夜な夜なシネマ

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『スラムドッグ$ミリオネア』

2009年04月24日 | 映画(さ行)
『スラムドッグ$ミリオネア』(原題:Slumdog Millionaire)
監督:ダニー・ボイル
出演:デヴ・パテル,マドゥル・ミッタル,フリーダ・ピント,
   アニル・カプール,イルファン・カーン他

アカデミー賞では、本命として2作品が噂されていると、
作品賞と監督賞をその2作品で分け合う場合がよくあるのですが、
本作はそのどちらも含む8部門を見事に受賞。
社会派ドラマかと思いきや、ラストまで観ればびっくりの純愛もの。
そして、とびきりのファンタジー。降参です。

日本ではみのもんたの司会でお馴染みの“クイズ$ミリオネア”。
まったく知らないという人は、ルールを少し知ってからどうぞ。

インド、ムンバイ(旧ボンベイ)のスラム街で育ったジャマールは、
国民的人気番組の“クイズ$ミリオネア”に出演し、
問題を次々とクリアする。
ところが、残すは賞金2000万ルピーの問題のみとなったところで、
不正の疑いがあるとして逮捕されてしまう。

まともな教育すら受けたことのない青年が
なぜあんな難問に答えられるのか。
不正の手口を吐くようにと警察で拷問を受けるが、
ジャマールはただ「答えを知っていたから」と言うだけ。

興味を持った警部が拷問を中止すると、
ジャマールは自分が答えを知り得た理由を話し始めるのだが……。

物語は、警察署内でのジャマールの話を再現したシーンと、
“クイズ$ミリオネア”への出場シーンを交差させながら進みます。

難問の答えは、すべて彼が生きてきた中で知ったことでした。
たとえば、ラーマ神が右手に持っているのは何か。
ヒンドゥー教徒の襲撃を受けた経験から、彼はその答えを知ります。
アメリカの100ドル紙幣には誰の肖像が描かれているか。
リボルバーの発明者は誰か。
どれも、過酷な思い出により、目と心に焼きつけられた「答え」。

当てれば何千万円という問題が
そんなに都合よく自分の人生に合わせて出題されるわけもなく、
そこは優しいファンタジー。
だけど、スラム街の様子は凄惨で、
同情を買うためなら子どもの目をも潰すような世界。
ここに、ダニー・ボイル監督お得意のスピード感が加わって逸品に。

お金なんてなくても幸せだなんて、
ある程度、お金を持っている人が言うことだと思っていました。
今もそう思っていますけれど、
本作を観ると、純粋な想いがあってこそ報われる。そんな気がしました。

ジャマールがこだわり続けたのは、初恋の人。
二度と逢えないと思っていても、こだわり続ければいつか叶う。

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