夜な夜なシネマ

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『SHAME シェイム』

2012年03月21日 | 映画(さ行)
『SHAME シェイム』(原題:Shame)
監督:スティーヴ・マックィーン
出演:マイケル・ファスベンダー,キャリー・マリガン,ジェームズ・バッジ・デール,
   ルーシー・ウォルターズ,ニコール・ベハーリー他

前述の『最高の人生をあなたと』とハシゴ。
あらゆる意味でこちらのほうが印象に残りました。

ニューヨークの高級マンションに暮らす独身男性ブランドン。
そつなく仕事をこなし、会社にとって理想的な社員のうえに、見た目も魅力的。
控えめで柔らかな物腰は好感度抜群。

しかし、そんな彼には誰にも言えない秘密があった。
彼は極度のセックス依存症で、やらずにはいられない。
相手は行きずりだったり金で買ったり、とにかく毎日毎晩。
彼のPCは自宅も会社も猥褻な動画だらけ。
仕事中すらその欲望を抑えられず、トイレに行っては自慰にふける。

それでも、そういう面をひた隠しにさえすれば、
とりあえずは平和な暮らしを送ることができていた。
なのに、避けていた妹シシーが転がり込んできたのをきっかけに、
彼の日常はすべてのバランスが狂いはじめ……。

兄はセックス依存症、妹は自傷癖。
兄妹がこうなった原因は何なのか、それについては明かされません。
この点を含め、明らかにされていない部分については、
観る人が想像してくれればいいという監督の弁。

だから、いろんな可能性を考えさせられます。おもしろい。
全編通して哀切な空気が漂い、音楽も風景も寒々しくありながら力強いです。
何がそんなに悲しいの、何がそんなに苦しいのと、
ずっと問いかけたくなるブランドンの表情が絶品。

ただ、ある女性を前にしたときに勃たないというシーンは合点が行きません。
本気で好きな相手だとこうなると言いたいのかと思わなくもないですが、
ブランドンが彼女にマジで惚れていたと考えるには弱いような。

何かに依存しないと生きていけない人たちの苦しみが突き刺さります。
テーマとしては人に薦めづらいものですが、
どう解釈するかをほかの人と話してみたい作品でもあります。
こんなふうに感じるところはミヒャエル・ハネケ監督の作品と似ているかも。

日本公開に当たり、映倫とずいぶん揉めたようですが、
単に裸で部屋をうろつくようなシーンではぼかしは入っていません。
『17歳の肖像』(2009)、『わたしを離さないで』(2010)のヒロイン、
キャリー・マリガンも脱いでいますが、かなり垂れ乳だったのはショック。(;_;)

ブランドン役のマイケル・ファスベンダーのイク表情は見ていて切なくなるほど。
だけど、イク表情においては、『ラスト、コーション』(2007)のトニー・レオンの右に出る者なし。
というのは、私が勝手に思っていることなのですけれど。
いずれにしても、声を出さずに表情で、あんな切なさを見せる彼らは凄い。

余談ですが、ブランドンがオフィスに持ち込むドリンク缶、
ちらりと見えた感じでは、これもレッドブルではないでしょか。
これ以上ギンギンになってどうする。(^^;

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