長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

377. 道央・道北 野鳥取材旅行 その五(最終回)

2019-07-27 18:08:32 | 野鳥・自然
6/30(日)北海道『野鳥版画』取材旅行も5日目。最終日となった。

AM:5:41、新札幌駅近くの高層ホテルで朝を迎える。窓の外には町の遠方に石狩平野の森林地帯をのぞむことができる。実は最終日のこの日、前日までスケジュールを決めていないフリーの状態だった。候補地としては「ウトナイ湖サンクチュアリ」、初日と同じく千歳市の「嶋田忠・バードウォッチング・カフェ」、そしてホテルから近い江別市の「野幌森林公園」の3ヵ所が上がっていた。1つ目のウトナイ湖は今まで僕も2回程、尋ねているのだが「森林性の野鳥はこの季節はどうだろうか?沼水面の渡り鳥には季節が違う」ということでスルー。残り2ヵ所のうち野幌は夏鳥や森林性の鳥の繁殖期でベスト・シーズンだが6月の始めから若いヒグマが出没中、ということで千歳の方向に決まりかけていた。
だが、昨夜、3女の大学の友人たちと江別の居酒屋で飲み会を開いた後に親友のYさんが僕たち夫婦と一緒にバードウォッチングができるのを楽しみにしているということで、ヒグマ遭遇のリスクは覚悟して「野幌森林公園」に決定した。

ホテルで朝食を済ませチェックアウト。10:15に車で出発した。途中、江別市内の3女のアパートに立ち寄り2人と合流し合計4名で近隣にある「野幌森林公園」に向かった。30分ほどで森林公園の『自然ふれあい館』というネイチャー・センター側の入り口に到着する。この公園は2053haと言う広大な敷地面積なのでいくつかの入り口があるのだが、今回は野鳥が数多く観察できるというコースに近いこの入り口からスタートをすることにした。入り口付近には「ヒグマ出没中、注意!!」の看板が貼ってあった。さっそく連れ合いと2人で事前にクマよけに用意してきた「熊鈴」をウェスト・ポーチなどに装着する。"チリ~ン、チリ~ン" と音を鳴らしながら森の中に入って行く。「クマさん、しばしの間、僕らの前に出てこないでね」。入り口付近ではさっそくアオバトの哀調を帯びた声と2羽の可愛いハシブトガラが出迎えてくれた。それからエゾハルゼミの"ヨ~キン、ヨ~キン、ケケケケク…"という賑やかな合唱が響きわたっていた。先に来ていたバーダー風の大きなカメラを担いだ男性がすれ違いざま「数日前にこのあたりでクマゲラやヤマゲラなど北海道に生息するキツツキ類が飛び回っていたよ」と教えてくれた。

6月下旬の北海道の森林は樹木の葉が生い茂り美しいグリーンが眩しいほどである。さらに奥へ奥へと遊歩道を進んで行くとクロツグミ、キビタキ、オオルリ、ヤブサメ、センダイムシクイ、イカルなどの囀りや声が深い森林の中から聞こえてくる。キビタキの雄と雌が遊歩道近くをウロウロと飛び交っている。きっと巣立ち雛が近くの茂みにいるのだろう。Yさんが低い枝にとまるオオルリの雄を双眼鏡で見つけた。結構近い。全員で美しいブルーの羽衣をシッカリと観察することができた。この森の夏鳥は囀りの数から特にクロツグミとキビタキの生息密度が高いようだ。

それからこの森は野鳥だけではなくさまざまな生物が数多く生息している。遊歩道をゆっくりと歩きながら昆虫類のチョウやガ、甲虫、バッタ、、クモ類、植物の花、キノコ類などが観察できて飽きることがなかった。13:00過ぎに木製テーブルとベンチが設置された広場に出た。ここで遅めの昼食と休憩をとる。テーブルには誰かが杖代わりに使ったと思われる棒が1本立てかけてあった。よく観るとこの棒を短い羽を震わせて1頭の蛾が上ってきている。その形と大きさからスズメガの仲間であることが解る。羽化シーンに偶然出くわしたのである。3女に言って棒の下あたりを探索してもらったのだが蛹の抜け殻は見つからなかった。僕たちが昼食を済ませる頃には棒の先端に辿り着き、じっとしている。そしてだんだんと翅が伸びて来ていた。すると横にいた連れ合いがスマホ内の「蛾類図鑑」を検索し、羽の模様から種類を同定した。スズメガ科のエゾシモフリスズメという種類だった。名前に「蝦夷・エゾ」付くが北海道特産種ではない。しばらく翅が伸びきるのを観察していたいのだが時間も押して来ていて、まだ野鳥取材ポイントがこの先にあったので帰りに寄ってみることにして出発した。

