宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

若い恒星の周りに見つかった生まれたばかりの惑星が存在する証拠

2018年06月30日 | 宇宙 space
生まれたての恒星を取り巻くガスとチリの円盤“原始惑星系円盤”は、
時の経過とともに恒星や惑星などの材料になって消えていく運命にあります。

今回、この“原始惑星系円盤”の観測から、誕生直後の3つの惑星の存在を示す確かな証拠が得られました。

これまで、誕生直後の惑星の存在が間接的に示されることはあったのですが、
直接撮像されたのは初めてのことなんですねー


惑星発見の決め手

太陽以外の恒星の周りを回る系外惑星は、これまでに4000個近く発見されています。

でも、生まれたばかりの原始惑星については、いまだ確実な証拠はみつかっていませんでした。

若い星を取り巻くガスやチリの円盤“原始惑星系円盤”をアルマ望遠鏡で観測すると、その円盤中に何本もの隙間が見られるものがあります。

この隙間は形成中の惑星によって作られていると考えることができるのですが、惑星以外でも隙間ができるという説もあります。
  チリ粒子が衝突し合体成長したり破壊されたりするという大きさの変化や、
  ガスが凍りつくことによるチリ粒子の生成という惑星以外の可能性もある。


今回の研究では、若い星を取り巻く円盤のガスの動きをアルマ望遠鏡で詳細に観測。

観測の対象になったのは、いて座の方向330光年彼方に位置する“HD 163296”を取り巻く“原始惑星系円盤”。
  “HD 163296”の質量は太陽の約2倍で、
  年齢は太陽の1000分の1ほどにあたる約400万歳と見積もられている。


すると星の周りに誕生直後の惑星が3個存在する確かな証拠を発見できたんですねー
○○○
“HD 163296”の周りの円盤。チリの分布を表している。
研究チームが惑星の存在証拠を発見するために採用したのは、星の周りの円盤に含まれる一酸化炭素分子が放つ特定の波長の電波を観測するという新しい手法でした。

一酸化炭素分子が動くとドップラー効果が起こり、波長にわずかな変化が生じます。

もし円盤内で惑星が存在していれば、惑星の重力によって局所的にガスの動きが乱れるはず。
その乱れをとらえれば惑星発見の決め手になるんですねー

この手法では、惑星の質量をより正確に求めることができ、実際には存在しないはずの惑星を誤認してしまう可能性も低くなります。
○○○
“HD 163296”を取り巻くガスの円盤の一部。
画像中央やや左側に見られる「く」の字状の折れ曲がりが
惑星の存在を示す証拠になった。
この手法で惑星の存在を発見できたのは、中心星から120憶キロおよび210憶キロ、390憶キロの距離。

これは、太陽と地球の距離のそれぞれ80、140、260倍の位置に相当し、中心星からとても遠いところを回っていることになります。
  惑星の質量は木星の1~2倍程度とみられている。

アルマ望遠鏡による観測でこれほど確かな太陽系外惑星の証拠が得られたのは今回が初めてのこと。

アルマ望遠鏡の高い解像度により、“原始惑星系円盤”の中に局所的に現れる小さなガスの動きを測定でき、そこに観測史上最も若い惑星を発見できました。

この手法は惑星形成を理解するための新しい道筋を示してくれたと言えますね。


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50億年後、太陽が一生を終えると何が起こるの?

2018年06月16日 | 太陽の観測
約50億年後に太陽が寿命の終わりを迎えると何が起こるのでしょうか?

これまではっきりと明らかになっていなかったこの疑問。
どうやら暗い惑星状星雲が形成されるらしいことが最新の研究から分かってきたようです。


太陽質量の数倍以下の恒星が一生を終えると惑星状星雲になる

質量が太陽の数倍程度以下の恒星が寿命を迎えるとガスやチリの外層を放出します。

そして放出された外層部分は、後に残った高温の中心核に照らされて輝いて見えることになり、これを惑星状星雲と呼びます。

惑星状星雲のなかには数千万光年彼方にあっても見えるほど明るいものもあるのですが、この距離は惑星状星雲になる前の恒星であれば暗すぎて見えないほど遠くになります。
惑星状星雲“Abell 39”
ヘルクレス座の方向約7000光年の距離に位置する惑星状星雲“Abell 39”。
直径は約5光年、殻の部分の厚さは約3分の1光年になる。


太陽は見ることができる惑星状星雲へ

太陽もあと約50億年ほどすると一生を終えるとみられているのですが、最終段階がどうなるのかははっきりとは分かっていないんですねー

ただ、これまで考えられてきたのは、「太陽は軽すぎるので見ることができるほど明るい惑星状星雲にはならない」っということでした。

今回、ポーランド・ニコラウス・コペルニクス大学と英・ジョドレルバンク天文台の研究チームが行ったのは、恒星のライフサイクルを予測するモデルを新たに開発し、異なる質量や年齢の恒星から放出された外層の明るさを推測する研究です。

