宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

16光年先の系外惑星の存在をシミュレーションで推測

2016年04月30日 | 宇宙 space
地球から16光年先にある“グリーゼ832”の周りには、
すでに知られている2個の系外惑星が公転しています。

今回それに加えてもう1つ、
地球のような惑星が存在している可能性が、
シミュレーションから示唆されたんですねー


赤色矮星を回る2つの系外惑星

つる座の9等星“グリーゼ832”は、
質量と半径が、ともに太陽の半分以下しかない赤色矮星です。

地球からわずか16光年と近距離にあるこの星の周りには、
2つの系外惑星が見つかっています。

そのうちの1つ“グリーゼ832b”は質量が木星の0.64倍で、
太陽系では火星と木星の間、
中心星から3.53天文単位、約5.3億キロ離れた軌道を回る巨大ガス惑星。

片方の“グリーゼ832c”は、
質量が地球の5倍程度のスーパーアース(大きな地球型惑星)とみられていて、
太陽系では水星よりもさらに内側、
中心星に非常に近い約0.16天文単位、約2400万キロの軌道を公転しています。
スーパーアース“グリーゼ832c”のイメージ図。


もう1つの系外惑星

今回の研究では、
“グリーゼ832”系のデータ分析と多くの数値シミュレーションを実施し、
2つの惑星の間に新たな系外惑星が存在している可能性を調べています。

そして、運動の特徴や安定性を考慮したところ、
中心星から0.25~2.0天文単位の距離に、
もう1つの系外惑星がありうることが分かるんですねー

ただ質量の見積りには、
地球と同等から15倍ほどと幅がありますが…

“グリーゼ832”に3つ目の系外惑星が存在することを実際に確かめるには、
従来と同様に視線速度観測(惑星による星の運動の変化)や、
トランジット観測(恒星の手前を惑星が横切ることによる星の光度変化)に頼ることになります。

なので今後必要になるのは、
“グリーゼ832”系のどこに何を探せばよいのか、
ということを観測者に提供することだそうですよ。

こちらの記事もどうぞ ⇒ ハビタブルゾーンの巨大惑星 地球型? 金星型?

民間企業のスペースX社が火星探査を2018年に実施へ!

2016年04月29日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
宇宙開発を進めている民間企業スペースX社が、
非常に野心的な計画を発表したんですねー

それは、宇宙船レッド・ドラゴンを2018年までに火星に送る計画!