大沢園地という野鳥観察のポイントに到着。屋根付きの四阿に荷物を降ろして周囲の鳥の声に集中する。この周辺でもキビタキとクロツグミの囀りがいくつも聞こえて来た。声がする樹の葉の繁みの中を双眼鏡で丁寧に探して行くと比較的近い距離の横枝にクロツグミの雄が止まって囀っている。あわててカメラを構えると少し離れた奥の繁みに入って行ってしまった。木の葉が繁ったこの季節の小鳥類の撮影は難しい。スマホを見ると14:00を過ぎている。帰りの飛行機の時間から逆算するとここでタイムリミット。元来たコースをUターンする。

帰り道、先ほどの広場でスズメガのようすを確認すると、まだ棒の先にとまっていてすっかり羽が伸びきっていた。白と黒とグレーのシックな着物のような色彩。ゆっくり画像撮影をさせてもらった。それから入り口付近まで来た所で太い木の幹に逆さに張り付いているエゾリスに遭遇。よく観ると前足でキノコをつかんで食事中だった。クリクリとした目が可愛い。人をあまり恐れずジックリと観察することができた。みんな大喜びである。朝来た入り口には15:13に到着。娘たちを江別市内のアパートまで送って、帰りの成田空港までの便に乗る新千歳空港へと向かった。

今回の4泊5日の『野鳥版画』制作取材の旅の連続投稿は5回に亘ってしまった。それだけ密度が濃かったということである。お付き合いいただいたブロガーのみなさん、ありがとうございました。次回の北海道取材は来年の3月、まだ雪の残る冬景色の中で冬鳥の観察撮影を行う予定である。その時にはまたお付き合いください。どうぞよろしくお願いいたします。


                   






376. 道央・道北 野鳥取材旅行 その四

2019-07-20 18:23:42 | 野鳥・自然
6/29(土)北海道『野鳥版画』取材旅行の4日目。天売島で3日目。天売島内、フットパス(森林地帯)を中心に自然観察をする。天売港から高速フェリーで羽幌港へ。内陸を新札幌まで長距離移動をする。

<早朝の宿周辺の散策>

朝、4:40、天売島の民宿「オロロン荘」で目が覚める。荷物整理などをしてからまだ疲れて寝ている3女を残し、連れ合いと宿の周辺を散策することにした。歩いてすぐに海岸線に出る。早朝の澄んだ空気の中、オオイタドリやラワンブキなど大きな葉を持つ北海道特有の植物が繁る海岸線の道を歩いて行く。岸には小さな漁船がたくさん停泊していてマストにはオオセグロカモメが何羽もとまっていた。島中央の山の手方向の森林からはツツドリの声やクロツグミの声が響き渡ってきた。夏鳥の美しいノゴマの雄がこの海岸でもエゾニュウの花の上などで囀っていた。この日は天売島を船で離れ内陸へと移動をする日。船の出港時間が13:20なので朝からお昼までフリーの時間がある。そういえばこの移動日の午前中の取材予定を決めていなかった。海鳥のコロニーまで行くには宿から歩いて片道1時間はかかってしまうし…。「昨日行ってみて気持ちが良かったので宿からすぐに歩き出すことができるフット・パス(森林地帯)を時間いっぱい歩いてみよう」ということで決定した。

<オロロン荘からフットパスへ>

朝食を済ませてから少し休憩をとりチェックアウト。宿に自然観察には不必要な荷物は預けて3人で島内をゆっくり歩き始めた。疲れが出ていた3女も休養をとったので元気を取り戻している。9:34、「海龍寺」という禅宗のお寺の境内を通り抜けフットパスの遊歩道入り口に辿り着いた。ノゴマ、エゾセンニュウ、ツツドリ、コムクドリ、アオバト、アカゲラ、ヒガラ、シジュウカラ、ルリビタキなどの姿や声が次々に確認された。上空をアマツベメのブーメランが6羽滑翔していく。島には種類も数も少ないといわれている猛禽類のハヤブサ成鳥が飛んで行った。
野鳥だけではなく森林の中を歩いていると植物、シダ類、コケ類、キノコ類、それから昆虫類や爬虫類などの小動物も観察でき生き物好きな僕たちとしては飽きることはなかった。楽しい時間はあっと言う間に過ぎ去って行く。11:59、オロロン荘に戻り宿の車で天売港まで送ってもらった。

