宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、かなり臭い?

2014年10月31日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
腐った卵に馬小屋、アルコール、そしてビターアーモンド…

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を地球に持ち帰って、においを嗅いだとしたら、
こんな香りがするそうです。
彗星探査機“ロゼッタ”が撮影した
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。



ヨーロッパ宇宙機関によると、
8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と
深宇宙でランデブーしてから、
彗星探査機“ロゼッタ”は、この彗星から興味深い科学的特徴をとらえているそうです。

検出された分子には、
アンモニア、メタン、硫化水素、シアン化水素、ホルムアルデヒドなどが、
含まれていたんですねー



研究チームでは、
“ロゼッタ”に搭載された質量分析計“Rosina-DFMS”で、
彗星が太陽に接近するにつれて、
その核の周りのコマから放出される、ガスの特徴を分析しました。

その分析結果によると、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のにおいは強烈で、
腐った卵(硫化水素)、馬小屋(アンモニア)、
そしてホルムアルデヒドの鼻を刺激する息の詰まるようなにおい、
っがするんだとか…

さらに、シアン化水素のほのかな苦みのあるアーモンド臭、
かすかなアルコール(メタノール)と二酸化硫黄の酢のような臭い、
二酸化炭素の甘い香りも少し。

もし、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のにおいを嗅いだら、
その後で、嗅いだことを後悔するような臭いですよねー

その臭い彗星に、
“ロゼッタ”に搭載されたは実験用着陸機“フィラエ”は、
着陸することになるんですね…

地球を脅かす太陽の巨大黒点

2014年10月30日 | 太陽の観測
いま太陽では、
ここ何年も観測されたことのないような規模の、巨大な黒点群が地球の方向を向いていて、
「大規模な太陽嵐が発生するかもしれない」 っという事態が生じています。
2014年10月22日撮影の太陽の写真を使った合成画像。
X1.6クラスの太陽フレアが、黒点群AR 2192(中央やや下)を照らしている。
左上枠内は、太陽の自転により地球の方向に向く前の活動領域AR 2192を、
近距離からとらえた2014年10月20日の画像。

NASAでは10月17日に、
太陽の東端の表面に活動領域(AR)2192と呼ばれる、
巨大な黒点群が出現したのを確認。

ただ、それがやがて途方もない大きさになることは、
その時点で分かっていました。

そして太陽の自転に伴い、
黒点群は、ここ数日で次第に姿を現し、
今では木星の大きさ(直径約14万キロ)にまでなっているんですねー

今回の黒点は、2008年1月に始まった、
現在の太陽周期で観測された中で最大のもので、
目を保護するフィルターを装着して太陽を見れば、
肉眼でも観察できる大きさだそうです。

NASAの太陽観測衛星“ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー”では、
巨大黒点の動きを継続的に追跡。

これまでに小規模(Cクラス)の太陽フレアを27回、
中規模(Mクラス)を8回、最大規模(Xクラス)を2回観測しています。

現在まで大規模な太陽嵐は起きていないのですが、
今後最大規模のフレアが発生すれば、コロナガスと呼ばれる荷電粒子の巨大な雲が、
地球に向かって噴出される可能性があるんですねー

もし、そうなれば…
磁気嵐が発生し、通信システムや送電網に、
問題が生じることにもなりかねません。

その一方で、運が良ければ、
この上なく美しいオーロラが見れるようです。

では、今週に巨大な太陽嵐が地球を襲う確率は、
どのくらいあるのでしょうか?

まぁー 宇宙の天気予報は、まだ始まったばかりなので、
はっきりとした確率は分からないんですね。

ただ、世界中の目が、この黒点群の動きに注がれているのは確かなんですねー

史上最多! 493個の太陽系外彗星を特定

2014年10月29日 | 宇宙 space
太陽以外の恒星にも彗星が回っていることは、
これまでの研究で分かっていました。

でも、彗星は恒星に比べて非常に小さく、
また、彗星の“尾”も主星の光に圧倒されて見えなくなるので、
その存在を特定して軌道を計算するのは、とても困難なようです。
高精度視線速度系外惑星探査装置“HARPS”

