夜な夜なシネマ

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『おと・な・り』

2009年11月20日 | 映画(あ行)
『おと・な・り』
監督:熊澤尚人
出演:岡田准一,麻生久美子,谷村美月,岡田義徳,池内博之,
   市川実日子,郭智博,清水優,とよた真帆,平田満,森本レオ他

タイトルには「お隣」と「音鳴り」の意味が掛け合わされています。
『虹の女神 Rainbow Song』(2006)や『ニライカナイからの手紙』(2005)と同監督の作品。
観終わると心がぽかぽか温まる、
派手さのないストーリー展開にいつも惹かれます。

東京のとある町にたたずむ古いアパート。
人気モデルのシンゴの専属カメラマンを務める聡と、
近所の花屋に勤めている七緒は、隣同士。
挨拶どころか、顔を合わせたこともないが、
壁越しに聞こえてくるお互いの何気ない生活音に、
いつのまにか安らぎを感じるようになっている。

聡は、気難しいシンゴの親友であることから
彼の撮影を任されるようになったが、
本当に撮りたいのは風景写真。
シンゴの写真集の仕事を片付けたら、
風景を撮るためにカナダへ渡る計画を立てている。

ところが、シンゴにカナダ行きを打ち明けようとしたそのとき、
シンゴが行方不明になる。
シンゴの恋人だという茜がアパートに押しかけてきて、
自分は妊娠中の身であり、シンゴが戻るまで聡の部屋に居座ると宣言する。

一方の七緒は、フラワーデザイナーになるべく、
フランス留学を控えて勉強中。
ある日、花屋を訪れた近所のコンビニの店長から、
突然好きだと告白されて困惑する。

「基調音」の話がなかなかおもしろいです。
ここに登場する基調音とは、耳に入ってきてはいるのに、
特に意識されることもなく、当たり前のように受け入れられている音。
隣から聞こえる生活音はひとつまちがえれば騒音ですが、
聡と七緒には隣の音が心地よく響いています。
水を流す音、コーヒー豆を挽く音、すすり泣く声も鼻歌も。
それがなくなると寂しい。

展開としては、金城武主演の『ターンレフト ターンライト』(2002)を思い出しました。
これも同じアパートの隣同士に住む男女の話でした。
玄関から出て歩き出すときに、必ず右に進む男性と、必ず左に進む女性が、
アパートでは一度も顔を合わせることがなく、別の場所で恋に落ちます。
これも最後まで隣同士だとわからなくて、
『おと・な・り』よりも衝撃的な判明の仕方で、ほとんど反則技でした。
けれど、どちらもとってもハッピーなエンディング。

当分、鼻歌は、はっぴーえんどの『風をあつめて』で。

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