<天売港から羽幌港、内陸を移動>

港に着いて少し待ち時間があったので漁船や埠頭に集まるカモメ類やウ類を観察撮影したりして時間をつぶした。13:20 発 羽幌港行の高速フェリー・サンライナー2号に乗船する。速い速い、この日は海も穏やかだったのであっという間に隣の島、焼尻島の港に到着する。ここまでの海峡ではウトウ、ケイマフリ、ウミウ、オオセグロカモメなどを船内から観察することができた。14:21、羽幌港に到着。行きの27日に港の駐車場にとめておいたレンタカーに乗車、ここからはまた来た時と同様に海岸道、高速道、一般道を通る移動のコースを延々と進むことになる。途中の海岸線を走る道路からは日本海の鉛色の風景の中に天売島と焼尻島が兄弟のように仲良く浮かんで見えた。島での体験がいろいろと思い出され、お名残惜しい気持ちになる。留萌市からは高速道に入る。行きと同様に長~い長~い、平野部に広がる森林地帯の風景の中の移動である。砂川PAで大休止。3女を下宿先の江別市のアパートに送ってからこの日の宿である新札幌の駅前ホテルにチェックインできたのは18:26、だった。この日は3女が通う江別市内の大学の友人たちが、僕たち二人と北海道歓迎飲み会を開いてくれることになっている。どんな話題が飛び出すかとても楽しみである。

画像はトップが天売島で観察したヒタキ科の野鳥、ノゴマの雄。下が同島の海岸線やフットパスと言う森林地帯で観察した植物、キノコ、昆虫など。



             

375. 道央・道北 野鳥取材旅行 その三

2019-07-13 18:03:03 | 野鳥・自然
6/28(金)北海道『野鳥版画』取材旅行の3日目。海鳥類の繁殖地から島の中央の森林地帯へ。

<天売島ガイドツアーに参加する>

午前3:45、道北の日本海に浮かぶ小島、天売島の宿で目が覚めた。窓の外ではシマセンニュウ、エゾセンニュウ、コヨシキリ等の小鳥類が囀っている。ザックに観察用具、撮影用具を入れてしばらく部屋で休憩。今日は島最大の海鳥の繁殖地を巡る『天売島ガイドツアー』に参加する。午前6:02、ガイドツアーのAさんが車で宿まで迎えに来る。昨夜のウトウの帰巣を観察するナイトツアーは団体さんが入っていて賑やかだったが、今日の同行者はAさん以外は島に風景や野鳥の写真を撮影に来た年配の男性が1人だった。観察ツアーは朝食前の2時間コース。うちの家族と合計5名で繁殖地へと出発した。

<黒崎海岸>

最初の観察地は東にに海を眺める黒崎海岸という開けた岩礁海岸。ここはカモメ科のウミネコの繁殖地となっている。途中、車の正面の道路にもウミネコがたくさん降りていてAさんが「あぶないからどいてね~っ」と声をかけながらゆっくり運転する様子がなんとも微笑ましかった。駐車スペースに到着して岩礁地帯に作られたコロニーのようすをじっくりと観察し、風景と合わせて画像撮影をした。背後の大地の斜面にもコロニーができていたのでガイドのAさんに尋ねると今年から新しく作り始めたものらしく、ウミネコの繁殖数も増加傾向にあることを教わった。ここでも背後の草原にエゾセンニュウやコヨシキリの囀りが聞かれ「北海道らしいな」と思った。

