体が形成される途中の天体なのかもしれません。

地球のような岩石天体も同様の過程で成長すると考えられているので、今回の成果はそうした過程の解明にもつながると期待されています。


こちらの記事もどうぞ
  赤外線天文衛星“あかり”が実現した、探査に行かなくても小惑星に水が存在するかを知る方法