長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

254.札幌の街中で子育てをするカモたち。

2016-07-23 12:54:08 | 野鳥・自然

6月28日。札幌芸術の森での木口木版画のワークショップを含めた北海道滞在の5日目で最終日。新千歳空港を18:30発の飛行機の便で千葉に帰る予定である。今日は今年の4月から隣町の江別市内にあるR学園大学に通う三女と、お昼に札幌駅で会う約束をしている。午前、9:54にホテルをチェックアウト。昼までにはまだ時間がある。フロントで市内観光のフライヤーをもらって、札幌の街中をぶらつくことにした。

地図を見ていると、ホテルから「道庁旧日本庁舎(通称:赤レンガ)」や「北大植物園」が近い。買い物などするつもりはないのでまずは赤レンガを目指して歩き始めた。大通りに添って区画整理の行き届いた札幌の街を進んでいくと一際目につく「洋館」が現れた。これが赤レンガである。レンガ造りのりっぱな明治建築で東京の古川庭園や旧東京駅などを思い浮かべてしまう。海外からの観光客も多く。写真に収めてから敷地内の庭園を池に添って歩き始めた。真っ赤な睡蓮がちょうど見ごろで午前中の斜光に映えて美しい。カモが数羽浮かんでいるが「都会の中のことだからきっと家禽のアイガモか何かだろう」とあまり注意深く観察しなかった。木陰のベンチに座って、今回の北海道滞在のさまざまなことを思い出していると目の前の水面に、どこからともなくセグロカモメの成鳥が1羽飛んで来て下りた。時期外れでもあるし羽がかなり痛んでいたことから、おそらく傷病鳥で繁殖地まで渡れなかった個体に違いない。

しばらくして隣接した北大植物園に向かった。子どもの頃からの生き物好き。動物園や水族館はもちろん植物園もとても好きな空間なのである。こちらは有料で420円を入口で払って入園した。地図看板を頼りに園路沿いに散策する。内部はいくつものステージに分かれていてロックガーデン風の場所、野草園、バラ園、樹木の多くある庭園など、変化があって飽きることがない。東京で言えば「新宿御苑」に似ている。そしてもちろん、季節の花々(園芸種、野草)、や樹木、野鳥などが楽しめる。入園してすぐに夏鳥のセンダイムシクイが”チヨチヨヴィー、チヨチヨヴィー”とさかんに囀っていた。結構ゆっくりしてしまったので娘との待ち合わせの時間が迫っている。足早に出口まで向かうと、途中、こんどは”ツピン、ツピン、ツピン、ツピン、ツピン…”とヒガラが早口で囀り、まるで「急げ!走れ!」と言っているように聞こえた。

少し遅れて札幌駅の待ち合わせポイントに到着。娘の姿がない!慌ててスマホでメールを送信する。しばらくしてから返信が届くが向こうも見当違いの場所にいる。お互いこの街では新参者である。ようやく調整して駅の改札口で落合えた。一言二言かわして駅の食堂街に向かう。A;「昼は何が食べたい?」Q;「どんぶり!」というわけで、ちょっと高級そうな蕎麦屋に直行。僕は「天ざるランチ」で娘は「ご当地豚丼」をほおばった。「デザートが食べたい」というので、また駅周辺をブラブラと歩き探して行く。あまり大学から札幌の街まで出ることがないようで娘も「おのぼりさん」状態なのである…が、目ざとく「抹茶系カフエ」なる店を見つけた。 緑茶も飲めるようなのでここで一服することにした。テーブルにつき、お互い向かいあって注文の品を待つ。大学生活の話を聞くのだが、ときおり「それは、ないっさーっ!」と、しり上がりに道産子弁を使うので指摘すると自分でも気づいていない。娘は女子寮に入っているのだが、3か月弱ですっかり地元の友達に影響されたようだ。環境に順応する速さは親譲りらしい。