<赤岩灯台>

2番目に向かったのはこのツアーのメインとなる赤岩灯台の岸壁にできた海鳥類の繁殖地。昨晩、ウトウの帰巣観察を観たのと同じ場所である。ウトウの成鳥はこの時間帯にはほとんどの数が海上へと餌を採りに飛び立ってしまった後だったが少数が巣の近くを飛んだり灯台のすぐ下の海上に浮かんだりしている姿を観察できた。Aさんはコロニーに近い岸壁のポイントに到着すると高倍率の望遠鏡で海鳥の姿を探し始めた。
しばらくしてウミスズメ科の海鳥、ケイマフリの雄と雌が1羽づつ比較的距離の近い岩に飛来してとまった。Aさん曰く「この2羽はいつも観察されるペアですぐ近くに巣があるんですよ」と説明してくれた。逃げる様子もなくじっくりと姿を見せてくれたのでいろいろな角度やポーズの画像を撮影することができた。続いて岸壁直下の海上を望遠鏡で丁寧に追っていたAさんが「ウトウの小群のといっしょにウミガラスが浮かんでいますよ。今、このスコープに入っていますので順番に観てください」と声をかけてくれた。少し遠いが2羽のウミガラスが仲睦まじく泳ぐ姿が観察できた。ウミスズメ科のウミガラスは現在、天売島で80羽が生息している。ケイマフリと共に絶滅危惧種に指定されている希少な海鳥である。岸壁の直下のちょうどこのポイントからは見えない場所で繁殖している。
しばらくして「ウルル~ン、ウルル~ン」という声が聞こえてきた。これこの声につられてもっと数が増えてくるように保護上、再生音を流しているだということだった。その電子音に混じって本物のウミガラスの声も聞こえてきた。この声から別名「オロロン鳥」とも呼ばれている。それから僕は見なかったが連れ合いと3女は哺乳類のゴマフアザラシが海面に浮かぶ姿を観察したのだと言っていた。

<フットパス>

海岸を後にして最後に向かったのは「フットパス」と呼ばれる島の中央の森林地帯。ここで山野の小鳥類を観察した。森林に向かう途中、林道でアリスイやクロツグミの雄が目の前に出現する。午前:7:26、入り口に到着。ここからは徒歩でゆっくり野鳥を探しながら林の中の遊歩道を進んで行く。林縁でヒタキ科のノゴマの雄が囀る姿を観察する。それから樹上にムクドリ科のコムクドリ、季節外れのアトリ科のマヒワの小群が飛ぶ姿も観察できた。この季節は樹木の葉が茂り森林では鳥の姿を見つけ難い。姿は見えなかったが、ツツドリ、ベニマシコ、クロツグミ、エゾセンニュウ、アオバト等の声や囀りを確認することができた。午前:8:08、観察終了。宿まで送ってもらい朝食の時間となった。

ここまでで、島の自然をかなり堪能することができた。朝食後、朝が早かったので少し仮眠をとる。午前11:00前に、疲れが出たので宿で休みたいと言う3女を残し連れ合いと徒歩で出発する。「海の地球館」という海鳥関係の資料を展示した施設やもう一度、フットパス周辺を歩いて野鳥を観察したりしてのんびりと過ごした。












374. 道央・道北 野鳥取材旅行 その二

2019-07-06 18:05:37 | 野鳥・自然
6/27(木)北海道『野鳥版画』取材旅行の2日目。

<岩見沢市ホテル周辺>

午前3:35、ようやく外が白み始めた頃、岩見沢市のロッジ風のホテルで目が覚める。窓の外では夏鳥のキビタキの囀りが聞こえてくる。今日は移動の工程が長い。ザックの中身をいろいろと整理する。6:25、まだ朝食の時間には早いので連れ合いと2人で双眼鏡を持ってホテルの周辺を散策することにした。ここの残念なのはテニスコートなどの他に近所に散策できる遊歩道が整備されていないことだ。光背に広がる森林の風景は良いのだが…。それでも1時間ちょっとの散策でツツドリ、センダイムシクイ、キビタキ、クロツグミ、アマツバメなどの夏鳥の姿や囀り、アオバト、ゴジュウカラ、イカルなどの森林性の野鳥の姿や囀りを観察することができた。

<岩見沢市~羽幌町へ>

朝食をすませ9:53、チェックアウト。まずは昨晩夕食を共にした酪農系大学生として江別市に暮らす3女と合流するためJR.岩見沢駅へ向かう。無事3女と合流し今日のコースを出発。美唄市から高速道路に乗りひたすら北上して行く。右手には夕張山地が遠望される。この高速道から見える景色は行けども行けども単調な森林風景である。11:12、砂川PAで小休憩し、さらに北上、昼食は車中で済ませた。滝川市、深川市をい過ぎて留萌市に入ったのは12:00を過ぎていた。高速道から一般道にスライドし小平町という街に入ると目前に海岸の風景が広がってきた。日本海だ。天候が曇りということもあるが鉛色の広大な海景が広がっていた。ここから先も海岸道を北上、左手に延々と日本海が見える単調で長い道のりだった。苫前町を過ぎ今日の中間地点である羽幌町の「羽幌港・フェリーターミナル」の駐車場に到着できたのは13:08だった。

