長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

412. 『コロナ禍の中、ハマっていること』その一・多肉植物 

2020-08-31 18:25:58 | 日記・日常
8月も末日となった。コロナ禍による不要不急の自粛生活も約半年が過ぎたことになる。長いなぁ…。

4月の初めに「緊急事態宣言」が発出された頃、どうせ引き籠るのであれば、普段なかなかやろうと思っていてできないことをやろうと覚悟を決めた。まぁ、集中して絵画や版画作品を制作するのは僕の仕事であるし、自然観察をするとかいうことは普段からずっと続けてきたことなので、そのまま継続しているから、それ以外ということになる。初めは例えば、普段は読めないで机に積んであった分厚い長編小説を読もうとか、工房の大掃除をしようとか漠然と考えていたのだが、いろいろと迷う中でハマっているいくつかのことがある。それらをブログに3回ほど連続して投稿していこうと思っている。

第1回目は『多肉植物』。facebook等、SNSでお付き合いいただいている方々には画像投稿を通じて、今年3月に北海道の農業系の大学を卒業した三女が東京の園芸会社に就職できたことをお知らせした。そして千葉の園芸ショップでの会社の研修があったこと、その時に合わせてショップを訪れ、三女の勧めで『多肉植物』を購入したことなども投稿したので覚えている方々もいらっしゃると思う。
その後、自宅兼工房の庭で栽培し始めた。これが結構ハマったのである。あまり手がかからないというのも僕のようなズボラな人間には向いている。ただ、自己流なので水やりの回数や量、葉状態を剪定するタイミング等、ちょっとしたことで疑問が起きる。スマホで三女に尋ねるのだが、しょっちゅう訊いているわけにもいかない。と、いう訳でネットで画像のような図鑑や専門書を取り寄せてみた。パラパラと頁を捲っていると未知なことばかりである。一口に多肉植物と言ってもけっこう種類も多いし種によって世話の仕方も微妙に違う。暑い地域に多い植物なので夏の暑さは得意なのだろうと単純に想像していたが、故郷は乾燥した地域の暑さであって日本のような高温多湿な暑さではないことや、この暑さが苦手な種類もあること、そしてさまざまな病気もあるということなどを知った。

一歩踏み込んで行けばどんな世界もそれぞれに奥が深いということだろう。すっかりハマってしまい入門書を熟読し世話の仕方なども微妙に変えている今日この頃である。サボテンとは一味違った魅力的な多肉植物。葉状態ばかりかと思えば花も咲かせるし種もできる。しばらくはこの不思議な植物との付き合いが続きそうだ。

画像はトップが栽培中の多肉植物の1種。下がその他の栽培中の各種多肉植物、専門書と見開き頁、世話に使用している霧吹き。


                    



411. 木版画『ハクガン(仮)』を彫る日々。

2020-08-06 17:31:52 | 版画
粘っこいコロナ禍が続く毎日。 自粛生活と言ってもエカキは制作の手を休めるわけにはいかない。何故ならばそれが我々の仕事だからである。

5月から野鳥版画、『日本の野鳥シリーズ』の大判木版画を引き続き制作している。それも水鳥、カモ科の雁類に限定して3点目である。先月から彫っているのは、ハクガン(白雁)。英語的には " Snow Goose " という。 北アメリカ、グリーンランドの北極圏、北東シベリアの1部で繁殖、北アメリカ東海岸及び西海岸で越冬する雁類である。日本には数少ない冬鳥として渡来するとされてきたが近年、北日本や日本海側の水辺環境で越冬数が毎年増えてきている。成鳥では黒い初列風切羽以外は全身が白い、一見するとハクチョウやアヒルのようにも見える野鳥である。何故、雁類に特化して木版画で制作しているのかということはここで述べると、とても長くなるので省略させてもらう。いずれ発表の時が近くなったらまたお知らせすることにしよう。 

このハクガンの木版画を制作するにあたって、事前に冬の雪の風景を背景に彫ろうと決めていた。理由としてはハクガンが本来生息する環境を考慮したのと、英語名の「雪の雁」を造形化したいという欲求があったからである。白い冬鳥には雪の白さが響きあい、よく似合う。この木版画を彫っている時に珍しく同居している次女が「最近、どんな版画を制作しているの? 摺れたら見せてほしい」という。 雪を彫りこんだ2回目の試し摺りができた時、工房に呼んで見せてみた。作品は気に入ったようだが、そこで一言、「よくこの暑い最中に冬の景色と雪を彫れるね、 躊躇するってことはないの?」と尋ねられた。 その場では「あんまり、意識したことはないなぁ…」と、答えたが実際、第三者から見れば不自然な話であるのかも知れない。 

毎日、夢中で版木を彫っているうちに、いつの間にか遅い梅雨明けも過ぎていた。現在、木版画は仕上げに近い3回目の彫りの仕上げ段階に入っている。 まぁ、全国的に30度を超える酷暑が続く中、冷房の効いた工房で雪景色を彫るというのも涼しさが増して良いのかも知れないと、開き直って木版画を彫る日々である。

※画像はトップがハクガンの木版画を彫る工房の風景。下が木版画を彫っている僕、木版画『ハクガン(仮)』の第1回試し摺りと第2回試し摺り(雪を彫り入れたもの)、彫りに使用した彫刻刀の1部、彫った版木の細かい削りカス。