宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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“老けた銀河”を調べれば、宇宙初期でどうやって効率的に大量の星が作られたのかが分かってくる

2019年09月28日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡による観測から、宇宙年齢が10億年程度の時代に存在する銀河が見つかりました。

銀河の星の大部分は、その7億年前に誕生したとみられ、現在から135億年前の銀河では星形成活動が予想外に効率的だったことが分かってきたそうです。


宇宙で最初の星や銀河が誕生したのはいつ?

宇宙で最初の星や銀河は、いつどのようにして誕生したのか?
これは天文学上の大きな研究テーマの一つなんですねー

現在見つかっている中で(距離が正確に求まったものとして)もっとも遠い銀河は132.8億年前の宇宙に存在しています。
2018年に日本のグループによって発表されたものです。

実際にこうした初代の銀河が誕生したのはさらに数億年前、宇宙誕生から1~5億年の時代だと考えられています。

ただ、現在の技術では誕生したばかりの初代銀河を直接観測することはできません。

でも、何らかの方法で初代銀河の様子を探ることができるはず…
そこで、東京大学宇宙線研究所と早稲田大学のチームが目を付けたのは、年老いた恒星からなる銀河、いわば“老けた銀河”でした。

“老けた銀河”は一度に大量の星が作られ、その後は星が単に年老いていくだけという変化をたどった銀河だと考えられています。
なので、こうした銀河を調べれば、発見された時代よりも過去の様子を探ることができるのかもしれない っと考えたんですねー


“老けた銀河”を探す

初期宇宙の研究では、これまで活動の活発な“若い銀河”が注目を集めてきました。
でも、“老けた銀河”も“若い銀河”にはない貴重な情報をもたらしてくれます。

今回、研究チームが試みたのは、ろくぶんぎ座の方向にある“COSMOS”と呼ばれる天域で“老けた銀河”を探すこと。

“COSMOS”は、すばる望遠鏡を含む多数の天体望遠鏡や天文衛星でサーベイ観測された領域なので、高感度・広視野・多波長の観測データが揃っているんですねー

さらに、領域内で“老けた銀河”を見分けるために研究チームは、スペクトル中に現れる“バルマーブレーク”という特徴に注目。
これにより、6つの天体を“老けた銀河”候補として選び出しています。

この6天体に対してアルマ望遠鏡で追加の観測を実施。
すると、3天体が“老けた銀河”の最終候補として残ります。

最高感度を誇るアルマ望遠鏡でも未検出ということが“老けた銀河”である可能性を劇的に高めたそうです。
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今回見つかった“老けた銀河”の1つの観測画像と、その測光スペクトルエネルギー分布。
赤線は観測を最もよく再現するモデル銀河のスペクトル。
緑線は、さらに宇宙年齢が進んだ時代にある星間チリの熱放射が多いというモデル銀河のスペクトルだが、アルマ望遠鏡の観測からこのモデルは棄却される。
可視光線から電波まで計15波長の画像を用いた詳細なスペクトル解析の結果、結論付けられたこと。
それは、これら3天体が宇宙年齢10億年程度の時代に存在し、その星の大部分は年齢7億歳であるとことでした。

つまり、3天体は宇宙年齢わずか3億年の時代に誕生した“老けた銀河”である可能性が高いことになります。

さらに、宇宙最初期の銀河の星形成活動が予想外に効率的であったことを示唆する解析結果も得られています。
○○○
“老けた銀河”(左)と、その銀河が星形成をしていたころ(右)のイメージ図。
今回発見された3つの天体が本当に“老けた銀河”かどうかは、バルマークブレークの詳細な分光確認が必須になります。

2021年にはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がNASAによって打ち上げられるはず。
この望遠鏡によってバルマークブレークの詳細な分光確認がされれば、宇宙初期にどうやって効率的に大量の星が作られたのかという物理過程も解明されるのかもしれません。


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連星系誕生の謎に迫れるかも… 双子原始星から噴き出す不揃いな分子流から分かったこと。

2019年09月23日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
双子の原始星それぞれから噴き出す不揃いな分子流が、アルマ望遠鏡による観測で検出されました。

この分子流から分かってきたのは、それぞれの原始惑星系円盤の回転軸も大きく傾いている可能性でした。
このことは、連星系形成のメカニズムを解明する手掛かりの1つになるようです。


連星はどうやって誕生する?

