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『アーティスト』

2012年04月12日 | 映画(あ行)
『アーティスト』
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン,ベレニス・ベジョ,ジョン・グッドマン,
   ジェームズ・クロムウェル,ミッシー・パイル,マルコム・マクダウェル他

第84回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞など、
5部門で受賞を果たしたフランス作品。
そのわりに、封切り日の客の入りは寂しい気がしましたが、
映画への愛にあふれた作品です。

1927年のハリウッド。
サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、
主演映画の舞台挨拶後、群がるマスコミやファンの前に姿を現す。
落とし物を拾おうとしてしゃがんだのがファンの一人、ペピー・ミラー。
彼女はジョージの隣に押し出される形になり、
ジョージとのツーショットがフラッシュを浴びる。

女優志望のペピーは、新聞の一面を飾った自分の写真にご機嫌。
ジョージ主演の映画にエキストラとして応募すると、
陽気なダンスがウケて見事採用。

ジョージは現場で怒られたペピーを救い、楽屋では成功の秘訣をアドバイス。
大物になるには目立つ特徴が必要だと、ペピーの口元にほくろを描く。
これがペピーのトレードマークとなり、徐々に役を獲得しだす。

やがて、時代はサイレント映画からトーキー映画へ。
サイレント映画に固執するジョージは取り残され、スターの座から滑り落ちる。
逆に時代の波に乗ったペピーは、スターへの階段を駆けのぼり……。

サイレント映画というと、私が思い出すのは東京キネマ倶楽部
現在はサイレント映画の上映会はごくわずかで、
プロレスなどの格闘技団体もホールを利用しているとのこと。
そうしなければ経営が成り立たないのでしょうね。

さて、本作中、音楽以外の音声が入るのは、30分ちょい経過した頃の、
ガラスのグラスをテーブルに置くときが初めて。
ちょうどトーキー映画がサイレント映画に取って代わりはじめた頃で、
こうして音を出すことによって、強がって見せるジョージの不安を上手く表しています。

上映中に物音を立てる人はそうそういませんが、
本作では音楽以外に音のない映画館がいかに静かであるかを実感できます。
これまでは、役者の台詞のみの、音楽のない映画のほうが静かだと思っていたのに。
そして、音楽の力も知ることができます。
「ここですよ~、泣くところは」と言わんばかりの音楽には
確かに泣かされるものの冷めている自分がいましたが、
本作に限っては、音楽のその偉大な力にひれ伏しました。

台詞は聞こえず、淡々と進み、お決まりの流れ。
退屈に思える数分間も正直なところありました。
けれども、モノクロの映像に懐かしさを感じ、胸を締めつけられます。

いちばんの名演は、なんと言ってもジョージの愛犬。
『人生はビギナーズ』と同じジャックラッセルテリアで、
この種には演技達者な子が多いんでしょうか。

バン!と撃つ真似をされたら死んだふりをするのは万国共通?

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