長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

390. 美術学校で『銅版画・直刻法』の実習を行う。

2019-11-23 17:55:28 | カルチャー・学校
今月21日から東京池袋にある僕の母校、創形美術学校に銅版画の直刻法の実技実習の指導に行っている。このブログの388回で投稿した銅版画実習の続きであるが、前回がまだ専攻を決めていない1年生の『銅版画・基礎(エッチング)』の実技実習であったのに対して今回は2年生の版画専攻の学生たちが対象となっている。つまり今月は銅版画の「集中実技実習月間」となっているのである。

『銅版画・直刻法』とは、エッチングのように薬品などの腐食によって銅板を彫って行くのではなく、専門的な工具を使用してダイレクトに彫って行くさまざまな技法をさす版画専門用語である。その代表的な技法には、エングレーヴィング(ビュラン)、ドライポイント、メゾチント、ルーレット等があげられる。

今回の課題テーマは『人間像』。友人、知人、家族や恋人の肖像、著名人の肖像、街を行きかう人々の群像、自分のイメージの中の人等々といった様々なヒトの姿から下絵を描き、版に転写して彫り込んで行くと言う内容。但し「自画像」は人物画の中でも特別な意味、性格を持ってしまうので不可とした。それから上記、工具の他に文具のカッター、釘、サンドペーパーなどによる彫り?の実演も行い「銅版画は版に傷を付けてインクが引っかかれば版になる」という趣旨を強調して伝え、その道具の中から3種類以上を使用して1点のモノクローム作品を制作するというミッションも同時に与えた。それから2年生も1年生同様に中国からの留学生が多く、参加学生14名中、約半数をしめている。彼らは日本語が上手く日本人の学生に混じってワイワイと楽し気で集中するときには驚くほど静かに制作している。

昨日、プレス機を使用した印刷の実演も行った。あとは学生たちの彫っては試し刷り、彫っては試し刷りの繰り返しである。銅版画の直刻法というのは数多くの現代版画技法の中でも彫刻刀で彫る木版画と並び最もシンプルでダイレクトな表現ができるテクニックである。これから来週末の講評会までにどんな瑞々しい力作が完成するのか今から楽しみにしている。


画像はトップが実習で使用した彫りのテスト・プレートと各種彫版道具。下が向かって左から銅版と専用工具、エッチング・プレス機、実習の内容を説明したホワイト・ボード、制作中の学生(2カット)、卒業生のドライポイント作品(部分)、銅版画の巨匠、長谷川潔のドライポイントによる風景作品(画集より部分転載)。



                     




389. 青木画廊企画『精筆の画家 12』展が開催中です。 

2019-11-15 18:05:07 | 個展・グループ展
前々回、ブログNo.387でご案した私も参加出品している東京銀座の青木画廊企画『精筆の画家 12』展が9日よりオープンし、SNS上でも評判となって開催されている。そろそろ会期もターニング・ポイントに入った。

いつものように初日9日の夕刻からのオープニングパーティーに出席して来た。階段を上って2階の画廊にやや遅刻気味に会場に入った。すでに出品画家、出品者の知人の美術家、コレクター、編集者、等の方々でさほど広くはない会場はすし詰め状態。この画廊の企画個展、グループ展のオープニングはいつもこのような感じで熱い!今回、関西在住の画家2人が大阪でのグループ展と会期がまったく重なってしまいお会いすることができなかったのが残念である。会場でも話題は盛り上がり恒例となった来場者全員での記念撮影を済ませると話したりない人たちは2次会、3次会と流れて行く。

初日はそんな状態だったので作品をゆっくり観られず、今週の中日に東京に出る用事があったのでもう一度画廊を訪れた。閉廊時間の1時間前ぐらいだったので空いていてオーナーの青木氏と話しをしながらゆっくりと見せてもらった。このメンバー、青木画廊の取り扱い作家の中でもシニア世代の方々でテクニックや表現力も安定しているベテランが中心となっているので見応えがあるのと同時に安心して観ていられるところがある。そして3階には各作家の過去作品の常設展示も同時開催しているので旧作との比較もできて楽しめるような展示となっている。

私の出品作は数年前に個展だ出品した『神話と伝説」というテーマに戻り、古代エジプト神話に画題をとった絵画作品3点を出品している。技法は日本やネパールの手漉き紙に顔料とアクリル絵の具を併用したものである。