銀河系の約半数が連星系の恒星と見られているのですが、その連星はどのように誕生するのでしょうか?
実は、連星系が形成されるメカニズムについては、まだよく分かっていないんですねー

例えば“乱流分裂モデル”では、星の材料である分子雲が乱流によって複数の分子雲コア(星のたまご)に分裂して、分子雲コア同士が互いに回りあう中で星が生まれ、最終的に連星系が生まれると考えられています。

また“円盤分裂モデル”では、原始星を取り巻く原始惑星系円盤が分裂して、もう1つの星を生み出していると考えられています。

これらのモデルの複合的な要因で最終的に連星系が生まれるという考え方もあります。


分子流から分かる原始惑星系円盤の傾き

連星形成のメカニズムに迫るために重要なこと。それは、数多くの若い連星系を観測して、特徴を統計的に考察することです。

その際に注目すべき特徴の1つに、原始星の周りにできる原始惑星系円盤の向きがあります。

今回の研究では、へびつかい座の方向に位置する双子原始星“VLA 1623A”をアルマ望遠鏡で観測。
この原始星のペアは非常に若く、間隔が数十天文単位と非常に狭いという特徴がありました。
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アメリカの電波干渉計“JVLA”による観測結果。
左側に見えるのが双子原始星“VLA 1623A”。
右に見える“VLA 1623B”の正体は分かっていない。
観測の結果、双子原始星のそれぞれから噴き出す、これまで知られていなかった不揃いな分子流が検出されます。

間隔の狭い連星系で、不揃いな分子流が見つかった例は初めてのこと。

一般的に分子流は原始惑星系円盤の回転軸方向に飛び出します。
なので、分子流が不揃いということは、それぞれの原始惑星系円盤の回転軸も大きく傾いているのかもしれません。
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アルマ望遠鏡がとらえた“VLA 1623A”から噴き出す分子流の分布。
高速で近づくガス(青)、低速で近づくガス(水色)、低速で遠ざかるガス(橙)、高速で遠ざかるガス(赤)を表している。


円盤の向きが揃わない可能性

さらに、今回の観測では、分子流の中心部を流れるジェットの構造から、双子原始星の軌道運動に起因すると思われるジェットの波打ち現象もとらえられます。

1周期の間隔は約300年で、双子原始星の軌道周期である400~500年とほぼ一致していました。
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“VLA 1623A”からの高速度分子流(赤は遠ざかる成分、青は近づく成分)。
大量に存在する高密度ガス(緑)を分子流がかき分けて外側に広がっている様子が分かる。
遠ざかるジェット状の成分の拡大図(上)では、波打つ構造が3周期分はっきりと確認できる。
これまで、間隔の狭い連星系の多くは原始惑星系円盤の分裂によって形成され、円盤の向きは揃っているはずだと考えられてきました。

でも、磁場や乱流など現実的な様々な効果を取り入れた近年の円盤分裂モデルでは、円盤の向きが揃わない可能性も指摘されています。

今回の“VLA 1623A”の観測結果はこの考え方と一致するのですが、乱流分裂モデルの可能性を否定するものではありません。

今後期待されるのは、このような観測を増やすことで連星系形成のモデルの検証が進むこと。

回転軸が不揃いな原始惑星系円盤からは、不揃いな惑星系が生まれてくる可能性もあります。
なので、連星系形成の研究から多様な系外惑星の誕生の謎にも迫ることができるのかもしれませんね。
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双子原始星からの不揃いな分子流と原始惑星系円盤(イメージ図)。


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表紙に魅かれて買った本 The Outsiders 大自然を旅して生きる

2019年09月15日 | book gadget goods etc
The Outsiders(アウトサイダーズ)とは、都会で過ごす日常から抜け出して、心の安らぎや気分転換を大自然に求める人たち。

この本で紹介されているのは、大自然の中で過ごしている人たちや、自然の中で欠かせないアイテムを作るブランドたち。
そして、自然を新しいスタイルで楽しむ人たちのためのアイテムを作り出すブランドたちです。
  The Outsiders 大自然を旅して生きる
  https://www.amazon.co.jp/dp/4766132130/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_pZ0xEbD4KGSRT
アウトサイダーズ 大自然を旅して生きる<br>
The Outsiders(アウトサイダーズ) 大自然を旅して生きる
アマゾンの評価には「この本の実体はカタログ」と書かれているけど、そうは感じなかった。

