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『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』

2009年02月09日 | 映画(あ行)
『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』(原題:Away from Her)
監督:サラ・ポーリー
出演:ジュリー・クリスティ,ゴードン・ピンセント,オリンピア・デュカキス他

子役から順調にキャリアを伸ばしながら、
ハリウッド嫌いで筋金入りの左翼としても知られる、
カナダ人のサラ・ポーリー。
『死ぬまでにしたい10のこと』(2003)や『あなたになら言える秘密のこと』(2005)など、
静かな話題作に出演してきた彼女の映画監督デビュー作です。
常々、良い意味で彼女はちょっと変人かもと思っていましたが、
弱冠27歳でこんな作品を撮れるなんて、やっぱり変人。凄い。

グラントとフィオーナは結婚して44年。
結婚した頃、輝きを放っていた18歳のフィオーナは、今も美しく上品な妻。
大学教授だったグラントは、当時、学生と浮気のし放題。
しかし、いつでも、フィオーナのことをこよなく愛していた。
20年前に一騒動あったあと、湖畔の家に引っ越し、
以来、ふたりは穏やかに暮らしている。

あるとき、フィオーナに認知症の兆候が現れ始める。
片時も離れたくないと反対するグラントを押し切り、
フィオーナは老人介護施設への入所を自ら決断する。

施設の規則により、入所後30日間は近親者も面会不可。
初めての面会日、グラントは花束を持ってフィオーナを訪ねるが、
フィオーナにはグラントが誰なのか認識できない。
しかも、男性入所者のオーブリーと親しげに接する彼女の様子に、
グラントは打ちひしがれる。

認知症の妻とその夫の話といえば、
ストレートに涙腺に訴える『きみに読む物語』(2004)。
対して本作は一筋縄では行きません。

以下、もろにネタバレです。

オーブリーの退所後、ふさぎ込むフィオーナを見るに見かねて、
グラントはオーブリーの妻マリアンに、オーブリーの再入所を打診。
マリアンは、グラントと出逢って女の部分を取り戻し、
自分の幸せを考えます。
ところが、オーブリーの再入所の日、
フィオーナの部屋に入ると、記憶の甦った彼女が。

ラストのグラントとフィオーナが抱き合う姿を、
彼女が認知症のふりをしていただけと取るか、
それとも記憶が一時戻っただけと取るか。

看護師の台詞は予告編で聞いたときから強烈。
「悪い人生じゃなかったと言うのは、大抵、男性」。

一見、優しく、実は残酷な作品に思えます。
人の為を思ってすることには傲慢さがつきまとう。
人の幸せは決められない。

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