このモデルによると、外層を放出した後の星は従来のモデルに比べて3倍も速く温度が上昇することに…

その結果分かったことが、太陽のような低質量星でも、これまで考えられてきたよりもはるかに容易に明るい惑星状星雲が形成できるということでした。

研究チームの計算によると、太陽の質量は暗いながらも見ることが出来る惑星状星雲を作り出す下限近くで、太陽よりも数パーセント軽い星では惑星状星雲は見えなくなるそうです。

さらに、今回のモデルは約25年前に発見された観測事実の説明につながることになります。

観測から、様々な銀河に存在する惑星状星雲のうち最も明るいものの本来の明るさはどれも同じであることが知られています。

このことが示しているのは、太陽のような低質量星からも明るい惑星状星雲が作られることです。

でも、従来のモデルによる理論では、太陽の2倍程度より軽い星から作られる惑星状星雲は暗すぎて見えないと考えられています。

そう、今回の新しいモデルにより、この矛盾が解決できたんですねー

今回の研究により、観測が難しい遠方銀河内にある数十億歳の星の存在を調べる方法が見つかりました。

さらにもう一つ見つけることができたのが、太陽が一生を終えると何が起こるのか? という疑問の答えなんですね。


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生命が生存できる条件は恒星からの距離だけじゃない! 惑星の傾きや軌道の形も重要

2018年06月09日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
恒星からの距離が程良く、惑星の表面に液体の水が存在できる領域をハビタブルゾーンと言い、この領域に位置する惑星に生命が存在できると考えられています。

今回シミュレーション研究から分かったのは、ハビタブルゾーンに位置する惑星でも自転軸の傾きや軌道の形が極端に変化する場合、突然の全球凍結が起こりうるということ。

惑星がハビタブルゾーンに位置していても、必ずしもそれが生命に適した環境と判断できないんですねー


自転軸の傾きと公転軌道の形

今回の研究でポイントになるのは惑星の赤道傾斜角と離心率。

赤道傾斜角は惑星の自転軸の傾きのことで、地球の場合は約23.4度になり、自転軸が傾いていることで季節変化が生じています。

また、離心率は惑星の公転軌道の形を表す値で、軌道がどのくらいつぶれた楕円であるかを示します。

0が真円で1に近いほどつぶれた円になり地球は約0.02。
軌道が楕円形だと、惑星が主星(恒星)に近づいたり離れたりして両者の距離が変化することになります。

太陽系のハビタブルゾーンに位置する地球の場合は、数千年単位でほんの少しだけ揺れ動きながら、少し傾いた状態で太陽の周りをほぼ円に近い軌道で回っているので、うまく生命が存在できる惑星になっているんですねー


全球凍結の可能性

これまでの研究では、太陽に似た主星のハビタブルゾーンに位置する惑星で、赤道傾斜角が大きかったり変化したりする場合には、惑星・主星間の距離が不変でも惑星の温度が高くなることが示されていました。

そこで今回の研究では、太陽のようなG型星の周りのハビタブルゾーンに存在する惑星にターゲットを絞り、赤道傾斜角と離心率という2つの要素が、生命を育める可能性にどんな影響を及ぼすのかをコンピュータモデルで調査。

さらに、惑星表面での氷床の成長などをより精密に取り入れた惑星モデルを使って、実際には惑星の温度はむしろ低くなるという結果を得ています。

そして明らかになったのが、惑星の離心率や軌道長半径の変化、つまり主星と惑星の間の距離の変動が大きかったり、自転軸の傾きが35度以上になったりすると、ハビタブルゾーンに位置する惑星であっても突然“全球凍結”する可能性があることでした。
全球凍結した地球のイメージ図
全球凍結した地球のイメージ図

自転軸の周期変化によって、ハビタブルーンの惑星の温度が上がるのはほんのわずかな期間しかないようです。


観測すべき系外惑星の判別

今回の研究で、系外惑星での氷河期は地球のものよりはるかに厳しいものになりうることが示されました。

系外惑星に生命が存在するかどうかを考える上で、惑星軌道のダイナミックスが大きな要素になるんですねー

そう、惑星の生命存在可能性を特徴づけるのに、ハビタブルゾーン内かどうかを考えるのでは不十分ということです。

また、今回の研究結果から、地球は気候という観点でいうと比較的穏やかな惑星なのかもしれないということも分かりました。

どの系外惑星に貴重な観測時間を割くのが良いのか? このような判断に今回の研究が役に立つのかもしれません。

たとえば、将来地球に似た惑星を見つけたとして、その惑星の軌道や自転軸が激しく振動することが数値モデルから分かったとしたら、別の惑星を詳しく観測した方が良いですよね。


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