最初のフライトは無人なんですが、
火星に宇宙飛行士の足跡を付けるための重要な一歩になるはずです。


民間宇宙企業

スペースX社は自社のファルコン9ロケットやドラゴン補給船を使って、
衛星の打ち上げや国際宇宙ステーションへ物資の補給を行っている企業です。

最近では打ち上げたロケットの着陸や、
再使用に積極的にチャレンジしているんですねー

スペースX社による火星探査が実施されるのは2018年。

この計画ではは、
新たに開発されるレッド・ドラゴン宇宙船が利用されるそうです。


火星への着陸

無人宇宙船の火星着陸は、火星移住に向けた最初の一歩になります。

ただ、火星に大量のペイロード(積載物)を着陸させることは、
決して簡単ではないんですねー

宇宙船の質量だけでなく、
大気が薄いので、下降中のパラシュートによる減速ができないからです。

飛行士を含め、とてつもなく高額な積載物を、
安全に着陸させるための技術を検証するために、
早めの試験ミッションが必要になります。

そこでスペースX社では、推進技術を利用して、
ドラゴン2の後継になるレッド・ドラゴンを着陸せることを計画しています。


民間企業の開発スピード

レッド・ドラゴン宇宙船は火星に到着した後、
様々な火星環境を調査し、地球に送信することになります。

これはまさにNASAやヨーロッパ宇宙機関が実施してきた火星探査と同じなんですねー

スペースX社のイーロン・マスクCEOは、
以前にも火星への有人探査を2025年までに実現させたいと発言していました。

これは2030年代に予定されている、NASAの火星有人探査よりも早いものになります。

また、スペースX社では火星へ行く宇宙船の打ち上げのために、
大型ロケット“ファルコン・ヘビー”の開発を進めています。

今回発表された火星探査の詳細については、まだ明らかにされていません。

でも、宇宙船のレッド・ドラゴンとファルコン・ヘビーが揃えば、
火星探査も夢ではなくなるはずです。

イーロン・マスクCEOは、
9月にメキシコのグアダラハラで開催される国際宇宙会議において、
火星探査計画の詳細を発表すると見られています。

これにはNASAとのコラボレーション探査プログラムが、
含まれている可能性もあるようです。

無人宇宙船ドラゴン2の火星着陸計画への技術サポートをNASAから得る代わりに、
スペースX社は火星への大気圏突入、下降、着陸に関するデータを提供するそうです。


課題への対応

スペースX社の計画には、
ロケット、宇宙船、資金、NASAからの技術供与が揃い妥当に見えます。
でも課題が無いわけではありません。

火星探査計画の実現可能性は、
打ち上げに使われるロケット“ファルコン・ヘビー”にかかっていると言えます。

スペースX社は、
今年中にファルコン・ヘビーをデビューさせると予告しているのですが、
これまでに何度か打ち上げの延期が続いているんですねー

また、プラネタリープロテクションへの対応についても、
公式に発表されていません。

プラネタリープロテクションとは、
異星に降り立つ宇宙船が、地球の生命体によってその世界を汚染するリスクを、
もたらしてはいけないという考え方です。

スペースX社は過去に、火星のプラネタリープロテクション計画策定時には、
NASAに助言を求めるとしています。

さらに、飛行士が片道旅行を志願しない限り、
帰還方法に関する問題が付きまとい、こちらも重要な問題になります。

現在NASAでは、オリオン宇宙船新型ロケットSLSの開発を進めていて、
衛星の打ち上げや国際宇宙ステーションへの補給任務は、民間に委託している状態です。

そう、軸足を月や小惑星、火星探査に移しているんですねー
でもスペースX社には、どちらも実現していこうという勢いを感じます。

将来、国家に委託された民間宇宙企業が、
探査計画を推進するということも考えられますね。

こちらの記事もどうぞ
 宇宙船の空中停止にも成功していた! スペースX社“ドラゴン2宇宙船”
 スペースX社の超大型ロケット “ファルコン・ヘビー”
 火星へ探査に行くとしたら (その1) 難しいのは帰り方とその準備…

堆積物から分かった200万年前に起こっていた超新星爆発

2016年04月28日 | 宇宙 space
今から200万年ほど前のこと、
地球の近くで巨星が爆発したかもしれないんですねー

アウストラロピテクスなど初期のヒト科が、
満月よりも明るく輝く星が突然現れたことに驚いたかもしれません。

青みがかった不気味な光は、日中でも見えるほど明るかったようです。
1054年に中国や日本で記録された明るい星の出現は、
地球に最も近いところで起きた超新星爆発の1つ。
カニ星雲は、この超新星爆発の残骸。


超新星爆発

爆発が起きた場所は地球から約300光年も離れていたので、
生物に害を及ぼすことはなかったようです。

でも、地球に何も影響がなかったわけではありませんでした。
その爆発は、鉄の放射性同位体“鉄60”を地球と月に浴びせることになります。

今回の研究では、海底の堆積物に含まれる“鉄60”の年代を調査。

すると150万~230万年前に、
複数の超新星爆発が起きたことが分かってきたんですねー


地球に落ちてきた鉄

死にゆく恒星の内部では核融合反応がどんどん進み、
周期表の元素の大部分が作り出されます。

こうした元素が超新星爆発よって星間空間に撒き散らされると、
爆発した星の種類や、爆発が起きた時期と場所を特定するための手がかりになります。

問題は、撒き散らされた星の破片をどうやって見つけるかです。

地球に飛んできた破片が、まとまって頭上に落ちてくると分かりやすいのですが、
地球全体に散らばってしまうと、それに気付くのが難しいんですねー

そこで科学者たちは1999年に地球の深海底地殻を調査。

大昔の超新星爆発によって吹き飛ばされてきた可能性のある、
“鉄60”が微量に含まれているのを発見します。

そして、その5年後には“鉄60”の量と年代の分析から、
問題の超新星爆発が、200万年ほど前に地球からほど近いところで起きていたことを、
突き止めるんですねー


深海天文学

今回、別の研究チームが、
インド洋、太平洋、大西洋の深海底地殻に含まれる“鉄60”と、
それに関連した団塊や海底堆積物を詳しく分析したところ、
はるかに複雑な物語が見えてきたんですねー

用いられたのは深海天文学と呼ばれる研究手法。

この手法で今まで知られていたものよりも古い、
約800万年前の超新星爆発によって吹き飛ばされてきたと思われる“鉄60”を発見します。

このことは、地球の近くで複数の超新星爆発が起きていたことを示す最初の証拠になり、
200万年前の超新星爆発の証拠ほど強力ではないのですが、
遠い過去の超新星爆発の証拠として、非常に魅力的なものになります。

厄介なのは、地球に飛び込んできた“鉄60”が、
海底堆積物の中に蓄積していったペースでした。

約200万年前の“鉄60”の痕跡は、かすれたように広がっていて、
100万年以上かけて堆積したことを示しています。

この痕跡の幅は、
1回の超新星爆発が作り出す痕跡に比べて、
ずっと広いんですねー

広がった痕跡は、
複数の超新星爆発が直接作り出したものなのでしょうか?