飛行機の時間まではまだ余裕がある。お腹も満たされたので少し近くを散歩することになった。「さっき行った赤レンガの庭園がきれいだったけど行ってみるか?」と振ると「いいよ!」と素直に答えたので、元来た道をボチボチと歩き始めた。まるで若い時のデートである。午前中に一度訪れていたので父が案内役となる。まずは赤レンガの建物の見える広場に着くと、感動して眺めている。「せっかく北海道の大学に通っているんだから、在学中にいろんな場所に行ってみるといいよ」。親心である。お次は睡蓮池。「どうだい、きれいな風景だろう」池の案内板をよく見ると池は北池と南池の二つに中央の水路一つで分かれていることが解った。午前中に来たのが北池だった。南池には半島状の島や太鼓橋もある。「こっちに行ってみよう」と歩き出してしばらくすると目の前の周回路をカモのファミリーが横切った。親鳥に8羽の巣立ち雛がチョロチョロとついて歩いている。娘と二人写真を撮ろうと踏み出すと家族は一気に池の叢へ移動して入っていってしまった。あきらめて半島まで行き、中央にある休憩所で一休み。この時に娘が一言「私、こういう自然の中をいっしょに散策して生き物を探したりするボーイフレンドがほしいなぁ」と呟くので「えっ、そういう趣味だっけ?」と聞き返すと「そーだよ、そのために北海道の大学を選んだんじゃない」と言う答えが返ってきた。これは意外だった。ここで学生生活や将来のこと、北海道のことなどをひさしぶりにゆっくりと話せた。

「今度は午前中に行った北池まで行ってみよう」と腰を上げ歩き始める。なにやら鳥の絵が描かれた看板を見つけた。するとこの池のマガモは野性のカモで都市部で繁殖する珍しい例だと書かれていた。すっかり家禽で似ているアイガモと決めつけていた。日本に秋冬に渡来するカモ類は多くがシベリアなどの北方から渡ってくる冬鳥だが、本州の山間部の湖沼や北海道では数種類のカモが少数繁殖していることが観察されている。北海道ではこれまでにもマガモ以外に、コガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ、シマアジ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、カワアイサなどの繁殖が観察確認されているのだ。そのことは知っていたのだが、まさかこんな都会のど真ん中で繁殖しているとは気付かなかった。このことを娘にも説明すると、さらに感動していた。「もう少し探してみよう」と池を注意深く見ていく。マガモは成鳥が合計でで20羽ほどいただろうか。しばらくして今度は留鳥のカモであるオシドリの親子連れが水面中央に見つかった。2人で池の端から眺めていると娘のいる方向にどんどんと近付いて来る。仕舞いにはほぼ真下まで来た。ここに訪れる人たちも日頃から大切にしているのだろう。まったく人を恐れず逃げない。親子2人でスマホやデジカメにその姿の画像を撮り収めた。印象派のモネの描いた睡蓮池のような風景の中、都市で生きる野生のカモたちと、まったりとした幸せな時間を過ごすことができた。カモさんありがとう。

カモたちとゆっくり遊んでいるうちに飛行場へと向かうタイムリミット。また元来た道を札幌駅まで戻り、お名残惜しいが、駅前広場で娘と北海道での再会を約束して帰路についた。新千歳空港へと向かう電車の車窓から水田の中に立ちすくむアオサギが最期に見送ってくれた。この5日間、充実した時間を過ごさせてくれた北国の人たちと自然に感謝します。

画像はトップが北池のマガモの成鳥。下が向かって赤レンガの外観、同内部の階段、北池風景、赤い睡蓮の花、セグロカモメ、南池風景、マガモの解説板、北池でカモを撮影する三女、オシドリの成鳥2カット、同親子ずれ1カット、北大植物園内風景、植物園でみつけた花2カット。

 

              



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1 コメント

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いつもありがとうございます。 (uccello)
2016-08-01 20:09:15
ブロガーのみなさん、いつもマイブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。いいね!をいただいた方々、感謝します。

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