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『家族の日』

2016年09月12日 | 映画(か行)
『家族の日』
監督:大森青児
出演:伊原剛志,田中美里,平田満,川中美幸,大竹まこと,
   川上麻衣子,茂山慶和,中瀬優乃,茂山虎真,岸部一徳他

前述の『カンパイ!世界が恋する日本酒』とハシゴ。
同じくシネ・リーブル梅田にて、同じスクリーンの同じ席で。

狂言大好き、なかでも茂山家をこよなく愛する従姉から、
茂山家のおちびちゃんが出演する映画があると聞いたのが数カ月前。
映画の舞台となっている岡山県で従姉は早々と鑑賞。
ようやく大阪にも来ました!

東京・新宿に暮らす君原家。夫婦と長女、長男、次男の5人家族。
長女と長男がそれぞれ同級生とトラブルを起こし、
父親の信介(伊原剛志)と母親の喜美子(田中美里)は学校から呼び出されるが、
こっちだけが悪者扱いの学校の対応に納得がいかない。
怒りに駆られた信介は、「もうあんな学校へは行くな」と子どもたちに通告。
のびのびと育てようと田舎暮らしを決意する。

引っ越し先は岡山県高梁市。
過疎に悩む地域で、都会からの引っ越しを積極的に受け入れている。
まだ幼い次男の真琴(茂山慶和)にとっては見るものすべが面白いが、
長女の絵里(中瀬優乃)はふてくされ、長男の好太郎(茂山虎真)も虫が怖い。
登校してみれば小学生は10人足らず、中学生に至っては絵里以外に1人だけ。
信介は自ら起業した旅行会社のためにたびたび東京へ行かねばならず、
せっかくの田舎暮らしも思うようには行かない。

ほどなくして、君原一家は「ターザン」の噂を聞かされる。
そいつは目の前に広がる黒雲山にこもっているらしく、人前には姿を現さない。
悪い奴だから、黒雲山には近づくなと釘を刺される。

しかし、その話に興味を持った真琴は、ひとりで山に入る。
期せずして遭遇したターザン(岸部一徳)と親しくなる真琴。
真琴のあとをつけた好太郎や絵里もやがてターザンと仲良くなり……。

全体として優等生的な印象はあります。
それぞれの行動は読めるものだし、目新しさはありません。
けれど温かく、安心。

そう感じさせてくれる大きな要素は、岸部一徳。
この人、すごい俳優ですよね。
本作でも彼の演技にどれだけ泣かされたことか。
なぜ山にこもるようになったのか。
死んでもおかしくなかったのに、何を支えに生きてきたのか。
大事にしていた詩が心にしみます。

それと真琴役のおちびちゃん、茂山慶和の愛らしさ。
何この可愛さというぐらい可愛い。
さ行がまだ上手く言えないのがまた可愛くて、
彼のやることなら誰でも何でも許してしまうのではないかと思うほど。
その純粋さにみんなが救われます。

過疎問題はきっと切実。
距離が近すぎる人間関係のなかでは、暮らしづらいこともあるでしょうけれども、
こういうご近所づきあいだからこそのいいことはいっぱいあるわけで、
田舎の映画を観るたびに、これもいいかもしれないと思ったり。
そうは言っても、映画館のないところには住めない私です(笑)。

鑑賞後にとても清々しい気持ちになれる作品でした。

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