それとも、過去の超新星爆発の残骸が薄い雲のように漂っている中を、
地球が通り抜けた結果なのでしょうか?

その答えは、
海流や海洋生物によって常にかき乱されている海底堆積物の中に、
鉄がどのように蓄積するかによっても違ってきます。

まぁー 海底堆積物を調べる深海天文学は、
天文学者にとっては新しいタイプの研究手法なので、
使いこなせるようになるためには、
その癖をよく理解する必要があるということですね。

こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽系ができた頃に、すぐ近くで超新星爆発はなかった?


ブルー・オリジン社の“ニュー・シェパード”は3度目の着陸に成功!

2016年04月27日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
ブルー・オリジン社は、
インターネット小売り大手のアマゾン・ドット・コムの
創業者ジェフ・ベゾス氏が設立したアメリカの民間宇宙開発企業です。

このブルー・オリジン社が、
4月2日にテキサス州で再利用型ロケット“ニュー・シェパード”の、
3度目の打ち上げと軟着陸に成功したんですねー

軟着陸させる際に使用したエンジン“BE-3”は、
地表からわずか1100メートル上空で再噴射を始め完璧な仕事をしたたそうです。

もし再噴射が上手くいってなかったら、
“ニュー・シェパード”は6秒で地上に激突。

無人の乗員用カプセルも、パラシュートで無事に着地したそうですよ。

こちらの記事もどうぞ ⇒ 使い捨てはもう終る!? ロケットの再使用実用化に近付くブルー・オリジン社

アルマ望遠鏡の重力レンズ画像にゆがみを残した小さな銀河

2016年04月26日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡がとらえた重力レンズ銀河“SDP.81”の画像に、
かすかなゆがみが隠されていました。

そのゆがみを生じさせたのは、なんと約40億光年彼方に潜む暗い矮小銀河…

矮小銀河は数十億個以下の恒星からなる小さな銀河なので、
ゆがみを生じさせるほどの質量はないはずです。

なので、この理論予測と観測結果の不一致は、
矮小銀河の主成分が見えない物質“ダークマター”の可能性があるんですねー


重力レンズ効果

2014年にアルマ望遠鏡によって撮影された銀河“SDP.81”は、
うみへび座の方向117億光年の彼方にあります。

この“SDP.81”と地球との間に別の銀河が存在していて、
その銀河の重力が引き起こした“重力レンズ効果”で、
“SDP.81”は“アインシュタインリング”と呼ばれる美しい円弧状の像として、
とらえられたんですねー

像のゆがみ具合を調べると、
手前にあるレンズ源となっている銀河の性質を探ることができます。

今回の研究では“SDP.81”の画像を詳細に解析。
すると、その中にかすかなゆがみが見つかります。

かすかなゆがみを引き起こしたのは、
“アインシュタインリング”を作り出した銀河とは別の銀河で、
天の川銀河の1000分の1以下の質量しかない、
矮小銀河の“重力レンズ効果”によるものとみられています。
手前にある重い銀河(中央青)の重力レンズ効果によって、
ゆがんだ遠方の銀河“SDP.81”(赤い円弧)と、
円弧中のゆがみを生み出した矮小銀河(白)のイメージ図。


ダークマターで構成された銀河

この矮小銀河は手前にある銀河の伴銀河だと考えられているのですが、
その伴銀河に属する天体が光で見えていないので、
主に“ダークマター”で構成される極めて暗い銀河だと推測できます。

理論的には、ほとんどの大きい銀河には、
似たような矮小銀河や伴銀河が存在していると予測されているものの、
観測では、それよりずっと少ない数しか見つかっていません。

この不一致は、ここ20年間の宇宙論における代表的な問題なんですが、
もし、これら矮小天体の主成分が“ダークマター”だとしたら、
この不一致を説明できるかもしれないんですねー

さらに、“ダークマター”の真の性質を理解するための新たな手がかりにもなります。

今回の研究結果は、
大多数の矮小銀河は“ダークマター”が主成分であり、
光を発しないため見ることができないが、
実際には存在しているということを示すことになりました。

さらに、アルマ望遠鏡のパワーを発揮した驚くべき実例だといえます。

今後もアルマ望遠鏡が効率よく矮小銀河を見つけてくれると、
次のステップは、より多くの同じような天体を探し、その統計の調査にすすめますね。