今回の研究では、
若い恒星“がか座ベータ星”の8年間にわたる観測結果1000件近くを詳しく調査し、
周回している彗星493個の位置を特定しています。

この成果は、
アタカマ砂漠にあるラ・シーヤ天文台に設置された、
高精度視線速度系外惑星探査装置“HARPS”により撮影した観測画像を、
調べた結果なんだとか。

太陽系以外の惑星系に存在する、
いわゆる“系外彗星”の観測で捕捉した数としては過去最多になるようです。


地球から63光年の距離にある“がか座ベータ星”は、
約2000万年前に誕生した星です。
恒星としては、まだほんの幼年期に過ぎないんですねー

周囲の惑星や小惑星、そして彗星は、
“がか座ベータ星”にある巨大な円盤を構成する、
ガスとチリなどの物質から形成されています。

なので、ここの系外彗星を詳細に観測することで、
この種の若い惑星系で、どのようなことが起きているのかを、
理解するための手がかりが得られる可能性があります。

“がか座ベータ星”は、惑星系の形成メカニズムの一部を観測する、
すばらしい機会を提供してくれるそうですよ。

100億光年彼方のクエーサーを複数アングルから観測

2014年10月28日 | 宇宙 space
巨大銀河団の重力レンズ効果によって分離された遠方天体の複数の像が、
天体を異なる角度から見た、立体構造を映し出したものであると確認されたんですねー


約50億光年彼方の銀河団ごしに見える、
100億光年彼方のクエーサー“SDSS J1029+2623”。

このクエーサーは、
銀河団の強い重力による屈折(重力レンズ効果)を受けて、
分離した3つの像となって観測されています。

2010年に、この分離像のうち2つ(AとB)を“すばる望遠鏡”で観測すると、
これらの像に違いがあり、「クエーサーを異なる角度から見た姿」という可能性があることが分かります。
しし座方向の銀河団の
重力レンズごしに見える、
クエーサーの3つの像
(A、B、C)

クエーサーとは、
ひじょうに遠くにある銀河の中心核が、
とても明るい輝きを放っているものです。

銀河中心の巨大質量ブラックホール付近が
その放射源で、ブラックホールを取り囲むガス円盤の表面から、ガス流(アウトフロー)が噴き出しています。

研究チームでは観測した分離像の違いを、
「このガス流の立体的な内部構造を映し出しているのでは」っと考えたんですねー

レンズ像AとBは異なる経路からやってくるので、
地球に届くタイミングに、およそ2年の差があります。

研究チームでは、今年の4月に2つの像の違いが、
この時間差によるものではなく、角度の差によるものであることを、
確かめるために追観測を行います。

その結果、2010年の観測データから大きな変動はなく、
同じタイミングにクエーサーを出発したAとBの像には、
前回の観測通りの違いが見られることが確認されることになります。
クエーサーを出発したA像とB像は、
銀河団の重量による屈折を受けて、744日違いで地球に届く

観測される像が、確かに立体視されているものだということを踏まえると、
アウトフローの内部は一様ではなく、
小さなガス塊、あるいは濃淡のムラが存在する、
複雑な構造であることが示されたんですねー

今回の観測では、ガス塊の密度や光源からの距離に関する、
大まかなヒントが得られるに留まりました。

でも今後、同じような多数のクエーサー分離像を観測することで、
アウトフローの全貌解明につながる道筋が作られたことになります。
クエーサーのアウトフローを構成するガス塊。
真上に噴き出しているジェットは別の現象。


世界初! 重力レンズ効果による偏光Bモードを観測

2014年10月27日 | 宇宙 space
宇宙最古の光である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)。

このCMBの偏光観測の結果だけに基づいた、重力レンズ効果による偏光パターンが、
世界で初めて測定されました。

測定が可能であることを実証した今回の成果は、
将来の原始重力波の観測や、
ニュートリノの総質量の精密観測につながると期待されています。
チリのアタカマ高地に設置された
POLARBEAR望遠鏡

CMBは、138億年前に発せられた「宇宙最古の光」です。

宇宙のどの方向にも一様に観測される電磁波が、宇宙の誕生と進化、その背後にある物理法則の謎を解く鍵を握っていると、考えられているんですねー

特にCMBの偏光(光の振動の向き)を観測して、“偏光Bモード”と呼ばれる、特殊な渦状のパターンを調べることが重要視されています。

カブリIPMや高エネルギー加速器研究機構(KEK)などが参加する、
国際研究チーム“POLARBEAR実験”は、
南米チリにある口径3.5メートル望遠鏡と、最先端の超伝導検出器を用いて、
“小さな渦の偏光Bモード”を99.999%以上の確率で、世界で始めて観測することに成功しています。

“小さな渦の偏光Bモード”とは、
CMBが地球に届くまでの間に、宇宙空間の物質から受ける重力効果により現れるものです。

これを精密に測定できれば、宇宙に存在するニュートリノの総質量が分かり、
宇宙の大規模構造への理解が大きく進むと考えられています。

今後研究チームでは、さらに広い観測や受信機の性能向上を行い、
“大きな渦の偏光Bモード”の精密観測も目指すそうです。

“大きな渦の偏光Bモード”は、
誕生直後の宇宙が急激に膨張(インフレーション)した際に、
時空が振動して生じた“原始重力波”で作られたと推測されるもので、
これを観測することで、初期宇宙の誕生のようすが明らかにできるようですよ。