長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

394. 2019年・令和元年 1年間ありがとうございました。

2019-12-31 18:07:12 | 日記・日常
ブロガーのみなさん、SNS上の友人・知人のみなさん、2019年・令和元年、1年間、マイブログの投稿にお付き合いいただきありがとうございました。いいね!やコメントをご丁寧にいただいた方々、感謝いたします。今回が今年最後のブログ投稿となります。

僕の今年の1年間を振り返ると全体的にはなかなか精神的にハードな年でありました。序盤には初の公共美術館での大きな個展があり、準備やら作品手配に追われ慌ただしい日々を送りました。それでも普段の画廊空間での個展の4倍近くの点数を展示し、予想をはるかに超える来場者の方々にも恵まれて、なかなか収穫の多い個展となりました。50代最後の年にこうした節目となる展覧会ができたことは今後の美術家人生を歩む上で貴重な経験となったと思います。

夏には北海道の離島、「天売島・てうりとう」に初めて『野鳥版画』制作の取材旅行に出かけました。これも初の離島での野鳥観察体験、未知のことが多く貴重な体験となりました。鳥だけではなく島の人々の暮らしに少し触れられたことは1つのカルチャーショックでもありました。

SNSを通じて知り合った自然保護団体の方より雁類の保護にかかわる活動の1部として『野鳥版画』制作の仕事の依頼(来年、再来年に向けて現在進行中)をいただけたことも新たな分野への参加という意味で有意義な出来事でした。この『野鳥版画』の仕事は今後は画廊や美術館などアート関係に特化せず、自然保護関係、野鳥関係の方々、団体とタッグを組んで進めて行きたいと考えています。

プライベートでは上にのべましたが、なかなかハードな年となりました。次女と三女、2人の娘の就活問題、15年間家族のように飼ってきた愛犬との別れ、そして年末には連れ合いの方のお世話になってきた義父の他界と続き、少し放心状態の年末を迎えています。

新たな年、2020年、令和2年は版画の新作個展やいくつかの絵画や版画のグループ展、オーダーによる版画制作、絵本製作などの予定が目白押しに入って来ています。いつまでも落ち込んではいられません。

みなさんにとっても新たな1年が実り多い年となるようお祈りしています。来年もこのブログは続けていきますので変わらずお付き合いをお願いいたします。なお当方、服喪中のため年始のお祝いの挨拶などは控えさせていただきますのでご了承ください。

画像は上下とも今月初めに撮影した工房近くの北印旛沼の夕景。




393. 『日本の野生生物を表現する』展が始まりました。

2019-12-17 18:11:11 | 個展・グループ展
今日から東京の新宿御苑インフォメーションセンター1Fギャラリーで今年も日本ワイルドライフアート協会主催のグループ展が始まった。今回のテーマは『日本の野生生物を表現する』。洋画、日本画、版画、イラストレーション、立体、クラフト等、様々な手法で表現された哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、両生類、昆虫類など日本に生息する野生生物をモチーフとした約40点の作品が展示されている。

昨日は搬入展示の日で出品者同士が協力し合いスムーズに作業が進められた。また今回は、この会を設立して25周年記念ということもあり会に貢献のあった物故者3名の作品6点が特別展示されている。展覧会の情報は以下のとおり。

・展覧会タイトル:2019年JAWLASワイルドライフアート展『日本の野生生物を表現する』

・会期・日時:2019年12/17(火)~12/22(日)9:00から16:30(最終日は15:00まで)

・会場:東京都新宿区 新宿御苑インフォメーションセンター・1Fアートギャラリー

・交通:東京メトロ副都心線 新宿三丁目駅、東京メトロ丸の内線 新宿御苑駅、都営地下鉄新宿線 新宿三丁目駅、JR・京王・小田急線 新宿駅南口、徒歩10分

・入場料:無料

・お問い合わせ:JAWLAS事務局 info@jawlas.jp

・後援:WWFジャパン

以上、ご確認ください。生き物好き、アート・ファンの方々、また新宿御苑のお近くまで御用のある方々、是非この機会にアートに表現された野生生物たちの生き生きとした姿をご覧ください。

※長島は木版画で表現した野鳥作品を2点出品している。最終日は午前中から会場にいる予定。今回、トップ画像も下の画像も昨日の搬入展示の時に「円窓魚眼レンズ」で撮影したものを投稿した。


             






