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『HOME 愛しの座敷わらし』

2012年05月05日 | 映画(は行)
『HOME 愛しの座敷わらし』
監督:和泉聖治
出演:水谷豊,安田成美,橋本愛,濱田龍臣,草笛光子,
   飯島直子,草村礼子,長嶋一茂,段田安則他

メーデー、「映画の日」に近所のシネコンにて。
原作は大好きな荻原浩の直木賞候補作『愛しの座敷わらし』。
前週に文庫上下巻を読んでから観に行きました。

食品会社に勤務する53歳の晃一は、東京から岩手へ転勤に。
夏を前にして、妻子と母とともに築200年の古民家に引っ越す。
広すぎる藁葺きの家に、ボットン便所。和室には空の仏壇まで。

翌朝には勝手に庭にネギを植えにくる隣家のおばあちゃん。
一旦縁側に座ればいつまで経っても帰ろうとしない近所の人たち。
家賃は盛岡市内の3分の1だと晃一は言うが、
慣れない田舎暮らしに史子はドッと疲れを感じる。

東京でいじめに遭っていたとおぼしき長女の梓美は中学3年生。
転校初日、なぜかいきなり教室で笑われて最悪の気分。

喘息持ちの長男の智也は小学5年生。夏休み明けから登校予定。
グラウンドでサッカーをする同世代の子どもたちのことが気になるが、
史子からサッカーはまだ無理だと言われている。

晃一の母親である澄代には認知症の傾向が。
幼い頃に空襲で亡くなった弟、六助の幻影が見えるらしい。

こんな一家の住む家に、奇怪な現象が起こり始める。
頭のてっぺんで髪を結った着物姿の子どもが家のそこここに現れる。
鏡越しにその子どもを見た史子は自分が神経を病んでいるのかと思うが、
どうやらそれは、福を呼ぶと言われている「座敷わらし」で……。

う~ん、原作を読まずに観たほうが楽しめた気がします。
登場人物は同じであるものの、あれこれがちがいすぎる。
端折りすぎ、かつ、些細だけど大事な設定を変更したために、
映画はプツリプツリと切られてテンポが悪い印象。
また、設定をわざわざ変更したにもかかわらず、
『八日目の蝉』(2011)のような映像ならではの美しさがないのも寂しいです。

梓美が東京の元同級生たちの心ない言葉に傷つき、
転校先では上手くやろうと決意するさま。
その一方で、なるようになれ、どうでもいいと開き直るさま。
この辺りの心の動きは原作ならでは。
携帯電話が重要な役目を果たす部分も映画に含むには無理だったかなぁ。

天真爛漫な智也は、原作では不登校の内向的な少年。
誰に教えられたわけでもなく、座敷わらしと対面して仲良くなります。
年上のサッカー少女、桂に恋心を抱くのは同じですが、
原作の「胸いっぱいに広がるファンタレモンの味」までは映画は及ばず。
ちなみに桂役は『プリンセス トヨトミ』(2011)のヒロインでした。
ついでに梓美役は『告白』(2010)の一見冷めた中学生。

悲しい悲しい「間引き」の話もえらくあっさりだった印象で。
逆に、澄代が六助を追うシーンは引っ張りすぎじゃないでしょか。

ファミレスのくだりは、そう来ましたかとちょっぴりニヤリ。
だけど、オチまで変えられちゃうと、ええんかいなとツッコミたくなります。

泣くつもりで行ったのに泣けないと寂し。(;_;)
唯一グッと来たのは営業が実ったときでした。段田安則、○。
豆腐プリンわさびソースがけよりも、
原作の豆腐プリンみたらしソースがけのほうが食べたいけれど。

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