そごう美術館/ レオナール・フジタ展

2009-06-29 17:49:51 | Weblog
昨日の予報ではここまで晴天になると言わなかったような…実に良いお天気でした。でも、夕方からは風が強くなってきましたから、今夜も寝苦しくはなさそうです。願わくば雷はなく、程々の雨のみでありますように…笑。

湘南新宿ラインで、一路横浜へ。お目当ては、そごう美術館(横浜そごう6F)の【レオナール・フジタ展‐よみがえる幻の壁画たち】です。昨年師走に上野の森美術館で見た【レオナール・フジタ展】の焼き直しと想像できたのですが、惚れた弱み…実は惚れた相手にとことん尽くす性格だったのかも、と今更ながら気づいたりして…苦笑。たまには河岸を変えるのも悪くなかろうと、横浜までの遠征と相成りました。
そごう美術館は初めてですが、いかにも百貨店内の画廊といったスタイル。かつての池袋・西武美術館はゾクゾクするほど刺激的だったなぁとつい比較、内心で舌打ちしながら足を進めます。
内容は…よい意味で予想を裏切ってくれました。作品点数は少なかったものの、そこを逆手に取って配置は十分に工夫をこらしており、ゆっくりと気持ち良く鑑賞できました。壁画~シャペル・フジタへの変遷に的を絞っての企画、これはアイデアの勝利と言えそうですね。藤田嗣治の作品と言うと、反射的に乳白色の肌の裸婦が連想されてしまいますが、彼がそこに安住せずより高みに向けて努力してきたことがよくわかりました。
前回展示されていた「構図」と「争闘」に加えて、日本企業の依頼により作られた『壁画』が新たに出品されています。通常『壁画』とは建物の壁に直に描かれた絵画を指しますが、フジタは日本の気候風土を勘案して巨大なキャンバスに描く選択をしました。この結果、空襲や建物の解体などを経てもなお作品が残ったようです。
百貨店などのように大勢の人が集まる場所に飾られる為か、浮き世離れした優美な作品となっていますが、戦争直前の日本国内も場所によってはこれだけモダンな空気があったのだと妙なところで納得。
ところで、今回のカタログに掲載されていたものの名古屋(松坂屋美術館)のみの出品という『アントワープ港の眺め』は、都美術館の『日本の美術館名品展』に展示されています。会期は今度の日曜日(7/5)まで。都美術館のカタログでは触れられていませんでしたが、フジタはアントワープの銀行家の依頼によりこの作品の他に7点を制作したそうです。ところが銀行家は全額の支払いが済まぬうちに、公金横領で逮捕されてこれらの壁画も散逸してしまったとか…このエピソードは近藤史人による伝記で取り上げられていましたが、この絵のこととは思ってもみませんでした。フジタの壁画作品としてはもっとも早い時期のものと、今日購入のカタログで知った次第です。確かに先日この絵を見た時、フジタの作品としては意外な気がしたのですよ。来歴を知り納得です。こうして見ていくと、近美に永久貸与されている聖戦絵画や平野美術館にある『秋田の行事』の意味合いもかなり変わってくるように思えます。
晩年の礼拝堂建設は彼の仕事の集大成だったと、今更ながら気付きました。昨年師走の印象のままでしたら、私の中でのフジタはその他大勢の画家と同列になっていたかもしれません。
今回、彼の仕事を見直す機会を持てたことを、心から嬉しく思います。

それにしても、ですよ。片道2時間を費やして、横浜駅とそごうを往復したのみとは、我ながら泣けてきます。時間の制約があったと申せ、横浜らしいところを何一つ見ることも味わうこともできなかったなんて!!先週、友人から頂戴した「十番館のビスカウト」、何だか後光が射してきたような。ヨコハマは、あまりに遠かった…苦笑。

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