長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

408. 木口木版画の制作準備

2020-06-27 18:00:00 | 版画
今年ももう梅雨である。早くも1年の半分が終了しようとしている。今月に入り来年、再来年に予定している『野鳥版画』の個展に向け、木版画技法の1種である木口木版画制作の準備を進めている。

以前のブログにも書いたが僕の場合、最近では版画作品のイメージ・サイズによって使用する技法の種類を変えている。例えば大きな画面の作品や色彩を用いる時には扱いやすい板目木版画を、中ぐらいのサイズの場合には銅版画と板目木版画を、小さく細密な表現で制作したい場合には木口木版画を…といった具合である。特別意識はしていなかったが、あまりこうした方法をとっている版画家は日本では少ないかもしれない。「初めに絵ありき」でその表現を求めていった結果、こうしたスタイルに自然となっていた。

現在、日本では木口木版画の良質な版木を入手するのがとても困難である。あの手、この手、人に相談したりしながら何とか集めている。同業の版画家に譲ってもらったり、植木職人をしている友人に、椿などの樹種を予め予約しておいて仕事で伐採することがあったりした時に捨ててしまうようなものを丸太で持ってきてもらったりもした。もう15年以上も物置で乾燥させて眠っている版木用の丸太もある。この技法の発祥の国、ご本家イギリスでも良質な四角い寄木の木口木版画用の集成材を専門に扱っていたロンドンの画材屋さんが生産を辞めてしまった。他の木口木版画を制作している版画家も版木の入手には同様に苦労しているはずである。

そうして、ようやく入手した版木なのだから大切に扱わなくてはならない。そして厚さ3㎝ほどにカットした版木はそのままではノコギリの跡が残っているので彫れない。表面を研磨しなければならないのである。木口木版画の場合、細密な彫り跡にインクをのせて印刷するため彫る面はキッチリと平面が出ていなければならないのが鉄則である。今までは全て自分で電動サンダーという研磨機を使って時間をかけて研磨していたのだが今回初めて人にお願いした。たまたま年頭に出品していたグループ展の会場に木工職人で最近、木版画の版木の研磨も始めたという方が来場し営業に来ていたので名刺交換をして研磨作業をオーダーしてみた。板木として仕上がったものが今回、画像投稿したものである。樹種は椿と柘植の木である。

コロナ禍の影響で個展やグループ展の会期が中止や延期となり大幅に遅れているのだが、これから夏以降、木口木版画による『野鳥版画』の制作に集中しようと思っている。

※画像はトップが研磨された椿(ツバキ)の版木。下が同じく研磨された柘植(ツゲ)の版木と版の彫りに使用する木口木版画専用の「ビュラン」と呼ばれる彫刻刀。


   

407. カルチャー教室が今月から再開となった。

2020-06-07 17:05:15 | カルチャー・学校
今月に入り僕が講師を勤める地元のカルチャーセンターが再開することとなった。新型コロナウィルスの影響で長い期間、講座内容によっては休講となっていた。特に政府より『非常事態宣言』が発出されてからは全教室を休講に踏み切っていた。
まぁ、習い事というものも「三密」に反するわけなのであるから仕方がないことなのだが。

受け持ちの講座の1つである「色鉛筆画教室」は2/18以来なので4か月弱の休講、もう1つの「木版画教室」は4/3以来なので、まる2か月の休講ということになっていた。もちろんこんな事態は僕個人としても16年間続けてきて初めての経験だった。最も心配したのは長い間の「自粛」により生活パターンが変わることで、再び戻って来れない生徒さんたちが出るのではないということだった。特にカルチャー教室に習いに来る方々は年配の方が多いので気がかりだった。

先月25日に『非常事態宣言』が全面的に解除になると、すぐにカルチャーセンター事務所から連絡が入った。「6月1日より教室を全面的に再開しますのでよろしくお願いします」ということだった。講師の承諾の返事の後、センター事務所から受講生全員に連絡が回ることとなった。そして「色鉛筆画教室」が今月2日から、「木版画教室」が5日からそれぞれ再開された。

再開当日、僕の心配とは裏腹に多くの方々が教室に復帰し、今月は一先ず見合わせて、来月から復帰するという方々も含めると、ほぼ全員が揃うことになった。それから最も心配していた体調も崩されている方は居らず、まずは安心して再スタートの運びとなったのである。もちろん開講にあたってはマスクの着用や入室にあたり手の消毒をする、お互いにソーシャル・ディスタンスを守る、必要以上の会話を避ける等といった制約がある。

何より、長く継続されて通われている生徒さんたちの元気な顔と声を久々に確認できたことが嬉しかった。今後、夏から秋へと向かってコロナが収束していき以前と同じように安心して、教えたり教わったりができる日が来ることを願っている。