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最近読んだ本あれこれ(その2)

2012年06月05日 | 映画(番外編:映画と読み物)
そして近頃、選んだつもりはなかったのに、手に取ればなぜかタイムスリップする話。
どちらも『テルマエ・ロマエ』以前に読み、
どうしてこんなにタイムスリップばっかりと苦笑しました。

まずは、乾くるみの『リピート』(これも分厚く523頁)。
大学4年生の圭介のもとへ知らない男から電話がかかってくる。
それは数時間後に起きる地震の予告。
震源地から震度にいたるまでピタリと当たり、圭介は驚く。
しばらくすると再び同じ男から電話が。
地震を当てることができた理由は、自分が「その時」をすでに体験していたからだと言う。

もしも男の言うことを信じるなら、圭介にも同じ体験をさせてくれるらしい。
ただし、戻れるのは10カ月前と決まっている。
完全に信じることはできないが、過去に戻れるならば体験してみたい。
そう思った圭介は話に乗ることに。
同様に誘われた男女10人が集まり、10カ月前へのタイムトラベルへ。

このタイムトラベルは、物語のなかで“リピート”と呼ばれ、
現在の記憶を持ったまま、10カ月前へと戻ることができます。
たとえば半年前に自分を振った彼女、リピートすれば振られる前に振ることが可能。
失敗した大学受験、試験の内容がわかっているから現役合格が可能、なんて具合。

主人公の圭介を含め、リピートは褒められるべきことにはあまり用いません。
やがてリピート参加者がトラブルに巻き込まれ、一人ずつ姿を消してゆきます。
かなり悪趣味な展開で、ラストも嫌~な感じ。でも、まぁおもしろい。

この著者には以前『イニシエーション・ラブ』で鮮やかに騙されました。
名前から女性だと思っていたら男性だったのも驚きでしたけれど。
『イニシエーション・ラブ』より驚けるという触れ込みでしたが、
結果的には『イニシエーション・ラブ』のほうが断然おもしろかったなぁ。

もう1冊は貫井徳郎の『さよならの代わりに』(522頁也)。
劇団“うさぎの眼”に所属する駆け出しの役者、和希は、
ある日、祐里という清楚な美少女に出会う。
祐里に劇団の看板女優の控え室を見張っていてほしいと言われ、
妙な頼み事をするものだと思いつつも引き受けるが、
ほんの数分見張りを外れたすきに、その女優が殺害される。

何か知っているにちがいない祐里に問いただしたところ、
祐里は27年後の世界からタイムスリップしてきたと言う。
容疑者は祐里と繋がりのある人物で、無実なのに逮捕されてしまった。
この逮捕は、未来の祐里の人生に影響を及ぼしたため、
冤罪を晴らしたくてタイムスリップしてきたらしく……。

この著者は作品ごとに作風がコロリと変わる不思議な人。
ハードボイルドな『慟哭』、小学生の「僕」視点の『プリズム』などが好きでした。
『追憶のかけら』(これまた分厚く659頁也)については、途中まで至上のおもしろさ。
怒濤の勢いで読ませますが、ラストはメロドラマが入ってガックリ。
本作はガックリではないけれど、そういうオチにしちゃうのねとしんみり。
ミステリというよりは圧倒的に青春ものです。

で、可笑しいのは、どちらのタイムスリップものも「みんな、競馬に走る」。
過去に戻れるとみんな競馬で一儲けしようと企みます。
前者は、現在の記憶はそのまま持っていても、メモを過去へ携帯することはできず、
タイムトラベルの準備期間中に何月何日のレースでどれが来ると必死で暗記します。
後者も、すべてのレースを記憶することなんてできないから、
いずれ訪れるであろう未来の自分へ、ある方法で知らせます。
ま、私もそうするでしょうね。一発当てない手はないでしょう。(^o^;

思わず原田真二の『タイム・トラベル』を口ずさんでしまう最近なのでした。

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