内容は、アウトドアで必要になるアイテムのカタログとして見るとがっかりするものかも。
理由は、選ばれたアイテムの魅力や歴史などの説明がほとんど無いこと。
見ていて「なるほど。」とか「欲しい!」に結び付く内容になっていないのが残念…

ずばり、この本は自然の中で過ごすアウトサイダーズのスタイル、アウトサイダーズに選ばれたブランドやアイテムのバックストーリーを、旅先で撮影された写真と共に楽しむ本です。
冒頭にアウトサイダーズやブランド、アイテムについての思いが掲載されているけど、本文に掲載されている様々な旅に出たトラベラーの内容と温度差があるようでシックリこない。

楽しめない本じゃないだけに勿体ない気もする。
本文だけをロードトリップ本的に楽しみながら読むといいのかも。コスパ的に悪いけどね。

あと、自然に対する敬意は必要だけど、アウトドアやアイテムってそんなに難しく語ること? っていうのは気になった。

ただ、アウトドアブランドが持つ新しい価値観としてのパタゴニアの掲載内容には同意!

公転1周分の観測データが無いのに長楕円軌道の系外惑星を発見できた理由

2019年09月14日 | 宇宙 space
アメリカの研究チームの観測から、主星から遠く離れる長楕円軌道を持つ巨大惑星が見つかったんですねー

通常、長い公転周期を持つ系外惑星を“ドップラーシフト法”により見つけるには、惑星の公転1周分の観測データが必要になります。
でも、この惑星は公転1周分のデータを待たずして発見にいたったようですよ。


約45年から100年の公転周期を持つ惑星

カリフォルニア工科大学の研究チームは、長い公転周期を持つ系外惑星を探す数少ないグループです。
  長い公転周期を持つ系外惑星を見つけるには、数十年という長期にわたる観測が必要になる。

この研究チームが1997年から進めてきたのが、おとめ座の方向にある恒星“HR 5183”を公転する惑星を探すこと。
観測にはハワイのケック天文台の高分散分光器“HIRES”が使われています。

そして、見つけたのが、公転周期が約45年から100年の範囲にある“HR 5183 b”と呼ばれる特異な軌道の惑星。

“HR 5183 b”は木星の3倍の質量を持つ巨大惑星で、その公転軌道は太陽系でいうと近日点が小惑星帯より内側、遠日点が海王星の外側にまで到達する長い楕円を描いていたんですねー

長楕円軌道を持つ巨大惑星は、これまで他の恒星の周りにも見つかっていました。
でも、これほど恒星から遠い場所を通るものは初めてでした。

他の多くの惑星同様、主星が誕生した後に残った原始惑星系円盤の物質から生まれた“HR 5183 b”。
当初は円軌道を描いていたと考えられています。

ほぼ同サイズの惑星の重力により惑星系の外側へと押し出されて、現在のような長楕円の軌道になったようです。
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“HR 5183 b”の軌道を太陽系惑星の軌道に重ねた図。



主星の光の波長の“ゆらぎ”を観測する

“HR 5183 b”の発見に用いられたのは“ドップラーシフト”という方法でした。

主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。

研究チームは、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取る“ドップラーシフト法”で惑星の存在を検出しています。

ただ、この方法だと惑星の公転1周分の観測データが必要になることに…
このため、惑星の軌道が主星から遠く、数十年から数百年もの公転周期を持つ惑星の発見は難しくなります。

でも、“HR 5183 b”の場合は事情が違っていました。

なんと、公転1周分のデータを待たずして発見されたんですねー

決め手になったのは“HR 5183 b”が持つ特異な軌道。
長楕円軌道ゆえに主星に近づいた際に加速する特徴的な運動により発見が早くなったそうです。

主星から遠く離れた惑星を“ドップラーシフト法”で検出するのに、公転1周分の観測データが無くても良いケースもあるんですね。

太陽系と“HR 5183 b”の軌道を重ねた動画。
近日点(木星軌道の内側)で急加速しているのが分かる。
from Keck Observatory on Vimeo.