<フェリーに乗船し天売島へ>

今日の目的地へはここからさらに海路を行く。13:43、フェリーの「おろろん2号」に乗船し目的地である天売島を目指す。ボォ~ッ、という大きな霧笛とゴゴゴゴゴッ…というエンジン音をたてて想像していたよりは大きなフェリー船は出港した。今日は少し海が荒れ気味なのだろうか、船底の船室に寝転んでいると船体はグラングランとブランコのようによく揺れた。
14:56、目的地の天売島と隣接する兄弟のような島の焼尻島(やきしりとう)の港に到着する。デッキに出て防波堤で休んでいる海鳥を双眼鏡で確認するとウミウとオオセグロカモメの群れだった。湾内に白くて丸っこい水鳥を発見、双眼鏡で追うとこの海域で繁殖しているウミスズメだった。潜水行動を繰り返していたが白と黒の羽衣のコントラストがよく観えた。15:12、再び出港、会場には点々と海鳥が散らばって浮かぶ様子が観えた。双眼鏡で詳しく観察するとウトウとケイマフリというウミスズメ科の海鳥だった。

<天売島>

15:41、天売港に到着する。アマツバメが上空を飛翔し、どこからかイソヒヨドリの囀りが聞こえてきた。あらかじめ連絡してあった今日の旅館であるオロロン荘のご主人が車で迎えに来てくれていた。天売島は民家もまばらなとても小さな島である。それでも300人ほどの住民が住んでいるのだと言う。宿に到着し部屋に通されると窓からは海峡をはさんで先ほど立ち寄った焼尻島が正面い見える。「絶景だな」。
双眼鏡で観ると海峡の天売島寄りの洋上にポツポツと海鳥が浮かんだり海面スレスレを飛翔したりする姿が観える。さっそくザックでかついできた高倍率の望遠鏡をセットしてジックリと観察することにした。最高のロケーションである。距離は遠いがこれがなかなか楽しい。夕映えの海景の中、ウトウ、ケイマフリ、ウミウ、ヒメウ、オオセグロカモメなどの海鳥を観察確認することができた。

<ウトウ・コロニー帰巣ガイド>

5時代の早い夕食を済ませ少し部屋で休息。今日のメイン・イベントは島内にある『海の地球館』という自然観察、研究の施設が主催する「ウトウコロニー帰巣ガイド」に参加することだ。18:57、マイクロバスが旅館に迎えに来る。今日は島内の他の宿に宿泊する他のお客さんも一緒である。すでにバスの中には20人以上の人たちが乗り込んでいた。
バスの中で『海の地球館』のスタッフの方がこの島で80万羽が繁殖する海鳥のウトウの生態やコロニー観察の注意点を解説、約20分ぐらいでウトウのコロニーである赤岩灯台の駐車場に到着した。バスを降りて断崖上に造られた観察路を歩いて行くと地面が露出した斜面には所狭しと無数の穴があいている。これがウトウの巣穴である。そうこうしているうちに海の方向からウトウが次々と帰巣し、雛の餌となる小魚を加えて穴に入って行く姿が観察できた。スタッフの方の声で上空を見上げると薄暗くなった空にたくさんのウトウが"グッ、グッ、ググッ "と鳴き交わしながら帰巣してきていた。いつのまにか周囲が真っ暗になってしまうと他のマイクロバスで来たスタッフの方も加わりコロニーの端に特殊なライトを数本セットし始めた。「ストロボでの写真撮影はウトウのを驚かせ繁殖の妨げになるので禁止ですが、我々が研究を重ねてウトウの夜間観察用に開発したライトの下での撮影は可能です。このライトの色はウトウを驚かせることがないのです」という説明があった。 美術館内部の照明のように温かみのある柔らかい照明に照らし出された巣の近くのウトウたちが数羽、目の前でヨチヨチと歩いたり巣穴に出入りしたりする姿を短い時間だったが観察することができた。この時に高感度撮影をしたのが投稿画像である。

この後、20:24、オロロン荘に戻る。明日はまた早朝から他の海鳥の繁殖地の観察会に参加する予定である。今日の車とフェリーを乗り継いで来た長い道のりを振り返るとドッと疲れが出てきた。入浴を済ませると3人で爆睡してしまった。

画像はトップが特殊ライトに照らし出された天売島繁殖地でのウトウ。


               




