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『ぜんぶ、フィデルのせい』

2008年10月06日 | 映画(さ行)
『ぜんぶ、フィデルのせい』(原題:La Fautea Fidel)
監督:ジュリー・ガヴラス
出演:ニナ・ケルヴェル,ジュリー・ドパルデュー,
   ステファノ・アコルシ,バンジャマン・フイエ他

イタリア/フランスの作品。
社会情勢を取り入れるためには、
1970年という設定にするよりほかなかったのでしょうが、
主人公の少女に「昔っぽさ」はなく、「今」の可愛らしさです。

1970年のパリ。アンナは9歳の女の子。
名門のカトリック系小学校に通い、成績も優秀。
スペインの上流階級の出身である父は弁護士、母は人気雑誌の記者。
やんちゃな弟はたまに鬱陶しいけれど、姉弟仲良し。

ところが、ある日を境に、この完璧な生活が一変。
きっかけは、スペインで反政府運動をおこなっていた伯父が亡くなったこと。
ほかに身寄りのない伯母を父が招いたのだ。

伯母の話を聞いて、両親はいきなり共産主義に目覚める。
子どものことはそっちのけで、正義感に燃えて走りまわる両親のことを、
キューバ人の乳母は、革命家フィデル・カストロのせいだと言う。
アンナは思う。「それって誰だか知らないけれど、
私の生活が変わっちゃったのは、全部、フィデルのせいなのね」。

政治に詳しくないと理解しにくい背景ですが、
それがメインテーマではありません。
アンナの成長ぶりを見てください。

とにかくアンナがめっちゃキュート。
冒頭、上流階級の祖父母の家で、
果物の食べ方を年下の子どもたちに指導するシーンや、
学校でいい点を取ったときに友だちに自慢するシーンなど、
ちょっと違えばクソ生意気な子どもにしか見えなさそうですが、
そのスレスレのところで留まっていて、本当に愛らしい。

大人の勝手な思いに振り回され、
狭い家にお引っ越し、乳母もころころ替わります。
最初はそれをまったく受け容れられないアンナが、
自分なりに物事を考え、納得できるまで大人に挑み続けます。
そして、前を向いて考えるということが、
必ず自分の幸せに繋がると、アンナは信じています。

年齢を重ねるにつれて、考えることはできても、
自分の考えはなかなか変えられなくなります。
アンナより弟のほうがさらに若いせいか(笑)、
弟の環境変化への適応ぶりはお見事で微笑ましい。

父親の手を握るシーンは、
『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)の肩を抱くシーンに匹敵する素晴らしさ。
上からのアングルで撮られたラストシーンも秀逸です。
きっと、ギューッと抱きしめたくなります。

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