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惑星表面からの光を直接観測すれば大気の有無が判別できるようです。

2019年09月04日 | 宇宙 space
赤外線天文衛星“スピッツァー”の観測により、地球に似た系外惑星の表面の様子が初めて明らかになりました。

惑星表面から放射される赤外線から分かってきたのは、大気はほぼ存在しないこと。
表面は暗い色の火山岩に覆われているようです。


系外惑星の見つけ方

2018年のこと、NASAの系外惑星探査衛星“TESS”によって系外惑星“LHS 3844 b”が発見されます。

“LHS 3844 b”はインディアン座の方向約48.6光年彼方に位置していて、半径は地球の1.3倍ほど。
主星の“LHS 3844”は“M型矮星”と呼ばれるタイプの恒星で、表面温度は摂氏約2700度と低く、サイズは太陽の5分の1ほどしかありませんでした。
  “M型矮星”は寿命が長く、数が非常に多いので、天の川銀河の惑星の多くは“M型矮星”を主星に持つと考えられている。

“TESS”は、地球から見て惑星が恒星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探ります。

この方法の場合、惑星からの光は主星の明るさに埋もれてしまうので、惑星の光を直接検出することは難しくなります。

そこで、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームが考えたのは、NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”を使って“LHS 3844 b”からの赤外線を直接検出することでした。


惑星表面から放射される赤外線

“LHS 3844 b”は主星から90万キロしか離れていないので、潮汐力によって主星にいつも同じ面を向けて公転しています。

この現象を“潮汐ロック”といい、主星と向かい合う昼側の表面温度は約770度にも達しているんですねー

研究チームがとらえたのは、この高温の惑星表面から放射される赤外線でした。
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(上)地球から見た“LHS 3844 b”の動き。主星の周りを11.1時間周期で公転していて、定期的に主星の手前を横切る。
(下)主星と惑星を合わせた光度の変化。惑星が主星の手前を横切る(3)と、光度が5%ほど暗くなる。また、惑星が主星の奥側を公転する間(6から12)は、主星と向き合う面が地球から見えるので、わずかに明るくなる。このときの光度曲線の形から大気の有無を判定できる。
観測の結果明らかになったのは、“LHS 3844 b”の昼半球と夜半球の間では熱がほとんど移動していないことでした。

もし、惑星に大気があれば、昼側で熱せられた大気は膨張し、風が発生して夜側へと熱を運ぶはずです。

でも、“LHS 3844 b”の熱の分布には、主星に向かい合っている点を挟んで完全に東西対象になっていて、温度差が均されているような兆しが全く見られず…

さらに、“LHS 3844 b”の昼夜の温度差は、この条件下で生じうる最大の値に近いもの。
この状況とよく一致するのは、惑星が大気を持たない岩肌のモデルでした。

これまでに“スピッツァー”や“ハッブル宇宙望遠鏡”によって、ガス惑星の大気についてはいくつも観測が行われてきました。

でも、今回の“LHS 3844 b”は、表面からの光を直接観測して大気の有無を判別できた例としては、過去最少の惑星になりそうです。


惑星が大気を失う要因

“M型矮星”を回る惑星で、どのように大気が保たれるかという理論はたくさんあります。
でも、これまで理論を実験的に検証することはできていなかったんですねー

今回、太陽系外の地球型惑星としては初めて、大気が存在しないことを観測から断定することができました。

惑星の大気が保たれたり、失われたりする要因を知ることは、生命が存在できる環境を太陽系外で探す上で非常に重要なことになります。

大気があるおかげで、地球に液体の水が存在し、生命が繁栄できています。
火星の場合は、大気圧が地球の1%にも満たないので、かつて表面に存在した海や川は失われています。

今回の観測によると、“LHS 3844 b”には地球の大気圧の10倍(10気圧)より濃い大気は存在しないことが確実で、1~10気圧の大気を持つ可能性もほとんどないそうです。

これほど主星に近い惑星では、もし希薄な大気があったとしても、主星からの強力な放射や恒星風によって失われると考えられます。

特に“M型矮星”の場合、光度は太陽より弱くても、紫外線の放射は太陽よりも強くなります。

若い段階の“M型矮星”であれば活動が激しく、フレアが頻繁に発生することもあるはず。
これにより生まれたばかりの惑星の大気を失わせてしまう可能性もあります。

さらに、研究チームでは、“LHS 3844 b”の表面の反射率の測定から、惑星の化学組成も推定しています。

そこから分かったのは、“LHS 3844 b”の表面は非常に暗い色をしていること。
火山岩の一種である玄武岩で覆われているようですよ。
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“LHS 3844 b”のイメージ図。表面は暗い色の溶岩が固まった岩石で覆われている。大気はほぼ存在しない。


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