373.道央・道北 野鳥取材旅行 その一 

2019-07-02 19:07:54 | 野鳥・自然
6/26(水)から6/30(日)の4泊5日で連れ合いと2人で北海道の道央・道北地方に『野鳥版画』の取材旅行に行ってきた。今年は4月、5月と、ちょうど大型連休の時期を含み公立美術館での個展が入っていて休暇をとっていなかった。実はその変わりも兼ねているのである。久々の北海道、どんな野鳥たちとの出会いが待っているのか出発日が近づいてくると何となく気持ちがソワソワとして落ち着かなかった。

26日、重い取材機材を背負って成田空港へ向かった。またしても荷物チエックとボディチェックの2段階で引っかかる。荷物の方はカメラの予備バッテリーを預ける荷物の中に入れてしまったこと、ボディの方は金属探知機でキンコン、カンコンと鳴ってしまい検査官に執拗に調べられたが結局原因は解らなかった。どうしていつも必ず何かに引っかかるのだろうか?「そうだ相性というものなんだろう」と割り切ることにする。
バタバタとしながら搭乗ゲート近くまでたどり着く。今日の便は格安チケットのジェット・スター便。

離陸したと思いきや、12:59.あっという間に新千歳空港に到着した。ここからはレンタカーに乗り千歳市内を移動。取材最初の目的地である市内の『嶋田忠・ネイチャー・フォトギャラリー』に到着する。嶋田氏は若い頃から憧れの動物写真家である。1980年代~1990年代、カワセミ、アカショウビン、シマフクロウ等、日本の野鳥を被写体とした写真集の名作の数々を出版している。事前に連絡を入れていてお会いするつもりだったが、ちょっと前に東京へ展覧会の打ち合わせに向かわれたとのこと。こちらが遅めに到着してしまったのですれ違いでお会いすることできなかった。「残念」またの機会に。

このギャラリーは広くはないが、この近くで撮影された野鳥や野生生物の写真を展示するギャラリー、それから「バードウォッチング・カフェ」と呼ばれる軽食スペース、カフェに隣接したハイドルームに分かれていて、けっこう長い時間楽しめる空間になっている。特にハイドルームにはカモフラージュされたガラスのない窓の直ぐ傍にセットされた餌台に次から次へと野鳥やエゾリスが訪れる様子が手に取るように観えるようになっていた。もちろん、カメラ持ち込みも自由で撮影することができるのである。

今の季節はちょうど野鳥たちの子育てのシーズンであり、席に着いたとたんにアカゲラの親子が目の前にやって来た。親鳥が餌台の餌を嘴に含み奥の林近くにいる巣立ち雛の所に飛んで行っては口移しで与えていた。ここで遅い昼食をとる。スープとカリカリに焼いたパンの大きなサンドイッチを注文する。特製ドリンクも含めてとてもおいしかった。
食事を済ませ隣のハイドルームへ移動。先客で4-5人の野鳥カメラマンが来て窓から望遠レンズを構えて撮影していた。地元の人だけではないようだが、とてもマナーが良くて譲り合って楽しく撮影していた。後から来た僕にも良い場所を譲ってくれて撮影することができ、ありがたかった。
野鳥の方はアカゲラの親子、コゲラ、シジュウカラ、ヤマガラの兄弟、ヒガラ、カワラヒワ、キジバト等が代わる代わる目前の舞台を訪れて飽きることがない。奥に広がる明るい林からはセンダイムシクイ、ウグイス、キビタキ、ゴジュウカラの囀り、ツツドリの声なども聞こえてくる。そしてクライマックスは立派な雌のエゾリスの登場。人間の存在など見向きもせずにゆっくりと餌を食べてくれたのでいろいろな方向、ポーズののカットを撮影することができた。ここでけっこうゆっくりしてしまった。時間を見ると16:43になっている。

フォトギャラリーを出て今日の宿泊地、岩見沢へと向かう。開けた風景の石狩平野の1本道を走る。北海道らしい広い道幅の心地よい道路が続く。左右は広い農地で見渡す限り広大な麦畑、牧草地、水田となっている。途中、真っ黒い和牛や乳牛のホルスタインの姿などが見られた。元、炭鉱の夕張の町を過ぎて山間部に向かって入って行くと18:05、今日の宿となるホテル・メープルロッジに到着した。今夜は地元、隣町の江別市の酪農系大学に通う3女とその同居の友人と4人でホテルのレストランで待ち合わせ夕食をいっしょにする約束をしている。山間の静寂なホテルでおいしい料理に舌鼓を打ちつつ、大学生活の話などを聞くことにしよう。