夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『海洋天堂』

2011年08月18日 | 映画(か行)
『海洋天堂』(原題:海洋天堂)
監督:シュエ・シャオルー
出演:ジェット・リー,ウェン・ジャン,グイ・ルンメイ,
   ジュー・ユアンユアン,ドン・ヨン他

例年、お盆とは無縁のうちの職場。
しかし、今年は節電対策のために、有休を使って全員同日に休むようにとのお達し。
家にいても暑いので、1日2本ずつ映画をハシゴ。
2日間で観た4本はどれも大当たり。
観た順番に書きたいところですが、終映が近づいているものからご紹介。

ちなみに本作は、前述の『ツリー・オブ・ライフ』
エンドロールが回り始めると同時に9割以上の客が立ち去ったのに対し、
ただの一人も席を立つ人がいませんでした。

中国のチンタオ。
あと数年で50歳を迎える水族館職員ワン・シンチョンは、
21歳の息子ターフーとふたり暮らし。
妻はターフーがまだ幼い頃に他界。
以来、自閉症と重度の知的障害を持つターフーをシンチョンがひとりで育てている。

あるとき、シンチョンは自分が末期の肝臓癌に冒されていることを知る。
ターフーが遺されることを案じたシンチョンは、休暇を取って海へ。
自分と息子の足を縄で括り、一緒に溺れて死のうとするが、
泳ぎの得意なターフーは、縄から抜け出してすいすいと泳いでしまう。

考えを改めたシンチョンは、ターフーを受け入れてくれる施設探しに奔走。
それと同時に、自分の亡き後もターフーが生きて行けるよう、
ひとつひとつターフーに教え始める。

こんなストーリーのところへ、
世界的な名カメラマン、クリストファー・ドイルによる撮影、
でもって、あの久石譲による音楽と来たら、泣くこと必至。
けれど、お涙頂戴に走らない、ユーモアも交えた堅固なつくりの作品でした。

服の脱ぎ方、卵の割り方、バスの乗り方、買い物の仕方。
生活の術をターフーに丁寧に教え、いつまでもつきあうシンチョン。
ときにはいらついて声を荒げてしまう様子に、
『八月のクリスマス』(1998)の主人公の姿がかぶります。

シンチョンの人柄ゆえとはいえ、親子を見守る人びとのなんと温かいこと。
隣人のチャイをはじめ、水族館の館長、施設の校長など、
こんな人ばかりだったらいいのにと、願わずにはいられません。

エンディング曲の余韻にもう少し浸りたかったのに、
ブチっと切られてしまったのが悔やまれるところ。

武術の達人であれほど美しい動きを見せるジェット・リーが、
アクション皆無のこんな泣かせる話に主演するなんて、
老後の新境地を拓こうと企んでいるのかしらんと、
ちょっと意地悪な目で観始めたのですが、とんだ思い違い。ごめんなさい。

鑑賞後にジェット・リーがノーギャラで出演したことを知りました。
おみそれしました。

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