392. 美術学校で『生物細密画』の実習を指導する。

2019-12-15 17:42:13 | カルチャー・学校
先月末から東京の杉並区にあるA美術学院に『生物細密画』の実習指導に行っている。対象となるのは絵画を専攻する2年生と3年生。

もう、4年目になっただろうか。そもそもこの授業、本来美術大学などではデザイン科のグラフィックデザイン専攻の学生等が学ぶ内容なのかもしれない。ただ美術大学でこのような実習を行っているということは聞かない。
A美術学院では5年前に前任のH先生より「今まで自然物描写」という実習を1年生では行ってきたのだけれど、2年生に、もう少し踏み込んだ形で生物の細密画の実習を教えてほしいという内容でオファーが来た。
さらに「絵画を専攻する学生に卒業後、例えば印刷媒体の「図鑑画」であるとか博物館関係の「細密画」といった仕事に繋がる絵の体験をさせたい」。それからもう1つは「具象絵画の制作の中で生物を細密に描く表現も必要だろう」という指導方針を伝えられた。

最初の年は、生物ならば、何でもありといった設定でスターとしたのだが、やはり本物を手に取って細部まで描写する体験をしてほしいということになり、2年目からは貝殻をモチーフとして与え、正確な計測用にディヴァイダーを1本わたして、とことん対象とニラメッコをしながら制作に取り組んでもらっている。初めのうちは今の学生には、このような「行」のような実習はどうかと思ったが毎年集中して制作している姿を見ると、結構向いているのかもとも思っている。

師走に入り寒さも続く中、学生たちはこちらも目を見張る様な集中力で細密画に取り組んでいる姿は清々しい。この授業が始まるとこちらも今年一年がもうすぐ終わるのだという気持ちになってくる。実習はあと新年に4回ある。今年も、上手いとか下手とかではなくとにかく目に見えた細部をとことん観察し、描写しきった作品が最終日に並ぶのを楽しみにしている。



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391. 幻想美術のトレーディング・カード集が届く。

2019-12-07 17:45:14 | 幻想絵画
先月末、カナダのオンタリオ州在住の友人、美術家でエコロジストでもあるS氏からボックスに入ったトレーディング・カード集が3冊、郵送されてきた。内容は世界中の幻想美術のアーティスト(主に絵画)の作品をカードとして印刷したものである。今までも何度か送られてきたのだが、中にはウィーンのエルンスト・フックスやアメリカのアンドリュー・ゴンザレス等、このジャンルの大家の作品も含まれていた。

D氏とはもう10年程前にSNSを通じて知り合った。何回かメールをやり取りするうちに、彼が企画を進めているこの「トレーディング・カード・プロジェクト」について説明した手紙が届き「是非、参加してほしい」というお誘いをいただいた。まぁ、数度によるやり取りで信頼関係もできていたので二つ返事で承諾したという訳である。世の中、デジタル時代、地球の裏側の同じ志を持つ友人たちと交流できるということもとても楽しい。

「幻想美術・ファンタスティック・アート」について書くととても長くなるので、この場での説明は極く手短にさせてもらうが、ようするに西洋の中世、北方ルネサンスの画家、ボスやブリューゲル辺りを源流として、マニエリスム、象徴主義、シュルレアリスムの1部、戦後のウィーン幻想派まで続く表現世界として洋書などでは紹介されているジャンルである。その時代、その時代の流行としての美術表現からは常に距離を置きながら現代に至るまで絶えることなく続いてきた表現世界なのである。美術家も現在では欧米圏を中心に南米圏、オセアニア圏、日本を含むアジア圏と広く分布している。その画風は、よくシュルレアリスムの夢や深層心理を主題とした表現と比較されるが、微妙に異なっていて、物語性や空想的要素などが強い傾向にある。

今回の企画でデジタル画像で添付送信した私の絵画・版画の作品画像の中から選ばれた1点は、ケルト神話に登場する巨木伝説「生命の樹」というタイトルの木版画作品だった。主題そのものは西洋文化圏に伝承される内容なのだが、やはり日本人が作る作品というと木版画が好まれるのだろうか。

カードとなったアーティスト作品の合計は91点。ただでさえ濃い表現の作品が多い分野で、これだけ揃うとなかなか見応えがある。そしてD氏の世界中の「幻想美術」のアーティストを掬い上げたいという情熱と、ほとんどボランティアに近い企画・出版プロジェクトにはいつも頭が下がる思いでいっぱいである。今後も可能な限り参加して行きたいと思っている。

いつも貴重な機会を与えてくれるカナダの若い友人にこの場を借りて感謝したい。