展覧会は来週、11/21(木)まで。まだご覧いただいていない、アートファンの方々、是非この機会をお見逃しなく。画廊ホームページアドレスは以下のとおり。

・青木画廊 http://www.aokigallery.jp



               



388. 母校の美術学校で銅版画の実習が始まる。

2019-11-11 18:51:52 | カルチャー・学校
10/31から、東京池袋にある美術の専門学校、創形美術学校に銅版画実習の指導に行っている。この学校は今から36年前に僕が卒業した母校である。7年前まで13年間銅版画の指導を行っていたが、学校側の諸事情によりいったん終了したのだが、昨年度末に改めてお話がありお引き受けした。こちらの年齢も上がってしまったので、長い付き合いになる専任のS氏に「僕のようなロートル投手でいいの?」と電話をして聞いたのだが「いいんです。今こそベテランの力をお借りしたいので」と答えが返ってきた。お互いプロ野球好きなので軽い冗談も含まれているのだが。

と、言う訳でひさびさのホームグランドで投げることになった?…いや母校で実習を担当することになった。この学校は版画科の歴史が古く、特に版画工房の設備が美術大学並に充実している。僕が今回担当するのは1年生の『銅版画・基礎』と名付けられた腐食銅版画(エッチング)の入門的な実習。版画が初めてという1年生に『自然物』というテーマで小さな銅板に向かってモノクロ1版の銅版画を制作してもらうというもの。1年生の版画実習はこの銅版画とシルクスクリーンの2版種からの選択になっている。この学校は現在、2年次から版画専攻意外に絵画造形専攻、グラフィックデザイン専攻などいくつかの専門コースに分かれている。つまり、まだ専攻が決まっていない1年生に版画を指導するというわけである。

7年ぶりに学校に行ってまず驚いたのは各学年に中国からの留学生の割合が多い事だった。7年前の時点では韓国と台湾の留学生が多かったのだが、状況が変わったようである。なので、学校中の至る所で中国語の会話が飛び交っていた。そして彼らは日本語もとても上手い。普通に会話ができる。留学生に尋ねると来日するとまず日本語学校に入学し、猛特訓を受けるのだそうだ。そして実技も集中力があり、とても真剣に取り組んでいる。

先週末、銅版へのニードルでの描画も進み、ほぼ全員が1回は試し刷りを終えた。今週からはいよいよ作品の完成に向けて集中力をさらに上げて行くところである。こちらも久々の広い版画工房でのインクや機械油の懐かく心地よい臭いに浸っている。さぁ、初々しい1年生がインクまみれになりながら、どんな力作を完成させるのか今から楽しみにしている。



                        




387. 『精筆の画家 12』 展 

2019-11-03 17:39:31 | 個展・グループ展
アートの秋。以下、出品するグループ展の御知らせです。

・タイトル:『精筆の画家』展

・会期:2019年11月9日(土)~11月21日(木) 平日:11:00~19:00 / 日曜日:12:00~18:00(11/17(日)は休廊)/ 最終日:17:00まで

・会場:青木画廊 東京都中央区銀座3-5-16 島田ビル2F / tel 03-3535-6858 / HP http://www.aokigallery.jp
JR有楽町駅から徒歩5分 地下鉄銀座線・銀座駅から徒歩3分

・内容:青木画廊関連の幻想的、細密な作風の画家12名による画廊企画によるグループ展。未発表の新作(小品)各作家2-3点を展示する。

・出品作家(50音順):浅野信二(油彩)、石田洲治(混合技法)、市川伸彦(混合技法)、大竹茂夫(混合技法)、小泉孝司(油彩)、菅原優(混合技法)、高松潤一郎(油彩)
 多賀新(鉛筆)、建石修志(混合技法)、谷神健二(油彩)、長島充(顔料・アクリル)、山本じん(銀筆/木炭)

※1960年代初頭より幻想アートを専門に紹介してきた銀座の老舗、青木画廊での展覧会です。長島は1999年からのお付き合いになります。顔料とアクリルによる4号大の新作絵画3点を出品しています。大勢のグループ展なので初日17:00頃からのオープニングには在廊しますがあとは未定です。

11月の展覧会巡りにはちょうど良い時期、幻想アートファン、絵画ファン、その他ご興味のある方々、どうかこの機会にご来場、ご高覧ください。