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『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』

2013年02月12日 | 映画(ま行)
『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』(原題:The Best Exotic Marigold Hotel)
監督:ジョン・マッデン
出演:ジュディ・デンチ,ビル・ナイ,ペネロープ・ウィルトン,デヴ・パテル,セリア・イムリー,
   ロナルド・ピックアップ,トム・ウィルキンソン,マギー・スミス他

今年は有休はすべて映画の安い日に取るのじゃ!と決め、
水曜日に大阪ステーションシティシネマへ。

レディースデーの日中に劇場へ足を運ぶことはほとんどなかったので、
こんなに女性だらけだとは思ってもみませんでした。
しかも作品によっては熟年層が大半を占め、本作はまさにそう。

予告編開始からほどなくして、足下のおぼつかないおばあちゃんの二人連れが。
通路の階段を半分以上のぼり、ちょうど私のすぐ後ろの列までやってきてから、
「あら~、だいぶん向こう側の席やったね。あっち側から上がり直そか」。
すると、その列の中央付近にお座りだったおばちゃん(もちろん他人)が叫びます。
「また階段を下りるのは大変ですやん。よけますから、ここ通りはったらええねん」。
「すんまへんな、すんまへんな」と言いつつ、真反対の席まで歩くお二人。
そのなりゆきや会話が大阪っぽくて可笑しく、和んでしまいました。

9割9分が女性というこの日、
本編開始までは結構しゃべりまくりでやかましいのですが、以降は黙ってお行儀良し。
と思えば隣で寝息を立てているおばちゃんも居たりするのですけれど。(^^;

『恋におちたシェイクスピア』(1998)のジョン・マッデン監督による、
イギリス/アメリカ/アラブの合作です。
イギリスを代表するジジババのみなさん(失礼)の共演で、
そこに『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)の青年が加わって、
インドの風が清々しい、万人におすすめの作品に仕上がっています。

神秘の国インド、ジャイプールのリゾートホテルの広告。
高齢者向けの長期滞在プランが目玉のそれに惹かれた7人のイギリス人熟年男女。

亡夫の負債を返済するために家を売却したばかりの未亡人イヴリン。
退職後に自国で家を買うはずが予算の都合で断念した夫婦ダグラスとジーン。
女を捨てずに一生色恋に生きつづけたいマッジ。
とにかく女好きでもう一花咲かせたいノーマン。
判事の仕事に嫌気が差して突然辞職したグレアム。
やむを得ず足の手術をインドで受けることにしたミュリエル。

空港で一緒になった7人はインド入りするが、搭乗予定だった国内便が欠航。
過去にインドへ行ったことがあるというグレアムの提案により、
一行はバスとトゥクトゥクを利用してジャイプールへと向かう。

インドのバスに満員という言葉なし。
この時点ですでにわやくちゃな珍道中に、ドン引きの者も。
目的地のマリーゴールド・ホテルに着いて今度は絶句。
リゾートホテルとは詐称もいいところ、ボロボロの古びたホテル。
めげない若き支配人ソニーは彼らを迎えて大喜びだったが……。

異国での七者七様のふるまいが非常におもしろいです。
どんなところであろうとすぐに気を取り直して馴染もうとする人、
楽しみ方を探し、仕事を見つけようとする人もいれば、
決してホテルから出ようとしない人もいます。

マギー・スミス演じるミュリエルは有色人種に酷い偏見があり、
最初は見ていて腹立たしくなるほどですが、
彼女がスラム街のメイド宅に招待されるシーンでのやりとりには胸が熱くなりました。
ホテル再生へのキーともなる彼女は、最後は実に頼もしい。
『ラブ・アクチュアリー』(2003)で私の泣きのツボだったビル・ナイも、ダグラス役でいい感じ。

くすっと笑える箇所も多数、涙がこぼれる場面も多数。
最終的には全員が馴染むと行きたいところですがそうも行かず。
年も考えずにみっともないとみんなをののしる人が
本当はいちばん老いを受け入れていないようにも思えます。

インドのどこがいいのかと尋ねられたグレアムは、こんなふうに。
「生を権利ではなく恩恵と考えているところ」。

最後は万事めでたし、なのでした。

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